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2005/10/08(土)
あけび
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おやじが孫にとあけびを採ってきた。自分にとっては一番秋を感じる食べ物である。山に行き、こいつを見つけるとうれしかった。今のようにおやつがいつもあるような時代ではない。おやつは自前で調達しなくてはいけない。 しかし、幸せだった。時代がのんびり流れていた。勉強はろくにしなかったが、親から勉強をしろと言われたこともない。山に川に、遊び場所は沢山あった。TVのアニメは唯一の楽しみだったが、それほど沢山あるわけではない。時間がたっぷりとあった。あの頃の時代に戻ることは不可能だろう。不便な生活が心を豊かにすることに気が付いたのはごく最近のこと。あれがほしい、これがほしい、あれがあれば便利と言っているうちに、金が忙しくなり、同時に心が貧しくなった。 あけびを一個おいて写真を撮った。なぜか寂しくなった。遠い昔においてきた尊い何かが、このアケビの中に詰まっている気がした。撮影が終わって食べてみた。すごく甘かった。種も丸呑みした。皮の部分が舌にあたるとかすかに苦味が口の中に残る。食べ終わると今度は悲しくなった。いったい我々は何のために生きているのだろう。ふとそんなことを考えてしまった。
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