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2004/02/28(土)
オペラ鑑賞記:新国立劇場研修所「こうもり」
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僕の友人である青山貴くん(青やん)が新国立研修所修了公演「こうもり」に出演するということで、初台の新国立劇場に行ってきました。 何度もここには足を運んでいますが、改めてオペラをやる環境としては良い環境だなぁと思いました。こんなところでやったら楽だろうなぁ・・・。声がきちんと通るんだろうなぁ。 さて、公演そのものですが、全体的にとてもエンターテイメントに富んだ演出で、とても面白かったです。 時には悪ふざけかな?と思えるようなギャグもあったのですが、それは飽くまでオペレッタですから、面白ければ何でもありだと思います。 そういう意味で演者はとても素晴らしかったです。 特にアイゼンシュタイン役の桝さんは声も芝居もすでにベテランのような安定感。役作りも理性的でありながら笑いのツボをしっかりおさえ、非常にバランスの取れたアイゼンシュタインで、物語の一番中立(彼だけが劇中劇の中で素だったわけです:あ、本当はアルフレードもか・・・)の存在にあることで他のキャラクターよりも浮きだって見えました。
面白かったには面白かったのですが、その面白さは本来は「音楽」そのものから出てきて欲しいものだ、と思いました。 序曲からずっこけたのですが、音楽の中に仕掛けられているシュトラウスの「音の冗談」が全く理解されていなかった。 ワルツは正確に3等分にリズムが刻まれ、聴衆に音楽的な魅力を全く感じさせることができなかった。まるでマーラーの交響曲を聴かされているような厳格な対位法(内声や低音をやたらと強調していた)、めまぐるしすぎるテンポの変化、全体的に強引すぎるハイテンポ。序曲はむしろ不快感だけを残しました。 有名な重唱やアリアが沢山含まれた作品ですが、正直音楽面では全く笑える部分はなかったし、「楽しい」と感じることが出来ませんでした。笑いが起こったのはほとんどセリフの部分。 これじゃぁ音楽はいらないじゃないか・・・。 歌い手はとても素晴らしかっただけに、その全ての責任は指揮者にあるのだと思います。 「シャンパンの歌」もそうですが、お客さんを巻き込む音楽、共感できる音楽があってこそ笑いも起こる、楽しんでもらえる。 最近、モーツァルトのブッファ・オペラでも感じるのですが、やたら演出的な悪ふざけばかりが目立って、音楽そのものが含んでいる「偉大な冗談」が理解されていない公演が多いと思います。 しっかりそれを読み込んで演奏すれば、極端な話、演奏会形式でくそ真面目に演奏しても客席から笑い声が聞こえるはずなんです。
以上・・・厳しめの鑑賞記でした。でも歌い手、演出その他は本当にすばらしかったんですよ。
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