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2006/03/12(日) アスファルト 12
 眠れない夜に男は酒を覚えた。泥酔することで孤独から逃れようとした。体質もあったのだろう、男は依存症となった。それでも仕事には時々は出かけた。だがまともに仕事ができるはずもなく、男は日雇い労働でさえも雇用してもらうことができなくなった。
 男は時々あの公園にでかけた。出かけては自分の肖像権を取り戻そうとした。買い戻す金がないことさえも忘れていた。紺のブレザ−を着た女という記憶だけで、女の名前が由里ということさえ思い出せなくなっていた。
 やがて男はアパ−トから追い出された。家賃の滞納ということも原因ではあるが、時々大声でどなることがあり、アパ−トの他の住人から苦情がきたせいもある。
 男はホ−ムレスとなった。アルコ−ルが体からきれると恐怖から逃れるために大声を出した。男の周りににはゴキブリのような虫が無数に這い出していた。その虫は男にしか見えなかった。男は逃げ場所もなくはいずり回った。
 
 ある日男はコンビニに入った。店員はいかにもホ−ムレスといった風情の男に警戒した。そのコンビニは酒も扱っていた。男は酒の並ぶ棚の前にいくと、いきなりポケットウィスキ−の口栓を切るとゴクゴクと飲みだした。
 店員はすぐに警察に通報した。男は警察に連行された。

「あんた、ホ−ムレスかね、名前は?」

「ごとう、、、」

「しょうがないよなぁ、こっちは忙しいんだよ、酔っ払いに付き合っちゃいられないんだ、まぁ一晩泊まってもらうか」

 警察官はどうしようもないといった顔でつぶやいた。事実忙しかった。この管内で殺人強盗があったのである。ホ−ムレスの酔っ払いに付き合っている余裕はなかった。

 男が留置所に入ったとき、交番のファクスに強盗殺人犯の顔写真が送信されてきた。その用紙を見たとき警察官はちょっと不思議な顔をした。

「おい、ちょっとこれを見ろよ」
 
 もう一人の警察官が覗き込んだ。

「今のホ−ムレスに似ていないか」

「似ている!!」

つづく


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