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2006/03/26(日) キュ−ブパソコン
 息子のなかなかにぎやかなキュ−ブパソコンがある。うるさいので最近は息子は使わない。他にパソコンはごろごろあるからである。CPUはセレロンの900Mである。先日、どこがうるさいのかとひさしぶりにばらしてみた。
 どうやら電源部のファンであることが判明。なにしろこのキュ−ブというやつはぎっしり中身が詰まっている。かなりの熱がケ−ス内にこもるわけである。そこでケ−ス内用排気ファンがついている。これもうるさいのだが、なんといっても電源のファンがうるさい。つまりこいつを交換すればかなり静かになるはずとばかりに遠慮なしに電源をばらす。見るとファンはかなり小さく4センチ角である。早速ヤフオクで検索をかけると・・・あった。価格は希望落札価格が800円送料80円である。その時点で400円スタ−ト、入札0である。こんなもの誰も入札しないだろうと500円で入札しておいたら400円でそのまま落札した。 
 それが今日届いたのである。早速付け替えた。ずいぶん静かになった。う〜ん、俺はいったい何をやっているのだろう(笑)。

2006/03/25(土) 日本酒
 珍しくここのところ日本酒をたしなんでいる。もらい物なので結構いい酒である。一本は地酒「苗場山」の一番高いやつ(名前を忘れてしまった)、それが昨晩でなくなってしまい、時計を見るともう10時、さてセブンイレブンにでも買いにいこうかなとよくよく考えてみたら、友達が来たときに開けようと大事にしまってある「久保田」があった。一本5000円以上もする高級日本酒である。ずいぶん悩んだが、開けてしまった(;´∀`)・・・うわぁ・・・ 。
 冷でぐびぐびやっている。開けてしまえばどうという事はないのである。なかなかうまい。つまみはなし。まるちゃんのソ−セ−ジでもかじりながらと冷蔵庫を空けたら、いつのまにかなかった。まぁいいか、とまたパソコンに向かいつつぐびぐび。本日もなんとか終わった。なんだかんだと言っても、今日も無事に生きている。そのことを祝って自分自身に向かって乾杯。

2006/03/24(金) 本当にあった悲しい話
 これは小説ではないが、事実は小説よりも奇なりともいうのでここに記してみる。これは本日聞いた話である。思わず目頭が熱くなった。
 この町のとある集落の話、年齢は64歳、おばあちゃんである。孫の子守も終わり、明日は旅行に出かけるということで近所の家でおばあちゃん達と何を着ていこうかと茶のみ話に花が咲いていた。そして帰宅した。帰宅してから早速二階に上がり着ていくものを調べていたらしい。
 おじいちゃんはお母さんが帰ってきたことを知っていたがまっすぐに2階に上がったので気にも止めずにいた。しばらくすると何かうめく声がするというので、どこだろうとよくよく聞いてみるとどうやら2階のほうらしい、急いで2階に上がってみるとお母さんが倒れてうめいていた。
「かあちゃん!!」
と駆け寄ったときにはすでに事が切れていた。とにかくすぐに救急車を呼び、病院に運ばれていったが、病名はくも膜下出血、手術もできなくそのまま冥土へ旅立った。くも膜でも細い血管であれば手術のしようもあったらしいが、なにしろ太い血管からの出血で間に合わなかったらしい。
 ところでよそへ嫁いでいったこの人の娘さんは看護師である。知らせを聞いて駆けつけたが、もちろん死に目に会えなかった。あまりに急な事で親族もほとんど間に合わなかったらしい。
 この看護師をしている娘さん、亡くなった母親に向かって言ったそうである。

「ごめんね、かあちゃん、私がこんな職業をしているのに気づいてあげられなくって。ごめんね、さんざん苦労をかけてしまってろくな親孝行もしてやれなくって、これから一杯旅行や楽しいことをして欲しかったのに・・・・」

 その時である、すでに心臓も止まってからずいぶん時間が経っているお母さんの死顔から一筋の涙がす−っと伝わったそうである。このことは親族である大勢の人が見ていたそうである。親族のみなさんは、この娘さんの台詞と仏様から流れた涙みて全員がすすり泣いたそうである。

 心臓が閉まってももしかしたらある程度は意識というものは残っているのかも知れない。ただこのことをたとえば小説に書いたとしたら、なんとなく嘘に聞こえてしまうだろう。でもこれは現実にあった事である。

2006/03/23(木)
 道路の雪の壁に傘が一本挿してある。壊れて使えなくなったために捨てたのだろうか。今の時代、傘は消耗品となった。駅や公共施設には主人を無くして何年もそのままになった色あせた傘が何本かはいつもある。物を大事にしなくなった時代の象徴のようでもある。

