|
2006/08/16(水)
八月十六日
|
|
|
昨日の植田家の夕食は中華丼と餃子であった。 その二品だけだったとはいえ、中々に分量があり、家人は相当量を食べられた。 しかし、餃子というのは油と刺激の強そうな野菜の集合体であって、 これが結構食べた量によっては食べた者の胃を刺激しなくはない。 日本風にアレンジされた中華料理というのは実に若人向けであり、 育ち盛り食べ盛りである植田はまさにこれらの虜となって旺盛な食欲を以ってして食べたのだが、 大方の予想通り食傷気味となった。 食後直ぐの時はいっかな平気であったのだが、時間を下るにつれ、どんどんしんどくなっていき、 最終的に胃から食道まで、焼けつきむかつくばかりであった。 最終手段として、ナタデココ入りのヨーグルトを食べて、乳酸菌乳酸菌乳酸菌と頭の中で 幾度となく唱えたのだが気休め程度にしかならず、しかしそれでも 何らかの薬品に頼る気もさらさら起きず、結果的にずっと植田は気持ちが悪かった。 植田はその非常なる気分の悪さに一晩中苦しめられることになる。 まさに日が昇るその時までMDプレイヤから流れてくる音に耳を傾け、 照明を落して視覚情報を可能な限り遮断し脳への負担を避けつつ、延々寝返りを打ち続けることとなるのだ。 眠りについたのが仕事の都合上朝の早い父親が起床する頃合になってからである。 それまで散々苦しんだ挙句に唐突な眠りに落ち夢を見た。 現在の植田の担任教師と、中学の時のクラブ顧問が出てきて、 バスケだかバレーだかを見たことのある先輩や後輩や同輩とクラブ活動として行い、 体育館の使用を巡って他クラブと衝突し、面倒くさくなってきた時に唐突に悟る。 目を開ければいいんだよ、そういう別な自分からの幻聴が聞こえてきて、 その通りに夢の中では活動状態にあるにも関らず、目を開けた。今の部分は要傍点だ。 最後の最後に置かれていた状況を夢見と認識して現実へ寄港したわけであるが、 植田には少々まだ腹が膨れているような気もする。 が、そんなことはおかまいなく、起床後一時間も経たぬうちに昼食である。 植田としては食べ盛りの我が子を思って一人多めに盛ってくれるのはありがたいが、母さんすいません、という心境である。 が、まあ文句を言うわけにもいかず、そして食べ残すわけにもいかず、 兎に角箸をつけたところで、植田の数少なき友人の一人である能見から電話がかかってくる。 能見はしょっちゅう暇を持て余している友人で、まあ勉学への情熱は人よりも冷めているところがある人間である。 がしかし、能見もまたこの日記を見ているので詳しく言及することは避けておこう。 まあ予想通り植田は能見の家に赴くことと相成った。 それでも、きちんと昼食を完食したことは付記しておこう。 さてそんな身重の状態と表現して過言ではない状態で友人宅へ赴いて、 まあ何をするでもなし、冷房を浴びたり氷菓子をご馳走になったり、 それはもう駄弁の限りを尽くして、時間という時間を幸福な退屈さと一緒に消費した。 結果的に、という条件がつき、しかも望ましくないものだったとは言えども夜更かしをし、 更に大胆なる朝寝坊をし、そして友人宅へお伺いして、という植田にとって今夏一番夏休みらしい日だったのではないだろうか。
--- 招待された男の正体 いかにもミステリィチックな感じ。
|
|
|