ホームページ最新月全表示|携帯へURLを送る(i-modevodafoneEZweb

2006年11月
前の月 次の月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
最新の絵日記ダイジェスト
2018/01/25 読書 2
2018/01/23 読書
2013/12/25 クリスマス
2013/11/26 有孔鍔付土器
2013/07/17 著作権、肖像権

直接移動: 20181 月  201312 11 7 4 月  201110 月  20093 1 月  200812 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  200712 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  200612 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  200512 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  200412 11 10 9 8 月 

2006/11/29(水) 加川 良のこと
 詩を書かなくなってから何年になるだろうか。最後に書いた詩で歌を作ったのは23才くらいだろうか。そんなことをギタ−を持ちながらふと考えたのは、加川良という人を思い出したからである。彼の影響はずいぶん受けている。
 初めて彼の歌を聴いたのは、忘れもしないムラマサさんの家である。当時の彼の家は、ちょうど信濃川をはさんで僕の家と向いにあるのだが、小学校が違うせいか高校生のころまでほとんど付き合いがなかった。夜中の1時ごろ、なぜか彼の部屋にいて、カセットテ−プから流れた曲が「戦争をしましょう」という曲だった。これは結構頭にガツンときた。そして、そのテ−プをダビングさせてもらい、すべての歌をコピ−した。
 加川良の名曲はいろいろあるが、代表的なのは「教訓U」である。どうしてUなのか分からないけど、とにかくこの歌は今でも時々唄う。カ−タ−ファミリ−などの曲を日本語訳でコピ−していて、バンジョ−の響きが新鮮であった。
 今回突然聞きたくなったのは「下宿屋」である。この曲はほとんどが詩の朗読である。今まで何回も聞いているが、不思議なことに手元にはCDもカセットも残っていない。
 この歌を聴くとき、なつかしい松本零児の「男おいどん」も同時に思い出す。古きよき時代というところであろうか。いわゆる四畳半フォ−クの全盛時代、「神田川」はもちろんのこと「赤色エレジ−」などの貧乏臭いことが、ひとつのステ−タス?だった時代があったわけである。
 この「下宿屋」はそんな代表的な歌でもあろう。この詩のモデルは高田渡ということらしい。
 そんなことより、四畳半の世界は僕の高校生の頃にはもちろんすでにそういうものは古く、兄の影響でそういうものにあこがれてはいたという程度である。


   下宿屋  加川 良

   京都の秋の夕暮れは コートなしでは寒いくらいで
   丘の上の下宿屋はいつも ふるえていました
   僕はだれかの 笑い顔が見られることより
   うつむきかげんの彼を 見つけたかったんです

   ひもじい気持ちも あまりに寒いせいか 感じなかったようです
   ただ たたみの上で 寝ころびたかったんです
   やさしすぎる 話のうますぎる 彼らの中にいるより
   うすぎたないカーテンのむこうの 裸電球の下に すわりたかったんです

   彼はいつも誰かと そして何かを待っていた様子で
   ガラス戸がふるえるだけでも 「ハイ」って答えてました
   その歯切れのいい言葉は あの部屋の中にいつまでも残っていたし
   暗やみで何かを待ちつづけていた姿に 彼の唄を見たんです

   湯のみ茶わんにお湯を いっぱいいれてくれて
   「そこの角砂糖でもかじったら」 って言ってくれました
   その時「ありがとう」と答えて うつむいたのは
   胸が痛み出したことと 僕自身の後ろめたさと・・・

   かわききったギターの音が 彼の生活で
   そして 湿気の中にただひとつ ラーメンのこうばしさが唄ってたみたいです
   不精ひげの中から ため息が少し聞こえたんですが
   僕にはそれが 唄のように聞こえたんです

   ※一杯呑み屋を 出てゆくあんたに
    むなしい気持ちが わかるなら
    汚れた手のひら 返してみたって
    仕方ないことさ
    あせって走ることはないよ
    待ちつかれて みることさ
    ため息ついても 聞こえはしないよ
    それが 唄なんだ

   僕が歩こうとする道にはいつも 彼の影が映ってたみたいです
   小さな影でしたが 誰だってその中に入りこめたんです
   それから 彼の親父が 酔いどれ詩人だったことを知り
   今僕が こうしてるから 彼こそ本当の詩人なのだと言いきれるのです

   新しいお湯が シュンシュン鳴った時 ラーメンをつくってくれて
   そして ウッディやジャックを 聞かしてくれたんです
   それから僕が 岩井さんやシバ君と会えたのも
   すべて この部屋だったし すべて 僕には唄だったのです

   何がいいとか悪いとか そんなことじゃないんです
   たぶん僕は 死ぬまで彼になりきれないでしょうから
   ただその歯がゆさの中で 僕は信じるんです
   唄わないことが一番いいんだと 言える彼を

   ※(くりかえし)


 Copyright ©2003 FC2 Inc. All Rights Reserved.