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2006/08/24(木)
八月二十四日
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植田がちょっとパソコンから疎遠になっていた。 理由なんてなかった。たまに家出したくなるのと同じ気分で、 好きなものでも遠ざけたくなったりすることもあるのだ。 家出など一度も植田は経験したことがないが。 夜道の暗さと、親不孝に伴う非道感が好きではないので大袈裟なことができないのだ。 なんというか、普段べったりな分、反動もあったりするだろう。 植田としてはそんな理屈などは無いのかもしれないが。 それで朝少し時間があったので、久しぶりに少し試した。 やっぱりそこに居る他者の意思を、一方的な親しみを覚える他者の意思を 懐かしく心地良く思う一方でなんとなく疎ましくもあった。 が、植田の中では時間的逼迫に起因するとして処理されている。 流石にバスが来るまでの暇潰しとしてネットというのは難しい。 別に四日キータッチしていなかったのがどうという問題ではないというのを 植田は理解しているのだが、なんとなく拘泥してみたい気分でもある。 四日の空白が気になるほど、画面に向かう時間が家族一長い人間なので、 家族がパソコンを使って、操作上困ったことがあれば自然と相談される。 ファイルの保存形式やコピーアンドペースト程の些細なことでさえ、 案外頼りにされたりする。植田の機嫌次第で乱暴に教えたり、 或いは饒舌過ぎるほどに丁寧に教えてみたりと、 人間的欠陥を存分に発揮した独占企業的気分屋風を吹き晒しているのだが、 今日は特にむずがることもなく、妹にファイル形式について教授を垂れて、 カチリ、ザッ、カチカチリとマウスを横から扱ってやると、 しきりに感嘆した様子の妹がまったくもって無邪気で無意識的な態度で 「ほほー、かっこいー」 とかって、若い子の血液みたいにサラっと言ってのけたので、 とかって、研磨された望遠鏡用硝子の様にあまりにツルリと言ってのけたので、 植田は仰天するけれども満更でもないので喜悦にちょっと表情を緩めた。
--- それで啖呵をきったんか? あかんかったんか?
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