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2012/08/20(月)
デートの予定が流れた話2
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しかし、昨日数時間の期間を置いて恋人の後藤田から連絡が来た。 植田と会いたいけれども、本腰を入れて就職活動をする決意をし、取り急ぎ此の月曜の休みは其の事に充てたい、と云う。 一体どんな理由で約束を断られたのかと悪い想像ばかり膨らみ、理由を伏して居る事も気に成り、困った様な怒った様な気でいたので、訳を聞いて気持ちも氷解、成る程其れは応援致しますと成ったのだった。
とは云え、丸一日就職活動の事ばかり考えていられる筈もないだろうに、私も明日からは勤務の有る身、そう長く引き留めたりはしないのだから、少しばかし顔を見せて呉れても良いじゃないかと不満だったりもする。 斯う云う風に、勝手に不安がったり不満そうにしたりして、自己本位な感情、有り体に言えば独占欲を炸裂させて仕舞う事を、惚れていると呼ぶのだろうか。 耐える事を知らない餓鬼の如き私に、惚れたと云う言葉の持つ色気はしっくり来ないが。
でも、そうだ、私なりに少し意地らしい事も考えている。 先般コミックマーケットへ遊んだ際、浅草で買い求めた可愛らしい猫や金魚の浮世絵柄の絵葉書があるので、後藤田を思いながら黙々と一葉書いて出そうかと云う。 私は手書き原理主義者ではないし、大学の友人との年賀状の遣り取りとて住所を交換した当初こそ面白がって書き、そして直ぐ飽きると云う様な筆不精なのだが、後藤田にだけは、時々手紙や葉書を書いて送りたくなるのである。 恋人の面影を浮かべながら、ペンで、能う限り叮嚀に宛名を書いたりすると、私の好きな大戦前の時代の人間に成った様な気がして、ロマンティークな心持ちに成る。
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