 僕がまだ小学校3年生の頃である。貧しかった僕の家は(今も貧しいけど)、傘を一本買うことさえ大変だった。3歳年上の姉が女物の赤い傘が欲しくて、農作業を夜遅くまで一生懸命手伝ってやっと買ってもらった事を思い出した。
 あの頃、農家の子供たちは農繁期になると手伝うのが当たり前で、町の商店街の友達が遊びに誘うのを断ってでも家の農作業を手伝ったものである。
 それぞれの田んぼには家族総出での農作業が当たり前の光景になっていて、特に珍しいということではなかったのである。

 傘は当時大事にされていて、傘直しの職人さんというものが存在した。傘を壊したりすると親に怒られながらそこへ持っていき修理してもらうのである。実にいい時代だった。時がのんびりと流れていた。あの頃、風邪などで欠席すると学校給食のパンをわざわざ近所の子供達が届けてくれたものである。

 今日本という国は大事な何かを無くしていると思う。傘の問題は一つの例えだが、物を大切にする心、これは人間を大切にする心に通じているのではないだろうか。
 実に殺伐とした世の中になってしまった。親が子供を捨てる時代、いじめによる登校拒否と子供の自殺。国会の疑惑問題による空転、数え上げればきりがないほどであるが、一番の問題は少子化であろう。これは国がだめになるという点で一番大切な問題である。

 少し極端ではあるが、傘を大切に使う気持ちが芽生えるような時代が日本に訪れなければ、日本という国は救われることはないであろう。

2006/03/22(水) 残雪
 残雪がまだまだある。本当に5月の連休前に消えるのかと心配するのだが、毎年のこと、その頃になるとちゃんと消えてくれる。でもやっばり今年も心配である。
 

2006/03/21(火) MS-DOS
 午後より息子の入学用品の買い物に行く。買い物といってもほとんどは女房がするので僕はヒマである。まぁお抱え運転手というところである。驚いたことに息子も自分の買い物のくせに母親と付き合わずに僕と一緒に古本屋についてきた。男なんてみんな似たようなものである(笑)。

 さて、古本屋で面白い本を発見。Win2000、XP時代のコマンドプロントの解説書である。値段を見るとなんと400円である。安い。こんなオタクの本は売れないと踏んだのか内容のわりにとんでもなく安い。オタクとしては掘り出し物の本である。

 MS-DOSは実は苦手である。僕の場合OSはWindows Meのあたりから素直に入っているので、このコマンドが分からない。分からなくなるといつものように僕の師匠のyotaさんという人に聞くとたいていの問題は解決するので特に必要はないのだが、いつまでもこのままでは困るというわけである。

 さて、この本、前編にMS−DOSの歴史が載っている。これが実に面白い。なんと今のシステムが確立したのはわずか26年前のことでしかない。その後OSは進化し続けて現在に至るわけであるが、今のパソコンの普及率を見ると驚きを隠しえない。

2006/03/20(月) 携帯電話
 息子が希望する高校に合格したのでお祝いに何がいいかとじいさんから相談を受けた。あろうことか腕時計を買ってあげようかと言ったので、それはそれでいいけど、今の高校生、時計はすべて携帯電話であると説明をして、代わりにお金でもらうことになった。一番妥当な選択であろう。
 僕からは携帯電話をお祝いに買ってあげることになった。まぁ時代の流れである。仕方ないであろう。

 さて、携帯電話の契約をするとき、なんと僕自身が携帯電話を持っていないのである。必要ないから持たない・・ただそれだけのことであるが、それはとにかく、そういうことになると家族割引がぜんぜん効かないのである。新規ということでは本体購入の割引は効くのだが、、だから月々の支払いは当然高い。

 どうせ通話などほとんどしないのだから、そちらは最小限に削って、今はやりのパケホ−ダイの契約をする。
 ここにいたるまではいろいろとあった。僕の家族の住む場所はなぜかフォ−マの電波状態が悪いのである。つまりドコモのフォ−マだけが電波状態が悪い。AUはばっちりであるが。
 実はAUとフォ−マを2台借りてきて息子の部屋で試してみたのである。AUはどこでもアンテナ3本以上なのに、フォ−マは居間でアンテナ2本、一番大事な息子の部屋では1本しか立たない。当然AUを息子に勧めたのだが、どうしてもフォ−マがいいということで結局そうなった。
 地図で確認すると、なるほどこの地域だけ半径2Kmくらいぽっかりとエアポケットになっている。ふ〜む・・面倒なものである。

