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2004/03/19(金)
19世紀の演劇
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5 19世紀の演劇
18世紀を通じて個々に発展してきたさまざまな思想や芸術的概念は、19世紀初頭、ロマン主義として開花した。
5A ロマン主義演劇 ロマン主義の関心は精神的なもの、すなわち人間が物質世界や肉体をこえて理想的真実にいたることを可能にするものにあり、主題を自然や自然人にもとめることが多かった。ロマン主義演劇の典型は、ドイツの作家ゲーテの「ファウスト」(第1部1808年、第2部1832年)にみることができる。自己の魂を悪魔に売りわたす男の伝説に取材するこの戯曲は、叙事詩的な壮大な構想のもと、人間が宇宙とたたかいながらあらゆる知識と力を手にいれようと苦闘するさまをえがいている。
ロマン主義者たちは合理性より感情を重視し、芸術家は規則にとらわれない狂気の天才であるべきだと考えた。したがって、そこで量産された劇文学は奔放さを特徴とし、その多くは具体的な内容より感情的な爆発を主題にしていた。
ロマン主義演劇は18世紀以前には軽いファルス程度しかなかったドイツにおいて、はじめて登場した本格的な演劇で、1820年代には、ヨーロッパの劇場を席巻するまでになっていた。ロマン主義演劇の考え方は、ゲーテやシラーがひきいた18世紀後半のシュトゥルム・ウント・ドラング運動の中に明確にしめされている。この時代に書かれた戯曲には特定の形式というものがなく、感情的側面がつねに強調され、新古典主義の否定をうながすようなさまざまな実験がなされた。
フランスの劇作家ピクセレクールの作品がフランスのロマン主義演劇への道をひらいたといえる。それ以前のロマン主義演劇といえば、19世紀初頭の俳優フランソワ・タルマの演技によって知られていたにすぎなかった。ビクトル・ユゴーの「エルナニ」(1830)がフランス初のロマン主義演劇と考えられる。
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