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2004/12/03(金)
いよいよ明日→「ラ・ボエーム」雑考 フィナーレ
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いよいよ「ラ・ボエーム」の本番を明日に控え、 今日は1日オフ。 今年はこの公演のために秋からいっさいオペラ公演を入れず(学校公演はありましたが・・・)頑張ってきました。 来てくださったお客様により楽しんでいただけるよう頑張ります。 ・・・昨日の場当たりのときにホコリを吸ってしまったのか、ちょっと鼻水が止まらないのですが、明日には何とかなるでしょう。
最後に、「ラ・ボエーム」雑考 フィナーレ ◆「お前こそ本当の哲学者だ!」◆ 第4幕終盤。哲学者コルリーネが有名な「外套のアリア」を歌います。 この「外套のアリア」は仲間たちが芸術家としての信念を失っていく中、最後まで哲学者としての生き方を変えなかったコルリーネが、ついにその信念を捨てる重要なシーンでもあります。
そのアリアを部屋の隅で聴いているショナール。 誰よりも4人の姿を客観的に眺めてきた彼には、 最後の砦であったコルリーネの芸術家としての信念までもが崩れていく様を目の当たりにし、絶望します。 (コルリーネ・・・お前までもが・・・これで芸術家はだれもいなくなった・・・) この瞬間、彼ら4人の楽しい生活が終わることを予感しているのかもしれません。
"Addio! Addio・・・"の言葉で終わる「外套のアリア」 感動的なアリアを歌い終えたコルリーネは、 うなだれているショナールにそっと語りかけます。 「ショナール・・・(略)二人だけにしてやろうぜ」 その言葉にハッとするショナール。彼はこんな言葉をコルリーネに返します。 「その通りだ哲学者よ!本当だ・・・行こう!」 この時ショナールは(自分に「ショナール」と呼びかけてきたコルリーネに対し)「コルリーネ」と呼ばずに「哲学者よ」と呼び返すのです。
いつも本ばかり読んでいて、世の中や人生を冷徹に揶揄してきたコルリーネ。 哲学を捨てる決意をしたばかりの彼はロドルフォとミミを気遣った何とも美しい優しさをみせるのです。 そんなコルリーネに対してショナールは感動し、 「(お前こそ真の)哲学者よ!」と呼んだのです。
●ショナールは気づいた!● 以前の「ラ・ボエーム」雑考で何度も書きましたが、 この第4幕で彼らは瀕死のミミの前では自分たちの芸術は何の役にもたたない・・・という絶望に打ちひしがれます。 特にショナール(音楽家:プッチーニ自身がモデルなのかもしれない)は何もできずにいます。 (僕はラストシーンを演じるにあたって、ミミがマフをもらって「高かったんでしょ?」とロドルフォに言うシーンで、一番胸を痛めています。「なんでオレたちはこんなにも役立たずなんだ!」と。) そんな失望感の中に一筋の光が差し込むのです。 コルリーネがそう促したように、 「人を気遣う気持ち」「愛し合うことの大切さ」こそが、 哲学(=人生)であり、芸術であること悟るのです。
ミミの死以降、ショナールたちは散り散りになります。 きっとショナールは新たな気持ちで芸術、音楽に臨むに違いありません。 ミミの死を無駄にしない。 この経験で知った「思いやり」を自らの糧にして、音楽人として人生を謳歌することでしょう。 そんな願いをこめてオペラの「幕」を演じきりたいと思います。 何よりも会場に居合わせた全ての人に愛をこめて・・・。
※昨日のゲネプロより。衣裳をつけた様子。これは第4幕の衣裳です。
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