2006/03/19(日) 日曜日
 さて、つまんない小説もどきも終わりになった。ずいぶん遅れたけど、構想はできていても気分が乗らないとかけないものである。筆がすべるときはするするといくけど、気分が乗らないとどうもうまくいかない。ここが連続小説の難しいところである。
 本日日曜日、休みだが仕事を少ししてなんとなく午前中を仕事場で過ごす。ここが一番落ち着く場所となった。自宅の周りの残雪を片付ければいいのだが、どうも今年はそういう気分になれない。
 パソコン作りも最終段階となりデュアルCPUもペン3の550MHzをふたつ積むことで妥協した。BIOSのアップデ−トで850Mまで認識できるようにしたのだが、さてあれほどあこがれたデュアルパソコン、出来上がってみると思ったような感動はない。パソコンの中身がどうなろうと、やることに変わりはないのだから当たり前といえば当たり前であるが(笑)。

2006/03/18(土) アスファルト 18
 男は買い物を済ませるとまっすぐ自宅に戻った。あまりに早い夫の帰宅に妻は驚きを見せた。雨でもふるんじゃないかしらと妻は冗談交じりに言いながらもうれしさを隠せなかった。
 その夜は久しぶりに家族全員で夕食を食べた。男はこんな当たり前のことさえも、今まで家族にしてあげられなかったことを悔やんだ。そして考えた、あの恐ろしい夢を。そうだ、これからは家族にはできるだけのことをしてあげよう。そんなことを考えていた。
 夕食が終ると男はまず確認したいことがあった。寝室に入るとタンスの小引き出しを開けた。運転免許証の入ったケ−スを明けてみた。よかった・・・運転免許証にはちゃんと男の顔写真があたりまえのようにあった。よかった。やはりあれは夢だったんだ。男は免許証を元の位置に戻すと、化粧台に向かっていた妻に言った。

「今度の日曜日、久しぶりにみんなでドライブにでも行かないか」

「えっ・・あなた、どうしたの急に・・何かあったの」

「いや別にね、たまにぱ運転しないとできなくなっちゃうんじゃないかと思って」

「いいわねぇ、、鎌倉のほうに行ってみたいわ、いつでも行けそうでなかなかいけないもの」

「うん、わかったそうしよう」

「ところであなた、昨夜はどこに泊まったの、たぶん仕事で遅くなっているんだろうって子供たちと話したんだけど、朝になったらちゃんと帰ってらしたから安心したけど。でもだいぶ飲みすぎたのかずいぶん朝方うなされていたけど」

「えっ・・・」

「昨晩隣町で強盗殺人事件があったからちょっと心配したのよ、そんなことがなければ別に心配もしなかったんだけど」

「強盗殺人・・・」

 その時だった、玄関のチャイムが鳴ったのは。

「あら・・誰かしらこんな時間に」

 妻はパジャマ姿のままで玄関に向かった。やがて戻ってきた妻は男に言った・

「あなた・・・警察の方が・・あなたに聞きたいことがあるんで゛すって・・」


おわり

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2006/03/17(金) アスファルト 17
 男はいつものように電車に乗り、いつものように会社に入り、いつものように仕事をした。ただ、男はいつものような仕事に対するきれがなかった。どこか上の空であり、同僚がどうかしたのかと聞いてきたほどである。
 あの長い夢はなんだったんだ。夢であれば目覚めた直後ははっきりとおぼえているが、だんだん記憶があいまいになり自然と忘却していくのに、あの夢はまるで昨日の記憶のようにはっきりと覚えている。
 男は仕事が終ると珍しく駅の近くのス−パ−によると牛肉と野菜を買った。妻に電話して今晩はすき焼きをしようと告げた。こんなことは今までになかったことである。あの夢を見てから男は家族のありがたさ、大切さというものに気が付いたのかもしれない。今まで仕事仕事で家族のことなど省みることなどなかったのである。

つづく

2006/03/16(木) アスファルト 16
 遠くで自分を呼んでいる声が聞こえる。誰だろう・・男は混沌とした意識の中でその声を聞いた。そしてその声がだんだん大きくなってくる。

「あなた・・あなた起きて」

 男はそれが妻の声だと気が付いた。

「会社に行く時間ですよ、遅れますよ」

 男はここはどこだろうと瞬間考えたが、ここが自分の家だと気が付いたときには不思議な気持ちだった。俺は一体どうしたんだう?男は長い夢を見ていたということに気が付くのにずいぶん時間がかかった。パジャマは汗でぐっしょりと濡れていた。

