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2004/06/16(水)
グロテスク
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桐野夏生の「グロテスク」。読み終わりました。 これはご存知のとおり、東電OLの事件を素材にした 作品です。昼はエリートOL.夜は渋谷の繁華街で立ちんぼうする、娼婦という2面性をもつ女性、佐藤和恵。そんな彼女が中国人男性チャンに殺されてしまう・・・(チャンは否定をしているんですどね)。彼女はなぜ、そうまで堕落していったのか・・・。小説には、彼女にかかわりのある様々な人物が登場してきます。まず、ユリコ。彼女は佐藤和恵と同じくQ女子中というエリート学校出身者で、同じように娼婦をやっていた女性。 ハーフである彼女は、幼い頃から、男なしでは生きていけないような気質をもっていた。そんなふしだらを絵に書いた妹をたまらなく毛嫌いしている姉・・「わたし」。 小説はこの「わたし」という主人公が、ユリコと 和恵の事件(ユリコという女性も同じように中国人男性に殺された)をそれぞれ語るという、面白い作りになっています。 そして、この「わたし」という視点は途中からなくなるのです。ユリコ、和恵、チャンの日記、供述書をそれぞれ載せることで、主人公が日記の主になるのです。 さあ〜、誰が本当のことをいっているのか。冒頭にでてきた「わたし」が言っていることは、真実なのか。「ユリコ」「和恵」の本心はいったいなんなのか・・・ 非常に興味深かったです。事件の真相については(チャンが犯人かどうか・・・)は曖昧さをおびているところを感じさせますが、エリート集団の中に入り込んでしまった女性たちの心の闇は うまく表現されていたと思います。 一つの頂点を目指してがむしゃらに過ごしてきたのに、ふと振り返ってみると何も残っていなかったという虚しさ。でも 上りつめ続けなければ、自分の存在価値が失われてしまう。 行き着いたところが渋谷の町。衝撃的でした。でも、誰もが心に醜い部分持ち合わせているかもしれないよね。 決して、競争社会すべてが間違いだとは思わないけど、時には 自分たちを追い詰めてしまう結果にもなってしまうんだと思うと現代の社会のしくみを恐ろしく感じました。附属学校のドロドロした現状。私は経験してはいないけど、ああいった意識は きっとあるはずだと思うよ。 さらに、ちらりとカルト集団の事件のことについても触れているんですよね。(某地下鉄の事件)この原因もエリート集団が生みだした狂気として、紹介されているのが、印象的でした。 読んで損はしない本だと思いますが、気分は滅入ると思います。ラストも決して明るいものではないんですよね。 グロテスクという言葉通り、ものすごく状況になっているのです。救いようのない状態。 あそこまで表現されちゃうと、私たちはどう気持ちを整理したらいいかな・・・て正直戸惑ってしまいますね。 結局、冒頭に出てくる「わたし」という人物も ユリコ、和恵と同じく、心の闇をもった人物なんですよね。 読んだ方は是非、感想お聞きしたいです。 あ・・この中国人チャンさんて、梶原崇似なんですって。 そう小説で表現されていたのよ。どういうことよ〜・笑
次は「真珠の耳飾の少女」....ハ〜こちらは気分良さそうです。
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