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2006/08/22(火)
八月二十二日
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日曜日だったか、部屋の本棚だけでは出版物の収納がおぼつかなくなってきたということを 食卓の話題として植田が提供した時におどけて、 「じゃあダイニングに置いちゃおっかな〜」などと言ったのであるが、 すかさず母親に「読んでる本の傾向がわかるな」と言われて、 「ほにゃらば漫画でも置くかな〜」なんて答えたのだが、植田の内心は緊張で狂いそうだった。 植田が高校一年生だった頃、風邪を患い臥せっていたことがあった。 母親が様子を見に来たのだが、その時に時雨沢恵一という作家の書いたアリソンという作品が 机の脇だかに仰向けの状態で置いてあって、それが所謂アニメ調のイラストをあしらったものだったのを目に留め、 「あんんたの読むもんはわからん」と言ってのけたことがあった。植田的にそのことは忘れらない出来事である。 確かにそれは高校生の読む書物としては一般的ではないかも知れない、でもね、でもねと、 寝転びながら植田の心の内では反論の潮流が渦を巻いていた。何も言えはしなかったが。 そのようなことがあってから早くも二年弱。未だに母がそのようなことを覚えているかどうか誰にもわからないが、 植田は恐れていた。何か良くない印象を抱かれていないだろうかということを。子は親の愛情が必要だ。 何せこのサイトの読書録を読めば一目瞭然だが、そういう本もまた植田は多く読んでいるのである。 漫画を置くという対案を出してしまった時点で小説に対して思うところがあることが露見する可能性が 高まるわけで、植田の精神は堂々巡りの思考停止状態に陥る。後悔の感嘆詞しか出てこない。 更に少し経って小説を置くより漫画を置く方が墓穴を掘ることに気付いて植田の顔は引きつった。 そんな経験も新しい今日は火曜日である。インターネットを利用して申し込み、 CDやDVDを借りられるというサービスの話を今日偶々またも遊びに行った能見と植田はしたのだが、 何かの偶然が起きて、食卓でその話が灯った。今日得たばかりの知識を使ってその素晴らしさをアピールして、 受験勉強の際のお供に音楽を利用出来ないものかと思い「絶対安いって。凄い得やん。借り放題やで」云々。 ただでさえ打ち込み難い勉強である。植田は音楽利用程度は保証されてしかるべきと思って色々言ってみたのだが そこで母親にこう言われるのだ。「…で、何聞くの」。植田は何も言えない。 植田の精神はこう考えている。曰く「え、なんでそんなん尋ねんの。別に何聞いてもええがな。 クラシックだの映画音楽だの、日本のポップ、外国のロック。選り取りみどりやん。 あ、それともあれか、以前ちょっと大きめの音量でかけてて母親が外から帰っても気付かなくて 薄いドアを通して恐らくは垂れ流し状態になっていたピーーーーーーーーのことを指しているのか? やっぱり聞いちゃってた?確かにピヨピヨピヨピヨなんかは聞かれたらまず過ぎる。 得にあの時はかかってたのがムニャムニャムニャだったりした気がするし、あれはまずい。 ってか、正直借り様としてるのはそのピーーーーーーーーだったりするんだけどね。あばば」。 やはり色々思うところのある植田は何も言えない。植田のみに気まずい沈黙。 家庭内においてこそ、植田は気を引き締めなければならない。 ラノベの支持層はまだまだ狭く薄く低い。
--- お洒落に酒を飲む婆さん。 BARで飲む。
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