「おはよう」

「おはよう、あなた昨夜ずいぶんうなされていたみたいだけど、何か悪い夢でも見たの」

「あぁ、どうやらそうみたいだ」

「早く顔を洗ってきて、急がないと遅れますよ」

「子供たちは?」

「とっくに出かけましたよ、今日は朝錬があるとかで急いで出かけたわよ」

「そうか・・・」

 男は一連の出来事が夢であったことをやっと自覚できた。いつものように電車に乗り、いつものように会社に出かけた。

つづく

2006/03/15(水) アスファルト 15
 ダンボ−ル箱の中にいて聞こえてくるのは楽しそうな声ばかりだった。家族連れの声、恋人同士の戯れる声、そんな当たり前のことのすべてが男には無縁のものだった。
 男は突然吐き気を覚えた。たまりかねてダンボ−ルの箱を飛び出すと、アスファルトの上に吐瀉物を吐き出した。どうやらさっきの弁当にあたったらしい。胃の中にあるすべてのものを吐き出すと男はそのままそこに横になった。
 その近くを幸せそうな家族が何組も通り過ぎて言った。

「やだ−、汚い」
「なんでこんな人たちを行政はほうっておくんだ」
「この人死んでいるの」

 いろいろな声が男のそばで聞こえた。男は気を失いかけていた。意識が薄れる瞬間、男は公園の遠くにあるベンチに二人の男女が座っているのが見えた。
 二人のうちの女のほうがボストンバックから札束を出しているのが見えた。男はその光景をどこかで見たような気がした。男の思考はそれまでだった。
 男はやがて意識を失った。アスファルトの上には男の吐瀉物と男の体が横たわっていた。

つづく

2006/03/14(火) アスファルト 14
 男は一瞬固まったまま動けなかった。

<やはり犯罪に使われた・・>

 固まったまま動かない男に、後ろから刑事が声をかけた。

「おい、どうしたんだ」

 男の顔は真っ青だった。

「大丈夫だ、心配いらない、あんたにそっくりだが、あんたじゃない、あんたには立派なアリバイがあるからな、ハハハ・・・」

 刑事は屈託のない笑いで男の背中を叩いた。

「刑事さん、俺はもう行くところがない、刑務所に入れてくれないか」

「馬鹿を言うな、入りたくてもそう簡単に入れるものじゃない、あんたらホ−ムレス達はみんなそう言う、自由とかなんとか言っても、食えなくなればみんなおんなじだ」

「この顔写真は俺だ、俺なんだ」

「わかったわかった、仮にこれがあんただとしても、あんたは刑務所には簡単には入れないよ、さぁ帰った帰った」

 男は追い出される形で警察署を後にした。この後男に待っているものは何なんだろう、肖像権を売った男はどうやって生きていけるのだろう。

 男はまたあの公園に戻ってきた。ホ−ムレスの仲間達は男を迎えてくれた。結局男はここに帰ってくるしかなかった。仲間がコンビニの売れ残りの弁当を差し入れてくれた。
 コンビにでは期限切れ弁当は必ず捨てる決まりになっていたが、親切な店員さんはわざとわかりやすいところに捨てておいてくれる。しかも毎日同じ時間にである。
 ホ−ムレス達にはそれぞれ縄張りがあり、暗黙の了解のうちに食事にありつける場所と時間が決まっていた。これは自然とできたル−ルであり、お互いが生きていくための知恵でもあった。

 男はダンボ−ルの狭い家で差し入れの弁当を食べた。食べているうちに涙が出てきた。そして別れた女房と子供のことを考えた。まさかこんな人生になるとは自分でも思ってもみなかった。しかしこれは逃れることのできない現実である。

つづく

2006/03/13(月) アスファルト 13
 すぐに男は本署に連れて行かれた。あまりにも強盗殺人犯に似ていたのである。ただ、男には完全なアリバイがあった。強盗殺人のあった夜、男は路上でいつものように大声を出しては通りすがりの人に呶鳴っていたのである。

「顔を、顔を返してくれ〜、俺の、俺の顔を〜」

 これは同じ公園のホ−ムレスの人たちも証言したし、通行人の人たちも証言した。だいいちこんな状態で強盗殺人などできるはずがなかった。犯人は実に計画的かつ巧妙で指紋ひとつ残されていなかったのである。警察のほうでも手がかりが何一つ残されていないので、まったくのお手上げ状態だった。
 唯一生き残った小学生の子供がその顔を見ていた。その小学生が証言したモンタジュ−写真だけが頼りだったのである。

