−風来坊の砦−
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2004/04/25(日) 近藤勇命日に寄せて 『墓標』
 『 墓標 』


一つの時代が終わりを告げた
去りゆくその背中がいかに大きかったか
気付く者はまだいない

冬の日も 春の日差しの中も
時は絶え間なく流れ
新たな時代の空気を連れて来るというのに

失われた時間は
厳然としてそこに在り

夏の日も 秋の風の中も
懐かしい焦燥を運んでくる


まだ涙は流せない
だが今 何よりも素直に
泣きたいと思う


喉元で止めたあの日の言葉は
時代に抗う力を
友を引き留める力を
わずかでも持っていただろうか

風が吹き 静かに頬を撫で
まぶたの裏に鮮やかな残像を残し
寂しい程の眩しさを伴って

今 確かに
時代は終幕を迎えたのだ


まだ涙は流せない
だが今 
誰よりも素直に


泣きたいと思う





― 4月25日近藤勇命日に寄せて… ―

2004/04/22(木) 小説 『決意』A
「お疲れ様。さっきは見事だったぜ。見直した」
「そうか?まあ、芹沢さんも潮時だったんだろうし」
「いや、あんたじゃなきゃ誰も芹沢を止められなかった」

あの時は本当に必死だった。炎の前だという事も忘れるほどに無我夢中で目の前の男と対峙した。芹沢の意地を翻すことができたのは、誠意が伝わったからだと、勇は考えている。だが、面と向かって発せられた歳三の素直な賞賛の言葉には少し照れ臭さを感じ、勇は小さく鼻をすすった。

「…なあ、お前、気付いてるか?最近俺のことをあんたって呼ぶの。前はお前って言ってたのにな」

火鉢の中で赤く熱された炭がパチパチと小さな音を上げて弾けている。視線の先の歳三の横顔にも赤い光が映っていた。火箸で其の中をかき混ぜながら、そうだったかな、と歳三は呟いた。

「俺に賭けると言ったな」
「ああ」
「お前が一体俺にどういうことを望んでいるのか知らないが、期待に応えられるかはわかんねぇぞ」
「…俺が期待している訳じゃない。あんたが俺に期待させるんだ」

火箸を動かす手が止まった。勇の顔を真っ直ぐに見つめ、歳三は赤い色を映した真剣な表情で、きっぱりと言った。

「大丈夫だよ、お前なら」

返す言葉見つけ損ね、勇は黙ってその顔を見つめた。わずかな沈黙が流れ、火鉢の中で弾け続ける炭火の音が大きく部屋の中に響いた。鉢の中の小さな赤い炎は、先程までの焚き火を思い起こさせる。
しばらくの沈黙の後、歳三が腰を上げた。

「明日も早いんだろ。もう寝ろよ」
「…ああ」

いつのまにか凍えていた身体はすっかり温まっている。傍に人がいた所為かもしれない。勇はぬくもりを取り戻した肩から、布団を下ろした。
部屋を出ようと障子に手をかけたところで、歳三が何かを思い出したかのように、振り返った。

「…勝ちゃん」
「ん?」
「一緒に何かデカイ事やろうな。京で…」

小さな微笑を頬に浮かべそれだけ告げると、おやすみと呟いて歳三は部屋を出て行った。誰もが寝静まっている深夜の廊下を、足音を響かせないように気をつけながら、気配が遠ざかってゆく。その姿を黙って見送った勇は、その大きな口元に明るい笑みを浮かべた。

「あいつ…覚えてたのか…」

一緒に何かでかいをしよう、それは何年も昔、薬の行商をしていた歳三を試衛館に誘った時に、勇が言った言葉だった。何もかもが明るく、きっと何かできると今よりも純粋に思えた頃。その言葉を、歳三は覚えていたのだ。
勇は心の中にあたたかいものが広がるのを感じて、思わず微笑んだ。

歳三はこれから変わっていくだろう。
怠惰で歯がゆかったこれまでを忘れるべく、厳しく自らを戒めていくのだろうか。
だが、きっと心の奥の想いは変わらない。
あの日の青空の下で交わした言葉を叶えるために、自分と共に武士になるその夢の為に、勇にもまた変わる事を望んでいるだけなのだ。


やっと、昼間の歳三の言葉の真意がわかった気がした。
小さくなった火鉢の中の赤い燻りを見つめ、勇は歳三を信じる決意を掌の中に握り締めた。

「ああ…そうだな、トシ」


朝焼けを迎えるのは、もうまもなくの事だ。      


                    ― 終 ―

2004/04/21(水) 小説 『決意』@
           『 決意 』



「俺はあんたに賭けたんだ」


初めて見せる真剣な瞳がそこにあった。
…何故。一体、何がお前にそんな決意をさせたのだろう。
幼馴染みとして誰よりも気安く付き合ってきた親友の、白昼突然の宣告に、勇は戸惑いと違和感を感じずにはいられなかった。



