風花の言伝
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2012/06/02(土) 久しぶりに創作!!1
久しぶりに簡単な創作をしたくなりまして、ツイッターでお題ありませんかーと言ったら
お題をくださったフォロワーさんがいらっしゃたので書かせていただきました!!
この日記の文字数により、SSなのに数回に分けてお送りします!
なんと今回は、火月があまり書かない甘い内容となっています!
はい、私の中では甘いんです!!

ではどうぞ、久しぶりの火月作品です。



『わたあめ』
お題提供者様=らいさん





あなたと再会したのは暑さが少し和らいだ夕方。
図書館でやっと課題図書を借りに行った帰り、
夏休みの宿題をやらないといけないのかと憂鬱な気分だった。
高校生最後の夏休みだっていうのに受験勉強に夏休みの宿題で、休みらしい休みを過ごせていない。
とはいっても、友達が少ない私に友達と遊びに行く予定が入るわけがなかった。
「ただいまー」
リビングから笑い声が聞こえる。
玄関のドアを閉め、サンダルを脱いで敷台に上がるとリビングから母が出てきた。
それに続いて、母と同い年ぐらいの女性と、背の高いあなたが現れる。
私は端によって道を開けると、母は笑いながら私を女性たちの前にずらした。
「ほら奈菜。秋君と秋君のお母さんよ」
「綺麗になったわねー奈菜ちゃん。ねえ秋彦」
あなたははどうもと言って微笑んで私に声をかけた。
あなたの微笑みに、幼いころの思い出がうずいて、顔が熱くなってくるのが分かる。
私は顔を隠すようにうつむくと、どうもと言葉を繰り返すしかできなかった。




夏にしか現れない幻の人。それが秋君……あなただった。
小学生の夏休み。男の子たちに追いかけられ人気のない神社に逃げ込んだ私を見つけてくれた人。
夕日に照らされるあなたの微笑みは、小学生の私には昼間の太陽のように眩しかったのを覚えている。
私より2つ年上で、家は反対方向の場所にあることしか知らなかった。
昔からの幼馴染でもなければ、学校も違う、全く接点のない私たちを繋げたのは、
いつだって夏の夕日。
七夕の織姫と彦星みたいとあなたにいったのを思い出してと恥ずかしくなる。
だけど、私が中学生になってから、あなたとは会えなくなってしまった。
会えなくなって最初は寂しさを感じたけれど、1年に1回の逢瀬であったために
高校生になる頃にはなにも感じなくなっていた。




それが6年越しにあなたと再会して私の心は喜んでいる。
でも、私の性格がそれを邪魔して、かわいくない態度になってしまった。
昔なら思いっきり抱きついていたのかもしれない。
今じゃ恥ずかしくて触れることもできそうにないと思った。
触れた瞬間に消えてしまうんじゃないのかと。



あなたが帰った後。私は自分のベッドで枕に顔を押し付けていた。
思っている以上に、心の喜びは大きく、鼓動が苦しい。
久しぶりに再会したのに、もう会えないと思うと胸が押し付けられるようで苦しくなった。
会いたい。でも連絡先は知らなかった。
来年も会えるそんな保証はなかった。また一つ重りが胸にのしかかる。



コンコン。部屋のドアをノックする音が聞こえる。
「なに?」
ドアを開けて、子機のマイク部分を抑えた母が入ってきた。なんだか、嬉しそう。
「奈菜に電話よ」
そう言って子機を渡すと母は鼻歌を歌いながら部屋を出て行った。
首を傾げながら子機を耳に近づけると
――もしもし?奈菜ちゃん?
あなたの声が聞こえる。
「は、はい。奈菜です」
――久しぶりだね。元気にしていた?さっきなんだかうつむいてたから
「元気ですよ。ありがとうございます。あ、秋彦さんはお元気でしたか?」
――うん。元気だったよ。……なんか昔みたいに話してほしいな。
電話の向こうであなたが微笑んでいるような気がした。
「……うん。わかった」
――いい子だね。あのさ、さっき奈菜ちゃんのお母さんに教えてもらったんだけど、
  近くでお祭りがあるんだって、一緒に行かない?
「うん。一緒にいきたい」
私が即答したことにあなたは驚いたのか無言になった。あなただけじゃない。
私も自分が即答したことに頭がついてこれていなかった。
――あははは
電話の向こうであなたが笑っている。
――よかったー。じゃ1時間後に迎えに行くから待っててね
通話が切れた。でも私の心はまだ走り続けている。通話が終わるのを待っていたかのように
母がノックなしで部屋に入ってきた。
その手には新しい薄い青の布に紫陽花と蝶が描かれた浴衣セットを持っている。
「お祭りに行くんでしょ。着つけてあげる」
着付けも終わり、鏡に映る自分の姿をくるくる回りながらおかしいところがないか確認する。
いつもは下ろしている髪も、御団子にしてもらった。
浴衣の色に合わせた巾着も持って外で待っていると、あなたが走って来てくれた。
一瞬あなたの表情が赤くなった気がしたけれど、あいさつだけをして
私たちは会話も少なく、お祭りが行われている神社に向かった。

『わたあめ』(1/2)

(C)2012/火月

それでは続きは明日に!失礼!


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