 男は釈放された。釈放されたといっても他に行くところもなかった。3日間留置所にいたおかげで酒も体から消えて、男はある程度は冷静に物事を考えられるようになっていた。

 男は警察署を出るとき、窓ガラスに張り出されたばかりの指名手配の顔写真を見てびっくりした。

「俺だ・・俺が写っている!!」

つづく

2006/03/12(日) アスファルト 12
 眠れない夜に男は酒を覚えた。泥酔することで孤独から逃れようとした。体質もあったのだろう、男は依存症となった。それでも仕事には時々は出かけた。だがまともに仕事ができるはずもなく、男は日雇い労働でさえも雇用してもらうことができなくなった。
 男は時々あの公園にでかけた。出かけては自分の肖像権を取り戻そうとした。買い戻す金がないことさえも忘れていた。紺のブレザ−を着た女という記憶だけで、女の名前が由里ということさえ思い出せなくなっていた。
 やがて男はアパ−トから追い出された。家賃の滞納ということも原因ではあるが、時々大声でどなることがあり、アパ−トの他の住人から苦情がきたせいもある。
 男はホ−ムレスとなった。アルコ−ルが体からきれると恐怖から逃れるために大声を出した。男の周りににはゴキブリのような虫が無数に這い出していた。その虫は男にしか見えなかった。男は逃げ場所もなくはいずり回った。
 
 ある日男はコンビニに入った。店員はいかにもホ−ムレスといった風情の男に警戒した。そのコンビニは酒も扱っていた。男は酒の並ぶ棚の前にいくと、いきなりポケットウィスキ−の口栓を切るとゴクゴクと飲みだした。
 店員はすぐに警察に通報した。男は警察に連行された。

「あんた、ホ−ムレスかね、名前は?」

「ごとう、、、」

「しょうがないよなぁ、こっちは忙しいんだよ、酔っ払いに付き合っちゃいられないんだ、まぁ一晩泊まってもらうか」

 警察官はどうしようもないといった顔でつぶやいた。事実忙しかった。この管内で殺人強盗があったのである。ホ−ムレスの酔っ払いに付き合っている余裕はなかった。

 男が留置所に入ったとき、交番のファクスに強盗殺人犯の顔写真が送信されてきた。その用紙を見たとき警察官はちょっと不思議な顔をした。

「おい、ちょっとこれを見ろよ」
 
 もう一人の警察官が覗き込んだ。

「今のホ−ムレスに似ていないか」

「似ている!!」

つづく

2006/03/11(土) アスファルト 11
 あれから一年が過ぎた。男は唯一の財産であるマンションを売り払い、それを生活費として暮らしていた。バブル全盛時代に買ったマンションなので、売値は買ったときの5分の1にもならなかったが、それでも2年くらいは贅沢をしなければ生活できた。

 写真を必要とする証明書などの更新はすべてできなくなったため、更新時期がくるたびに失効となっていった。マンションから家賃月に5万円の一間のアパ−トに移り、生活は質素となった。それでも生活費だけはなんとか稼ぎださなくてはと、短期の工事現場にいっては働いた。

 男は恐れていた。自分の肖像権、つまり自分の顔写真がどういう使われ方をされているかを。当然犯罪の時に利用されることを特に恐れた。しかしこの一年間、何事も起こらずに済んでいた。逆にそのことが一層不安感を増していたともいえる。

 男は食後に時々吐き気がするようになっていた。悪い病気でなければいいがと心配はしてはみるが、病院に行って検査してもらう気もおきなかった。極度の精神不安と不眠症が男をますます衰弱させた。70Kgもあった男の体重は今は50Kgほどしかなかった。それでも男は仕事があるたびに労働に出かけた。

 男はよく鏡を見た。もしかしたら写真だけではなく自分の顔も、のっぺらぼうになっているのではないかと思っていたからである。しかし、そのたびに鏡は男の顔をそのまま映しだした。男はそのことで安心すると少しは眠ることができた。

つづく

2006/03/10(金) アスファルト 10
 男はすぐに交番に入った。事情を説明し、調書を書かされた。
 
「ところで、あんた、そのカバンには何が入っていたんですか、会社の大事な書類とか?」

「800万円の現金です」

「ちょっ、ちょっとまって!・・あんたなんでそんな大金を持ち歩いていたんだね、この大都会でそんなものを持っていたらどうなるかは分かっているだろうに」

「はぁ・・・」

「まぁねぇ・・それが本当ならまず出てこないね、会社の書類とかならそのへんにでも捨てられているかもしれないが」

「ちょっと事情がありまして・・現金を持ち歩いていました」

「一応調書は預かっておくけど、、連絡先は書いてあるね、じゃもし似たようなものがみつかったら連絡するから、ただしカバンは戻ったとしてもお金はまず戻ってこないね、名前が書いてあったとしても」

