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2006/03/15(水) アスファルト 15
 ダンボ−ル箱の中にいて聞こえてくるのは楽しそうな声ばかりだった。家族連れの声、恋人同士の戯れる声、そんな当たり前のことのすべてが男には無縁のものだった。
 男は突然吐き気を覚えた。たまりかねてダンボ−ルの箱を飛び出すと、アスファルトの上に吐瀉物を吐き出した。どうやらさっきの弁当にあたったらしい。胃の中にあるすべてのものを吐き出すと男はそのままそこに横になった。
 その近くを幸せそうな家族が何組も通り過ぎて言った。

「やだ−、汚い」
「なんでこんな人たちを行政はほうっておくんだ」
「この人死んでいるの」

 いろいろな声が男のそばで聞こえた。男は気を失いかけていた。意識が薄れる瞬間、男は公園の遠くにあるベンチに二人の男女が座っているのが見えた。
 二人のうちの女のほうがボストンバックから札束を出しているのが見えた。男はその光景をどこかで見たような気がした。男の思考はそれまでだった。
 男はやがて意識を失った。アスファルトの上には男の吐瀉物と男の体が横たわっていた。

つづく


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