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2006/03/14(火) アスファルト 14
 男は一瞬固まったまま動けなかった。

<やはり犯罪に使われた・・>

 固まったまま動かない男に、後ろから刑事が声をかけた。

「おい、どうしたんだ」

 男の顔は真っ青だった。

「大丈夫だ、心配いらない、あんたにそっくりだが、あんたじゃない、あんたには立派なアリバイがあるからな、ハハハ・・・」

 刑事は屈託のない笑いで男の背中を叩いた。

「刑事さん、俺はもう行くところがない、刑務所に入れてくれないか」

「馬鹿を言うな、入りたくてもそう簡単に入れるものじゃない、あんたらホ−ムレス達はみんなそう言う、自由とかなんとか言っても、食えなくなればみんなおんなじだ」

「この顔写真は俺だ、俺なんだ」

「わかったわかった、仮にこれがあんただとしても、あんたは刑務所には簡単には入れないよ、さぁ帰った帰った」

 男は追い出される形で警察署を後にした。この後男に待っているものは何なんだろう、肖像権を売った男はどうやって生きていけるのだろう。

 男はまたあの公園に戻ってきた。ホ−ムレスの仲間達は男を迎えてくれた。結局男はここに帰ってくるしかなかった。仲間がコンビニの売れ残りの弁当を差し入れてくれた。
 コンビにでは期限切れ弁当は必ず捨てる決まりになっていたが、親切な店員さんはわざとわかりやすいところに捨てておいてくれる。しかも毎日同じ時間にである。
 ホ−ムレス達にはそれぞれ縄張りがあり、暗黙の了解のうちに食事にありつける場所と時間が決まっていた。これは自然とできたル−ルであり、お互いが生きていくための知恵でもあった。

 男はダンボ−ルの狭い家で差し入れの弁当を食べた。食べているうちに涙が出てきた。そして別れた女房と子供のことを考えた。まさかこんな人生になるとは自分でも思ってもみなかった。しかしこれは逃れることのできない現実である。

つづく


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