「お願いします」

 男は交番を出るとマンションに帰ろうとした。その時だった、交差点を渡っている人の群れの中に由里が歩いていた。男は急いだ。由里に追いつくと由里の肩をたたいた。

「ちょっと待ってくれ、後藤だよ!!」

 びっくりした由里は不思議そうな顔をして振り返ると言った。

「あなたは誰ですか?」

「あの時肖像権を800万円で売った後藤だよ、覚えていないのか?」

「失礼ですが、人間違いじゃありませんか、私は後藤さんなんて人は知りませんし、だいいち肖像権?、800万円って一体何ですか?いきなり失礼でしょ」

 由里は怒ったように言い、その場を離れようとした。

「待ってくれ!!俺はあんたに肖像権を売ったおかげで仕事が見つけられない、あのときの800万円は返すから・・・」

 そういいかけたとき男は手元にすでに800万円がないことに気がついた。なんてことだ、やっと由里を見つけたというのに、今の俺にはそれを買い戻す金がない・・・男はぐったりとうなだれた。 由里はもう人ごみの中に消えていた。

つづく

2006/03/09(木) アスファルト 9
 公園に着くと、あの時座っていたベンチに腰をかけた。紺のブレザ−を着た由里は現れるだろうか。ああいう仕事をしているなら、あちこちに出かけてはぶらぶらしている人間に声をかけているに違いないと思った。

 ところが、その日は見つからなかったばかりか、翌日も、その翌日も由里は現れなかった。やがて一週間が過ぎた。その日も800万円の入ったアタッシュケ−スを下げて公園へでかけた。
 いつものように昼食にパンでも買おうかと、公園の真向かいから見えるコンビニに入った。男はパンを買うとコンビニを出たそのときだった、前方からものすごい勢いで自転車が走ったきた。男は自転車をよけようとしてしりもちをついた。
 その時、男の後方からもう一台自転車が近づくと男が転んだときに思わず手を離したアタッシュケ−スを奪うとたちまちのうちに走り去っていった。
 瞬間男は何がおきたのか分からなかった。ようやく理解できたときに男は事の重大さに気が付いた。

つづく

2006/03/08(水) アスファルト 8
男はアタッシュケ−スをあけてみた。間違いなく100万円単位の札束が8束あった。こんな金はたちまち無くなるだろう、とにかく仕事を確保しなくてはと、男は夜警の仕事に出かけた。
 会社につくとすぐに事務の人に履歴書を見せた。茶封筒の中を明けた事務員はすぐに写真が貼付していないことに気が付いた。

「一応ね〜、決まりですから写真を貼っていただかないとねぇ〜、いえ、内容はまったく問題ないんですが、今すぐに写真を用意できませんかねぇ」

「はぁ・・・・」

「よかったらここのデジカメとパソコンを使ってプリントアウトしましょうか、何もちゃんとした写真でなくていいんですから」

「いや・・・結構です。他に仕事をみつけます、いろいろとありがとうございました」

「あ・・ちょっとあなた・・!!!」

 男は警備員の会社を後にした。せっかくみつかった仕事が無くなった。あの場所で写真を撮影しても、自分の顔が写らないことは分かっていた。
 マンションに戻ると男は今後のことを考えた。このままでは再就職はできない。できる仕事といえば日雇い労働しかないだろう。とにかく、このお金は由里に返して、肖像権を買い戻そう。男はそう考えると、お金を受け取った公園に向かった。

つづく

2006/03/07(火) アスファルト 7
 男はしばらく考えていた。肖像権を売るということはどういうことなのかを。この世の中で自分の肖像権がなくなる、写真にも自分の顔が写らない。
 もしかしたら・・・男は突然タンスの小引き出しを開けると、健康保険証などの大事なものが入った袋を開けてみた。たぶん・・・という思いはあった。
 男が取り出したものは運転免許証だった。ほとんどペ−パ−ドライバ−だった男は最近では更新の時しか取り出すことはなかった。ケ−スを開けてみた。
 予想どおりだった。顔の部分だけ白くぼやけている。顔だけが免許証の中から無くなっている。

「ははは・・・これで俺は車も運転できないわけか」

 男はつぶやくと、改めて社会的肖像権といった由里の言葉を思い出した。次に考えたことは、社会的肖像権をなくした場合の生活の支障と、買われた肖像権の使い道である。
 あの時由里は言った「高いか安いかはその人の気持ち次第で決まります」と。
 800万円という金はもしかしたらとんでもなく安い金額なのかもしれない。もし、その肖像権が犯罪に使われたら・・。

