|
2006/03/01(水)
アスファルト 1
|
|
|
男はコツコツと音を立てながらガ−ド下のフリ−マ−ケットのそばを通り抜けようとしていた。その時突然前方から何かがピカッと光った。男は瞬間あたりを見回した。男から3メ−トルくらい前にいかにもジャ−ナリストといった風貌の男が笑っていた。
「どうもすみません、アマチュアで写真をやっているものですが、あまりに絵になっていたのでつい写真を撮らせていただきました。不愉快な思いをさせてすみません」
「失礼じゃないか、断りもせずにいきなり写真を撮るのは」
「申し訳ありません、謝ります。ただ声をかけてからでは自然な姿が撮れないものですから」
「不愉快だ、その写真はボツにしてくれよ」
男はその日機嫌が悪かった。一ヶ月前に会社をリストラされて、それからずっと仕事探しである。今日も自分にあった仕事がなくてイライラしていたのである。 そのカメラマンは写真をボツにすることを約束し、何度も頭を下げて男の前を去った。
つづく
|
|
|