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2005/10/09(日)
一言の人生
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自分が担当している、体験実習館、友の会広報誌の編集後記の下書きである。これは本当にあった話である。ひとりの人生を語るのに多くの言葉はいらない。たった一言で人生を語れる、そんな話を載せてみた。
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なじょもん企画展示「津何郷から見た戦争」が終了した。津南内外の地区に、よくこれだけのものが保存されていたものだと感心してしまった。 戦前、戦中、戦後と時代の中を駆け抜けた世代、年齢は七十代から八十代くらいだろうか、ちょうど自分の祖父母、父母にあたる世代である。この方達の時代を考えるとき、本当に今の時代はその延長線上にあるのかと不思議な思いがする。 時代は変わったなどと口走ることは簡単だが、物が豊かになっただけで、人間としての基本は何も変わっていない事にどれだけの人達が気づいているだろう。 先日、ある五十代後半の男性より興味深いお話を聞かせていただいた。 お盆に帰省した孫が東京に帰るというので、八十代のおばぁちゃんも一緒に湯沢駅まで見送りに出かけた。新幹線に乗る間近におばぁちゃんは、新聞広告に丁寧に包んだお金をお孫さんにそっと渡したそうである。 おばぁちゃんにとっては初めて見る新幹線、「ごうげなもんだ」を連発していた。東京まで一時間ちょいで着くという事にまたまた「ごうげなもんだ」と連発。「おらたちの頃は東京まで夜行で行ったもんだ」と遠い目をして話していたそうである。 さて、津南への帰りの車の中、十二峠を越したあたりで津南方面の夕焼けがとてもきれいだった。 おばぁちゃんが車を止めてほしいということで、広い道路の端に車を止めた。おばぁちゃんは夕焼けをじっと見て、たった一言つぶやいた。 「夕焼けって・・・こんなに綺麗だったんだ・・・」 この後、自宅までの帰り道、おばぁちゃんはずっと夕焼けを見ていた。そして同乗していた家族はみんな何も話せなかったそうである。 四十代で夫を亡くし、姑と夫の兄弟2人、そして自分の子供3人の大家族、必死に生きてきた一人の女の人生が、このたった一言に集約されていたのだろう。 このおばぁちゃん、今もひ孫の面倒を見ている。
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