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2010/10/16(土)
パジャマと蟹（続き）
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そのままデパートを出て車を日本海に向けるよ。俺は小さな駅のロータリーに車を止めて駅員に質問しに行く。「この辺りで上手い蟹を食えるとこはありますか？」もちろんある。福井県で蟹が食べられない訳がないよ。俺が車に戻ってみると君は脱走している。さっきのブティックの紙袋に入ったパジャマが助手席に、床にスリッパが置いてある。俺はとにかく哀しくなってそのスリッパを休耕田に投げ捨ててしまう。右足を遠くに投げて左足を掴んだ時に君の姿が見える。俺が車内に残した財布から小銭を抜いて飲み物を買いに行ってくれていたんだ。飲み物を俺に持たせて君は左足のスリッパを受け取りそれを投げ捨てる。右足よりも遠くに落ちて俺は驚く。君が高校時代ソフトボール部だったことをそこで初めて知る。その後は蟹を腹いっぱい食べてゆっくり君の家の近くまで帰る。駐車場に車を停めて、酒を飲みに行こう。三軒はハシゴするんだ。それで、俺はきっと疲れてるから吐いちゃうだろうね。俺は運転して疲れているからね。手に力が入りすぎてひょっとしたらハンドルから手を離すと震えてるかもしれない。でも気にしないでね。疲れてるだけだから。俺は吐いちゃって、気持ち悪いから三件目のお店を出て自動販売機でお茶を買って飲む。水はダメだよ。吐いた後飲むと、胃液の味がするからね。口の中が酸っぱいままだから、お茶を飲む。俺はそこで煙草に火をつける。もちろん、キャメル・メンソールだよ。煙草を半分くらい吸った所で君が唐突に俺にキスする。一瞬で君は俺の唇から離れて行っちゃう。俺は寂しくて照れてもどかしくて仕方ないだろうけど、それを堪える。それで君と朝まで野球の話をして解散するんだ。」朝からこんな話を聞かされながら君は半分寝てる。俺が車で迎えに行くと君は化粧もして普通の服を着て出てくる。車のドアを開けて乗りながら「今日どこ行くんやっけ？うち、アウトレット行きたい」とか云う。俺は本当は福井で蟹を食いたいんだけど、君の為に仕方なしにアウトレット・モールにに向かう。「アニソンとか入ってないん」とか言いながら君はiPodをいじる。アニメ・ソングを聞きながら俺は運転する。適当に買い物して、ご飯代だけ出してあげて帰る。そして解散する。ブラがあってキスはない。俺の妄言は全部裏切られる。完璧で淡白なデートだ。っていうと君はまず「はあ？」って云うだろうね。「結局何がしたいの」って続けて問うだろう。眉間にはきっと皺が寄ってるね。俺が原因だ。俺は簡潔に応えるよ。「今度秋服を買いに行こう」って感じの適当な話をしに今晩飲みに行かないかい？」
「嫌よ。今日のあなた気持ち悪いもの」
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