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2004/03/20(土) メロドラマ ウェルメードドラマ
5B メロドラマ

ロマン主義演劇を登場させたあの想像力が大衆演劇とむすびつくことで、メロドラマという形式が生まれ、19世紀を風靡(ふうび)した。メロドラマといえば、鉄道の線路にヒロインをしばりつけた悪漢という陳腐なイメージがすぐにうかぶ。批評家もまた文学的価値をみいださなかったために、演劇史的には嘲笑(ちょうしょう)の的となるか無視されるかのどちらかであった。しかし一般大衆の間ではメロドラマはかつてないほどの人気をえ、大衆的な演劇として発展した。メロドラマという語には、悲劇と喜劇の混合という意味と、音楽をともなう劇という2つの意味がある。後者、すなわち登場人物が類型的で、観客の感情を音楽で操作するメロドラマは、現在のテレビにもよくあてはまる。

メロドラマの代表的劇作家といえば、19世紀に世界的な人気をえたドイツのコツェブーで、200以上の作品をのこし、そのほとんどがほぼ欧米全域で翻訳・翻案され、模倣された。フランスのピクセレクールも同様だった。

メロドラマは古典劇のように5幕ではなくふつう3幕からなり、物語は善玉の主人公と悪玉の敵(かたき)役を中心に進行する。主人公は考えられないような苦難を最後にはかならずのりこえるが、筋はかなり作為的でいくつかのクライマックスが用意され、突然運命に変化がおとずれる。洪水、地震、火山の噴火、馬による逃走、戦闘などの派手な場面が舞台でえがかれる。単純な筋、わかりやすい登場人物、感情の噴出、見世物的要素、道徳的教訓などをくみあわせることにより、メロドラマは大衆的な演劇となり、演劇史上またとない多くの観客を獲得することになった。

5C ブルジョワ・ドラマ

19世紀の最初の25年間というもの、メロドラマとロマン主義演劇は歴史的出来事や異常で非日常的な世界を、かなり単純化された人物をもちいてえがいていたため、現実とはおよそ遠いものと考えられていた。しかし1830年代のイギリスでは、この2つの演劇の形式をかりて、より時代をうつしとった風俗と、より深刻なテーマをえがく演劇が登場した。ダグラス・ウィリアム・ジェロルド、エドワード・ブルワー・リットン、ディオン・ブシコーらの作品は家庭的メロドラマ、紳士的メロドラマ、ブルジョワ・ドラマなどと新しい名称でよばれるようになった。

彼らの劇では見世物的要素やセンセーショナルな出来事は影をひそめ、地方色や家庭内のようすが細部にわたって再現されている。そのために、今までとはことなる上演の技術が必要になり、それが現代にまでつづく舞台技術の発展へとつながった。三方の壁からなる室内の舞台装置で、観客は目にみえない第4の壁ごしに部屋の中をのぞくかっこうのボックス・セットが流行し、絵にかかれた背景のかわりに3次元の実際に近い家具がつかわれた。舞台装置はたんなる背景ではなくなったので、俳優は現実の写実的な環境の中で演技し、観客の存在をわすれたふりをすることになった。身ぶりも細分化され、大きなポーズをとったり壮大な台詞をとうとうと話すといった演技のかわりに、登場人物と状況にふさわしい写実的な演技が必要になった。衣装と舞台装置には歴史的正確さがさらに要求され、劇作家も写実的な細部に注意をはらうようになった。

観客数が増大するにつれ、上演の方式も変化した。それまで俳優はレパートリー劇団に所属して1シーズンに10以上もの劇にかわるがわる出演していたが、同じ劇を継続的に上演するロング・ラン・システムが一般化し、俳優は1つの上演のために雇用され、公演がおこなわれている期間だけ給料が支給されるようになった。

5D ウェルメード劇

フランスのブルジョワ・ドラマはウェルメード劇とよばれ、ウジェーヌ・スクリーブと彼の弟子ビクトリヤン・サルドゥーが代表的作家である。メロドラマ同様、ウェルメード劇は高度な技巧が必要とされるうえ、特有の構造をもっている。それぞれの劇の内容は細部ではことなるが、基本型はほぼ同じで、わかりやすい説明からはじまって、事件をつみ重ねながら最終的にひとつのクライマックスを形成するという構造である。どんでんがえしやかくされた情報、それにまちがった相手に手わたされた手紙といった重要な小道具などが巧みにつかわれ、それに作為的にサスペンスももちこまれた。このウェルメード劇の構造は19世紀後半に書かれた戯曲の基本構造になったが、その構造をもちいてデュマ(子)やエミール・オージェは「問題劇」とよばれる同時代の社会的問題をあつかう劇を書いた。


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