|
2004/11/21(日)
「ラ・ボエーム」雑考その2
|
|
|
◆第二幕コルリーネ「サラミだ!」"Salame!" ミミを連れて仲間たちの待つカルティエ・ラ^ンに現れたロドルフォ。マルチェルロ、ショナールそしてコルリーネがミミに初めて出会うシーン。 仲間は芝居じみた形でミミを仲間に受け入れます。 マルチェルロ(ロドルフォのミミを紹介するアリアに対して):"Dio che concetti rari!"=まさに貴重なご意見だ! コルリーネ:"Digna est intrari!"=(ラテン語で)加入に価する! ショナール:"Ingrediat si necessit"=(ラテン語で)必要あらば入会されよ。 コルリーネ:"Io non do che un'accessit!"=(ラテン語とイタリア語が入り混じって)おれはただ加盟だけを贈ろう! <しばし間 そして・・・> コルリーネ:"Salame!"=サラミだ!
コルリーネは決してミミが嫌いな訳ではないのですが、彼女が入ることで男4人の関係が離散することは嫌なんです。それが「加入」ではなく「加盟」と正すコルリーネの言葉になるのだと思います。 男たちの友情の中にミミが入ることは認めない。ただ仲間として認めよう・・・という態度。 そして少し気まずくなったところで「サラミだ!」・・・と。
この「サラミ」は給仕に対する注文であるはずがなく(そういう演出がなぜか多いのですが)ミミに対するちょっとした皮肉のはずです。 つまり「サラミ"salame"」と「サロメ"salome"」を掛けているわけです。
●『サロメ』のあらすじ● 若い娘が踊りの褒美に男の首を要求するという「サロメ」の話は、二千年以上昔、古代ローマ時代のガリラヤ地方の逸話として聖書に登場する。そしてルネサンス以来、数多くの芸術の中でこのテーマが繰り返し描かれてきた。アイルランド生まれの詩人、小説家、劇作家であるオスカー・ワイルドが1891年に書いた一幕悲劇「サロメ」では、『死に憧れる乙女サロメは、思い焦がれても振り向いてもらえぬ男を死に至らしめる・・・。』 ※参考→http://www.herald.co.jp/official/salome/index.shtml
女というものは男を死に至らしめる・・・。 数回の恋愛を繰り返しそのたびに失望と挫折に思い悩んできたロドルフォ(第3幕より)。 その姿を目の当たりにしてきた女嫌い(?)のコルリーネとしては、 ロドルフォに新しい恋人ができることを素直には喜べないものがあるのかもしれません。 それをわからないように皮肉って叫ぶ"Salame!" コルリーネの堅物なまでの実直さと、友情からくる彼なりの精一杯の抵抗でもあるのかもしれません。
この後、ミミがいる前でロドルフォの女性遍歴を匂わせることをショナールと話しているのも、その延長です(練習番号[15]の42小節目〜) し、 その後ムゼッタが登場した後のショナールとコルリーネの会話もつながっています。 実は第2幕はコルリーネの人生観(特に女性観)がよく表れたシーンなのではないでしょうか?
↓全体練習後、自主的に練習するロドルフォ(父:古澤泉)とミミ(永安淑美さん)
|
|
|
|