「へっくしょん!」

盛大なくしゃみと共に、掛けていた布団が背から滑り落ちた。続いてまた大きなくしゃみが一つ。
火鉢に手をかざしながら、勇は鼻をすすり上げた。先程まで感じていた熱気が嘘のように、真冬の冷気と冷水で凍えた身体はなかなか温まらない。もう一つくしゃみをしたところで、勇は背後の障子が開く音を聞いた。

「よお、大丈夫か」
「…お前か…。平気だけど、くしゃみが止まらなくてな…」
「まあ、大仕事だったからな」

部屋に入り障子を静かに閉めると、歳三は勇の隣に腰を下ろした。そして、すっと勇の右頬を指差した。

「ここ」
「何だ」
「火傷してるぜ。首の所も少し。…熱かったか」

言われてみれば、炎に晒し続けた右側の頬や首筋に微かな痛みがある。片手で皮膚を辿ると、小さな水ぶくれがいくつか出来ていた。あのまま炎の前にいれば、この皮膚は惨めに焼け爛れていたに違いない。今更ながらにひやりとしたものを心に感じて、勇は苦笑した。

「あの時は夢中だったからなあ。実はそれほど熱くはなかった」
「意地っ張り。じゃあ、これはいらねえな」

歳三は勇の目の前で掌にのせた薬を見せ、にやりと笑いながらそれを袂に引っ込めようとした。途端に慌てて口を開こうとする勇を制し、歳三は笑って言った。

「塗ってやるよ。見せてみな」


「さすがは元薬屋だな。用意がいい」

歳三に塗って貰った火傷の傷口を触れないように確認しながら、勇は言った。

「おみつさんだよ。出掛ける前に色々総司に持たせてただろ」
「なんだ、総司のか。…まだ江戸を出てから少ししか経っていないのに、何だかもう懐かしいな」
「…ああ」

江戸の住み慣れた町並みとは違い、こうして街道を歩き、見知らぬ景色に囲まれていると、どうしても試衛館が遠く感じられる。先の長い旅を思い、勇は苦笑した。

「とにかく、助かったよ。宿割りの事といい、トシには…って、この名前はもう呼べないのか」
「ああ。因みに礼を言うのも禁止だ。言ったろ」
「不便だな…ト…土方君」

言いづらそうに口元を歪めた勇の言葉に、歳三は思わず吹き出した。勇がその様子を不満そうに見遣る。

「何だよ。自分で言っといて…」
「いいよ。二人の時はさ、前と同じでも」

笑いながらそう言う歳三を見て、勇は少しホッとする思いだった。昼間の歳三の突然の宣言に、距離を置かれたような気がして寂しく感じていたのだが、こうして膝を突合せて笑いあう、今の距離はとても近い。

2004/04/17(土) ツボ場面大会E♪
同じく14話より、『山南スマイル新解釈』の巻。

一人深刻な表情で悩む山南さんの元に、赤フン男原田が登場。
珍しく、山南さんを気遣います。

「あれ?どうしたの〜何か悩みでもあんの?」
「さっきの清河さんの建白書…ちょっとひっかかるんですよ。私の思い過ごしならいいんですが」

と、心のわだかまりを打ち明けて隣を見ると…

「うんめぇ〜。たまんね〜〜」

お茶漬け(もしやかの有名な京都のぶぶ漬けか!?)を食いながらご満悦、全く人の話を聞いていない赤フン男が約1名。
その様子に一瞬唖然としながらも、笑顔を浮かべてうんうんとうなずく山南さん。
でもこの時の笑顔がいつもと違うんですよね。
いつもの上目遣いのひたすら怪しい「ニヤニヤ」ではなく、暖かい眼差しの「ニコニコ」の微笑みは、まるでお母さんのよう…。

「ああ、そうでしたね。君はそういう人でしたね…。いいんですよ、沢山食べて元気でいて下さいね」

…ああ、お母さん!!


ヤバイ。山南さんに惚れそうだ…(笑)

2004/04/16(金) ツボ場面大会D♪
14話『京へ到着』より。
勇&歳三、ぶらり京都そぞろ歩きの場面♪

「京の都と言っても多摩の田舎と変わらねぇな」
「景色もどこか多摩に似ている。こんなに畑が多いとは思わなかった」
「星の数も多摩と同じだ」

何気ない場面の何気ない台詞なんだけど、心に去来する郷愁を感じて、しみじみとしてしまういい場面。
歳三は早速ホームシック?
俳人らしく、ロマンティックな台詞も口にしています◎
一方の勇は相変わらずの一途さで、京の乱れようを憂いている。

「見ろ。あれが二条城だ」
「じゃあ、あそこを警護するんだな」
「ああ。俺達が将軍様をお守りするんだ」

息もピッタリに二条城の方角へ一礼する二人。
志の高潔さ、希望に満ち溢れた青年二人の横顔。
なんていい場面……で終わらせて欲しかったのですが(笑)
よりにもよって島原の方角と間違えていたことが判明。
「おい…」と勇の肩を小突く歳三が良かったです♪

二人の関係も変わってゆくんだなあ、と少し寂しい気持ちだった前回。
まだまだこうしてのんびり肩を並べて散歩をしている姿などを見ると、ほっとしてしまう。
終生変わらない関係であって欲しい。
二人でいる時間が何より安らぐ、そういう暖かな関係だけは、いつまでも続いて欲しいと願ってしまうこのごろです…v

2004/04/15(木) ツボ場面大会C♪
(※イラストは後日改めてUPします…しばらくお待ちを!)


