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2004/04/18(日)
ゲーテ「ファウスト」 2
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「ファウスト」は、ゲーテの長い生涯の最後をかざるにふさわしい大作である。また、ドイツ文学の傑作というばかりでなく、世界文学を代表する名作ともなった。中世の学者魔術師としてひろく知られるファウスト博士の伝説を解釈しなおして、人間生活のあらゆる支脈をみごとに統一した壮大なアレゴリーにしたてあげた作品である。それは、様式のうえでも立脚する視点のうえでも、血気盛んなシュトゥルム・ウント・ドラング時代にはじまり、しずかな古典主義の時代をへて、現実的な知性の円熟した晩年にいたる、ゲーテのめざましい成熟発展の道のりを、表徴したものでもあった。人間の営為と神の営為とを探究しつづけ、自己の尊厳を成就しようとする一個人の正義感とすぐれた能力を称揚してやまないこの作品は、近代個人主義の精神が生みだした最初の文芸大作として、世界的な名声を博するに値するといえよう。
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