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2004/12/04(土)
世紀の一戦
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本日は待ちに待ったK1決勝です。 誰が優勝するのかな? 武蔵の初優勝は?などと思っている人も多いでしょうが、 10年前の94年12月4日も同じ、いやそれ以上に楽しみにみなさん試合開始のゴングを待っていたはずです。
浪速のジョー辰吉丈一郎。
デビュー8戦目でWBCバンタム級王座を奪います。 しかしこの運命の試合後、目の負傷が発覚。 この天才児のケガ・己との戦いの始まりとなりました。 ブランクを於いての初防衛戦は、ビクトル・ラナバレスにTKO負け・・・。 この後ラナバレスは辺丁一に敗れるも、この辺も負傷でリングを離れることに・・・ その間を埋めるごとく、復活した辰吉はラナベレスとの暫定王者決定戦を制したものの、 今度は網膜はく離が発覚・・ これを患うと完治しても日本では試合が出来ないというルールにより辰吉は引退の危機に・・・
辺対辰吉の統一戦は流れ、辰吉の代わりに辺との対決が回ってきたのが薬師寺保栄。
6回戦でくすぶっていた男は日系人名トレーナーとの出会いで一躍世界戦線に。 不利の予想を屈返して辺丁一を倒し見事王座に輝きます。 一方引退勧告を拒否した辰吉は海外で再起。 「ボクシングはおれの職業」と訴える辰吉の執念はついにJBCを動かし、 「負けたときと網膜はく離再発の場合は引退」を条件に特例を認めさせます。
ここに「暫定王者」に返り咲いた辰吉丈一郎と正規の王者・薬師寺保栄との王者統一戦が実現!
名古屋での「世紀の一戦」は前哨戦から盛り上がりを見せます。 辰吉が「どっちが勝つかはやる前から分かっている」と言えば、 「辰吉君は暫定王者。ベルトにニセモノと書いてこい」とやりかえします。戦前の予想は8−2か7−3で辰吉有利に。
いざ決戦の時、先に入場して薬師寺を待つジョー。 あとから入って来た薬師寺はリング上で得意のダンスを披露。 辰吉はグローブを大きく叩いて拍手を送って観客にアピールし、館内は最高潮に。
試合は前半こそ辰吉がコーナーに詰めてラッシュを浴びせるシーンが数度あったものの、 後半になると左目を大きく腫らして視界が狭くなり、さらに1Rで左拳を痛めた事が響いたか後半は薬師寺ペース。
着実にポイントを奪い試合を有利に運びます。 劣勢に辰吉は最後の11・12Rに渾身のラッシュをかけるものの勝負は判定へ。12R終了のゴングがなると2人は抱き合い健闘を称えあいます。 「ここまで見事な試合を見せられるとどっちが勝ったとかじゃないですね」と具志堅。 「両方に拍手を送りたいですね」と井岡。
判定は2−0で薬師寺。敗者辰吉は、薬師寺を抱えあげて勝者を称えます。
この時のビデオはいまだによく見ます。 見たときのことも鮮明に覚えています。 友人たちが品川のマンションに集まり、夕食後エキサイトしながらテレビ観戦しました。 8割方は辰吉勝利を信じているようでしたが、私は薬師寺が勝つと言っていました。
個性的ボクシングに天才の輝きを見せる辰吉。 愚直なまでに基本的なワンツーを繰り返す薬師寺。
天才VS努力家。
序盤こそ、辰吉に攻められるものの、ロープ際でワンツーであの辰吉を下がらせるのを見て、勝利を確信しました。
ボクサーと言うのは恵まれないスポーツです。 多くの選手は、野球やサッカーのような脚光も浴びず、 1試合で500発も殴られ、命を晒しているのに報酬はわずかです。 日本チャンピオンでさえ、副業を持っています。 世界チャンプになっても、興業が深く関わるスポーツゆえ、 莫大な報酬を得るのは、「オプション」と呼ばれる前王者の指定する防衛線をこなしてからです。
故寺山修司の言葉に次のような言葉があります。
「売春婦とボクサーは、客の本能を満たすために己の身を削る」
日本は武の国。侍の国です。 この試合のことを思い出す度、会場に足を運ぶ度、 牙持たぬ我々は居住まいを正し、牙持ちて戦う彼らを尊敬の眼差しで見上げます。
スター不在といわれ、なにかと揶揄を受ける格闘技の選手たち。
試合結果は単なる結果に過ぎません。 私は結果を見たいわけではありません。 選手が迸らせる魂の欠片を拾いに、足を運ぶのです。
すこしハァハァと熱くなるキャプテン☆山手でした。 (Σ('=';) ハッ!!風邪ひいてるんだった・・)
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