エントリーNo.4は13話『芹沢鴨、爆発』より。
巨大な炎を背に、芹沢と勇が正面から睨み合う場面♪

終始無言の場面の中に漂う緊張感。
またBGMの『誠の志』が良い具合に絡んでて、とっても大好きな場面です。

自身も火傷を負ったという慎吾君。熱演でした。
座り込む直前までの勇の声や表情がどこか泣きそうな感じ(目も潤んでるし…)でハラハラしたものですが、ザッと膝をついた瞬間の姿勢というか所作が凛としていて、ハッとさせられましたね◎

「もういい!」との終わりを告げる芹沢の一言に対し、改めて謝罪の言葉を口にする勇の真っ直ぐさに、芹沢も誠意を感じ取ったに違いないと思います。

14話の芹沢の「汚れてねぇ物を見ると汚したくなる」発言は、沖田ではなく近藤に向けられても良さそうなものですよね。
こういう近藤のまっすぐ過ぎるほど真っ直ぐな姿を見ると。
何故、芹沢は近藤に向けて敢えてそういう言葉を吐かなかったのか。
ちょっと気になるところです。


近藤勇という男の魅力を実感させられた13話の、最も印象的な場面でしたvv

2004/04/14(水) 突発小説第1弾 『桜』
            「桜」



まもなく都の入り口へと差し掛かる山科の付近に着いた時、綻び始めた桜の花が目に入った。

「桜が俺達を出迎えてくれたのか…」
と、いち早く声を上げる男の言葉に、「風流ですね」と山南が笑顔で相槌を打った。
二人の様子を背中越しに眺めながら、俺はそっと、近くまで伸びている桜の枝に手を伸ばした。
軽く触れただけのつもりだったが、枝に二つ三つ開いていた花びらは、たやすく風の中に散ってしまう。
これだから…


「…桜は嫌いだ」

小さく呟いた俺の言葉に、前を歩いていた二人は驚いたように振り返った。
「どうした、トシ」と禁じたはずの呼び名を口にする幼馴染みは、思い出したように「ああ、お前は梅の方が好きだったな」と勝手に納得している。
自分が言った言葉が、何年か前のその一言が、小さな花びらを重く散らせているとも知らずに。


「桜はいいよな。潔く咲き、潔く散る。武士の生き様そのものだ」

満開の桜の下を歩きながら、勝ちゃんは満足気に何度も同じ言葉を繰り返している。
川辺の土手に咲き並ぶ薄紅の花は今、その盛りを迎えていた。
「…武士の生き様、ねえ」
毎年のようにその下を肩を並べて歩き、同じ風景を見、同じ台詞を聞く。
もはや春の恒例行事とはいえ、余りに毎年のことなので、俺は多少うんざりしていた。
桜を見ると勝ちゃんの顔が浮かぶほどだ。
そう思えば、やわらかな雰囲気はどこか桜の花と似ているかもしれない。

「お前、いつも同じことばっかり言ってんな」
「悪いか」
「よく飽きねえなと思ってさ。俺は飽きたぜ、もう」
「聞いてるだけだろうが、お前は」
「だから、聞き飽きたんだよ」

怒りそうな台詞にも、勝ちゃんは笑う。鮮やかな桜に、よく映える笑顔だ。
だが次の瞬間、笑みは消え、ひどく真剣な眼差しで勝ちゃんは桜を見つめた。

「…俺も、そう生きたいと思う。志の為に潔く生きて、潔く死ぬ、武士の道を…」

風が吹いた。
幾枚かの花びらが風に舞った。
勝ちゃんの視線が散った花びらを追う。
俺は頑固に、枝にしがみついている桜の花だけを見つめていた。
満開の花を見て、散る瞬間を考える。それが、俺には嫌だった。


桜は、嫌いだ。
潔いという言葉に飾られた、その脆さが。
あの力強い笑顔が、風にあおられ散りゆくものならば。


視線を戻すと、あの頃と何ひとつ変わらない笑顔がこっちを見つめていた。
「今年は京で花見が出来るな、トシ」
懲りずに名を呼ぶ弾んだその声に、また同じ事を聞かされるのかと内心苦笑しながらも、俺は小さく頷いて見せた。


守りたいのは、満開の桜。その花を散り急がせるものならば…


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