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2005/01/06(木) 階段
 あれは小学校に入る前だと思う。今思えば、母に連れられて長野市の病院に見舞いにいっただけのこと。当時はまだSLが走っていて、蒸気の発する汽笛を聞きながら2時間は乗っていたと思う。子供にとっての2時間は、ずいぶん長い時間だっただろうが、それが短く感じたのは、流れ行く景色を見るのが好きだったからである。

 兄弟が3人いる中で、なぜ僕だけが連れて行かれたのかというと、小学校入学前であったためであろう。誰を見舞いに行ったのかはまったく覚えていない。ただずいぶん遠くに来たのだということだけは記憶の中にある。

 母は大人同士の話があるのか、僕だけをぽつんとそこにおいて待っているように言い、しばらく僕はその場所にいたわけだが、その場所は病院の裏側だったのか、コンクリ−トの階段だけが妙に印象に残っているのである。

 大人になった今、思い出すのは見舞いに行った人の顔ではなく、ましてや車窓から見えた景色でもない。どういうわけか、そのコンクリ−トの階段だけが記憶の中にしまいこまれている。以来、コンクリ−トという無機質なものは、いつも僕の原風景の中にあり、灰色のあの色は僕の好きな色のひとつとなっている。

 「銀塩カメラ研究室」のトップぺ−ジは、何回かイメ−ジを変えてきたが、今の色が一番長く続くのは、やはり一番落ち着く好きな色なのだろう。

 僕の心の中の原風景には、コンクリ−トの無機質なあの色が必ずあるわけで、それがどういう時に思い出すのかというと、人が賑わっているときや、何かで盛り上がっているときである。

 もう一人の自分が、あの原風景の灰色の階段を上っていきたくなるのである。その階段の先にはドアがあり、僕はそのドアの向こうを知りたいといつの頃からか思うようになっていた。

 僕のことを暗い性格という人がいるが、暗い明るいの判断をどこにおくかで大きく違ってくる。どこか影があると昔々に付き合っていた彼女に言われたことがあるが、にぎわっているときにふと現れるのである、灰色のコンクリ−トの階段が。

 不安を感じながらも妙に居心地のいい場所であり、そこにいると時間が止まっているようでもあり、別の言い方をすれば、隠れ家みたいなものでもある。

 気になるのは、その階段の先のドアの向こうに何があるのかである。そのドアはたぶん開けてはいけないものであろう。でもいつかは開けなくてはいけないドアのような気がする。


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