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2005/01/06(木)
ほしを守る男の話２
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いらっしゃいませぇ
外はさぞかし寒かったでしょう…どうぞ、空室はあと少々です
お急ぎなすってください
……お客さん上から下まで真っ黒ですねぇ、帽子もすっぽり被っちゃって…葬式でもあったんですか？
いやいや、お客さんの格好を見るとね、風の噂を思い出すんですよ
全身真っ黒の喪服のようないでたちで、簡易宿やカプセルホテルを点々としている変わった客の話を…
え？いや、この話はちょっと…
私ら経営者側内で流れてるソースも不確かな冗談半分のあくまで噂でして…信憑性なんて全くありませんよ
…いえ、ですからねお客さん…
はぁ、まぁ…もしも何かがあった時に、私が言ったとは言わないようにしてくださいよ？
約束ですよ？
丁度去年のクリスマス辺りから…まだそんなに前の話でもないですね
珍しい客がいるらしいと私らホテル管理職界隈で話題が持ち上がりましてね
なにしろ夜が明けるスレスレの時間に飛び込んで来て、真っ黒の帽子を深々と被ったまま
「このホテルで一番西の部屋は空いているか」と聞いてくるらしいんですよ
そして空いてなければそのまま出て行ってまた新しい宿を探すとか
空いていると答えるとそこに泊まって、フロントに1度だけ通信をしてくるそうで
「日が暮れたら教えてくれ」
そして日が暮れたと同時に凄い勢いで出て行くらしいですよ
ね？変わった客でしょう？私もそんな客がいるもんかなと気にはしていましてねぇ…
…そしてここからはね、まだ余り知られていない情報なんですがね…
…へへ、お客さんがそう熱心に聞くもんだからつい口が滑らかになっちまいますよ…
数日前あるホテルの、部屋とフロントを繋ぐ通信機が故障して、ホテルマンが直接部屋まで行ったんだそうで
その客の部屋と姿を見たらしいんですよ！
部屋の中は、窓やら壁やらの隙間に目張りがこれでもかとされていて、薄気味悪いくらいに真っ暗だったとか…
その客の顔は酷く整った色白で、見事な金髪で、ここいらでは珍しい翠の目をしているそうで…
ハハハ、正に噂らしい噂でしょう？若い衆の好きそうなたぐいですよね
そんな面白い客がいたら是非お目にかかりたいものですねぇ…
…で、お客さんそろそろその帽子とコートを脱いだらどうですか？
結構な長い話になったからもう温まったことでしょう
え？なんですって？
…一番西の部屋ですか？ハハ、好きだなぁお客さんも！生憎空いていないんですよ…すみませんねぇ
え？ご利用にならないんですか？…ご冗談でしょう？
…は、えっ、まさか、お客さん…
本当に？まさか、本当ですか？
そんな、噂じゃ…
…たっ大変失礼いたしました！申し訳ありません！
お待ちになって下さいな！お客さん！…お客さん！
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