つづく

2006/03/06(月) アスファルト 6
 翌日男は履歴書を書いた。昨日すぐに職安で紹介された会社に行き相談した。明日履歴書を持ってすぐに来てくれということである。ちょうど一人欠員が出たので明日からすぐにでも勤務についてもらえるとありがたい、履歴書などはどうでもいいが形だけはちゃんとしておかなくてはいけないからと事務の人は言ってくれた
 男は履歴書を書き上げると、右上に写真貼付とあるのに気が付いた。そうだ証明写真を撮らなくてはと近くの小さなカメラ屋さんに出かけた。

「はい、それではカメラのほうを向いてください、いきますよ」

 男は言われるがままにカメラを正視して写真を撮られた。写真が出来上がるまで5分と言われ、待っている間にショ−ウィンドウに並べられたカメラを見ることなしに眺めていた。すると並べられたカメラはほとんどがデジカメである。こういう時代なんだなぁと眺めていたが、5分はとうに過ぎているはずなのになかなか写真を持ってこない。

「まだですか〜」

と男は中に向かって声をだしたが、返事もない。しばらくしてやっと現れたカメラ屋の店主は申し訳なさそうに

「すみません、撮影に失敗したみたいです、まことに申し訳ありませんが、もう一度撮影させていただけませんか」

「おいおい、それでもプロかよ、仕方ないなぁ」

 男はしぶしぶまたカメラの前に座った。店主は今度はカメラをデジカメに変えて撮影した。撮影してすぐにカメラ後部の液晶の画面で確認したらしい、えっ・・・とびっくりしたような声を上げた。

「そんな馬鹿な・・・」

「どうかしたのかい?親父」

「顔だけ写っていないんです、そんな・・・」

 男は店主のデジカメを覗いてみた。驚いたことにバストアップの体だけは写っているのに、顔が真っ白になり輪郭がぼやけているのだ。店主はもう一度でデジカメで男を手持ちで簡単に撮影した。結果は同じだった。

 男はカメラ店を出ると急いでマンションに帰った。まさか・・という思いはあった。たぶん他の写真館に行っても結果は同じだろう。
 マンションに帰るとすぐに自分の持っているデジカメで自分の顔を映してみた。結果はまったく同じであった。
 <肖像権を売った>このことが頭に残っていた。あの時はなんとなく800万円に眼がくらんで売ってしまったが、もしかしたら自分はとんでもないことをしてしまったのかもしれない。

つづく

2006/03/05(日) アスファルト 5
 男は自分のマンションに帰ってきた。前の女房との離婚の際に、慰謝料やら養育費やらと請求されて、残ったのは唯一このマンションだけだったのだ。
 これが俺の唯一の財産か・・とつぶやくとマンションの鍵をあけた。何もない4DKのマンションは男一人には広すぎた。いずれはここも売って小さな一間くらいのアパ−トに引っ越そうとインスタントコ−ヒ−をブラックで飲みながら漠然と考えていた。
 翌日男は、いつまでも無職でぶらぶらしているわけにはいかないと、職業安定所を訪れた。失業保険をもらっていくには、形だけでも仕事をさがしているふりだけはしなくてはいけない。しかし今日は本気で仕事を探そうと考えていた。
 職業安定所の前のまで来るとしみじみとその看板を眺めた。職業安定所では体裁が悪いのか、ハロ−ワ−クと書かれたその看板は、いかにも暗いイメ−ジをなくすため明るいイメ−ジで仕上げたという意図がありありと見えた。
 男は中に入るとすぐに求人票の場所へ行った。事務系と書かれたホルダ−にはほとんど年齢制限があることはわかっている。背に腹は変えられないなぁと別のところへ行き、なんとなく手にしたのが鉄筋工の仕事だった。長い間肉体労働をしていない男は、こういう仕事ができないとわかっていたが、賃金の高いのに思わず眼を奪われた。一日日当が2万5千円で昼食の弁当が付くというのである。もちろんこういう割のいい仕事は、保障はもちろんなく、工事が終ればそれで解雇である。
 次に手にしたのが夜警の仕事だった。夜の8時から翌朝の8時までの勤務。社会保障などもすべてついている。給料は平均30万円、年齢、勤務日数、経験により優遇、とある。
 これだ、男はその求人票を持って受付へ向かった。

