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2006/04/19(水)
回想「道化師」本番中の出来事
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シルヴィオ役の僕はプロローグの前に、 一番最初にステージに上がり、中央で寝ました。 トニオがプロローグのアリアを歌っている間、遺体として横たわっているのです。 これはラストシーンを先取りしているのでした。
客席からは見えないのですが、 僕はあの舞台上で長い年月を演じることができました。 目を見開いたまま意識を失い、腐り、草木が生え、根を生やしました。
すると突然耳元で鳴るトニオの太鼓の音で過去に戻り、 僕は目を覚まします。 そのとき横たわりながら、無意識のうちに自分が涙を流していたことに気がつきました。 涙をふくことも忘れ、そのまま命がジワジワと身体と頭によみがえり、 気がつくと過去のシルヴィオに舞い戻っていました。
とっても集中して演じていたんだと思います。
ネッダを常に目で追うシルヴィオ。 若者ゆえの自分中心の恋心。でも純粋でまっすぐで輝く瞳でネッダを見つめます。
最後の最後まで集中して演じきれたと思います。 二重唱の後、袖に引っ込むと自然とガッツポーズをしていました。 (冷静になるといろいろ駄目だった部分が思い出されますが)
実はラストで刺された後に倒れるシーンで、ゲネのときに肘を火傷しました。 本番でも同じところをやっちまいましたが、 不思議と痛くなかったです。
カーテンコールに出て行った時点では、まだ「殺された」自分が残っていて、 笑顔で拍手を受けられませんでした。 (じょじょに役から抜けていきましたが)
これほど集中できた本番は過去になかったんじゃないかしら? それこそデビューのときのパパゲーノ以来だったと思います。 (あのときは緞帳が降りきった瞬間に涙があふれたのでした) あのときの感動がいつのまにか味わえなくなっていた自分に嫌気がさし、 舞台に立つのをもうやめようか…と思っていた頃があったのですが、 今年に入ってからデビューの頃の気持ちを取り戻しつつあります。 今はオペラが大好きです。今の自分が大好きです。
常に全力で! 常に新鮮に! そして常に自分の弱さと向き合いながら、 これからも頑張っていきたいと思います。 どうぞ暖かく見守っていってやっておくんなまし…。
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