つづく

2006/03/04(土) アスファルト
まちがって消してしましいました。すいません。

2006/03/03(金) アスファルト 3
 突然現れた、以前の自分の部下に男は戸惑った。正直なところ今のみじめな自分を見られたくはなかったからである。失業者という社会の落伍者みたいな自分は、会社の肩書きがなければ何の取り柄もないと感じていた。そんな男を由里は真正面からみつめて言った。

「あの・・・今お時間はありますか?」

「あぁ、失業者だからね、時間は有り余っているよ」

 男は自嘲ともいえる言葉をいいながら卑屈な笑いをうかべた。

「よかった、実はお願いがあるんです、私も課長が辞めた後にすぐにあの会社を退職したんですけど、今こういう会社に勤めています」

 由里は男に名詞を差し出した。名刺には、Copyright buy & sell(株)ジャパニ−ズ ベイ となっていた。不思議そうに眺めている男に由里は言った。

「課長は著作権というものを知っていますか」

「それくらいはわかるよ」

「それを売買する会社なんです」

 男は特に興味もない顔でうなずいた。そういうものがあるということは知ってはいるが、まさか売買する世界があるとは知らなかった。

「つまり才能はあるけどお金のない人達って沢山いますよね、そういった人達の著作を買って、名前の売れている作家、作曲家、画家に売り渡すんです、これは表には出せないビジネスなんですが、今の世の中の大半は、これが成立しているんです、どんなにすばらしい作品でも、それを売り出すためのツテとコネがなければその作品は死蔵されます、それを発掘して売り渡す仕事です」

 男はちょっとびっくりした。すると今売れている画家、建築家、作詞家、作曲家の作品は、必ずしも本人の作品とはかぎらないわけである。

「そうなんです、売れている作家の人達はお金をたくさん持っています。でも人間の才能には限界があります。そこでお金を欲しがっている才能のある市井の人達や、流行に敏感な学生さんたちから著作権を買って、それを本人の名前で売り出すのです、私たちの会社はその仲介をしてリベ−トをいただきます」

「それはわかったけど、この俺にお願いというのは何なんだ」

「ここまではご理解いただけたと思いますが、実は著作権の他にもうひとつ売買しているものがあります」

「今度は何を商売にするんだね」

「ズバリ言いますと肖像権です」

「何、肖像権?」

つづく

2006/03/02(木) アスファルト 2
 あれから一週間が経った。男はあいかわらず職をさがしていた。もともとディスクワ−クだった彼は、できれば事務系の仕事を探していたが、この不景気な時代、自分にぴったりとあてはまる仕事がそうそうあるわけがない。
 この日も職探しに疲れて公園でサンドイッチをかじっていた。季節は秋も深まり、公園の銀杏の木の葉があたり一面に敷き詰められていた。
 公園には七五三の帰りなのだろう、きれいに化粧された稚児さんのような男の子が父親に写真を撮られていた。そんな光景を見ながら、男は幸せだった昔を思い出した。
 妻と別れたのは5年前である。子供も二人いた。当時は仕事、仕事で家庭を顧みる余裕のなかった夫に妻は突然別れを言い出したのだ。妻の実家は千葉で小さな海産物の問屋をやっていたので、実家に帰るだけで二人の子供を育てる余裕は充分にあったのだろう。
 別れたとき二人の子供は中学生だったから、今はもう大学生か・・・などと考えていると、後ろから声をかけられた。振り返ると、そこに女が立っていた。

「お久しぶりです」

 ぺこりと頭を下げると、男の座っているベンチの隣に腰掛けた。男が以前勤めていた職場の部下である。名前は斉藤由里といい、パソコンを使わせたら彼女の右に出る人はいなかった。


つづく

2006/03/01(水) アスファルト 1
 男はコツコツと音を立てながらガ−ド下のフリ−マ−ケットのそばを通り抜けようとしていた。その時突然前方から何かがピカッと光った。男は瞬間あたりを見回した。男から3メ−トルくらい前にいかにもジャ−ナリストといった風貌の男が笑っていた。

「どうもすみません、アマチュアで写真をやっているものですが、あまりに絵になっていたのでつい写真を撮らせていただきました。不愉快な思いをさせてすみません」

「失礼じゃないか、断りもせずにいきなり写真を撮るのは」

「申し訳ありません、謝ります。ただ声をかけてからでは自然な姿が撮れないものですから」

「不愉快だ、その写真はボツにしてくれよ」

 男はその日機嫌が悪かった。一ヶ月前に会社をリストラされて、それからずっと仕事探しである。今日も自分にあった仕事がなくてイライラしていたのである。
 そのカメラマンは写真をボツにすることを約束し、何度も頭を下げて男の前を去った。

つづく


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