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2006/03/03(金) アスファルト 3
 突然現れた、以前の自分の部下に男は戸惑った。正直なところ今のみじめな自分を見られたくはなかったからである。失業者という社会の落伍者みたいな自分は、会社の肩書きがなければ何の取り柄もないと感じていた。そんな男を由里は真正面からみつめて言った。

「あの・・・今お時間はありますか?」

「あぁ、失業者だからね、時間は有り余っているよ」

 男は自嘲ともいえる言葉をいいながら卑屈な笑いをうかべた。

「よかった、実はお願いがあるんです、私も課長が辞めた後にすぐにあの会社を退職したんですけど、今こういう会社に勤めています」

 由里は男に名詞を差し出した。名刺には、Copyright buy & sell(株)ジャパニ−ズ ベイ となっていた。不思議そうに眺めている男に由里は言った。

「課長は著作権というものを知っていますか」

「それくらいはわかるよ」

「それを売買する会社なんです」

 男は特に興味もない顔でうなずいた。そういうものがあるということは知ってはいるが、まさか売買する世界があるとは知らなかった。

「つまり才能はあるけどお金のない人達って沢山いますよね、そういった人達の著作を買って、名前の売れている作家、作曲家、画家に売り渡すんです、これは表には出せないビジネスなんですが、今の世の中の大半は、これが成立しているんです、どんなにすばらしい作品でも、それを売り出すためのツテとコネがなければその作品は死蔵されます、それを発掘して売り渡す仕事です」

 男はちょっとびっくりした。すると今売れている画家、建築家、作詞家、作曲家の作品は、必ずしも本人の作品とはかぎらないわけである。

「そうなんです、売れている作家の人達はお金をたくさん持っています。でも人間の才能には限界があります。そこでお金を欲しがっている才能のある市井の人達や、流行に敏感な学生さんたちから著作権を買って、それを本人の名前で売り出すのです、私たちの会社はその仲介をしてリベ−トをいただきます」

「それはわかったけど、この俺にお願いというのは何なんだ」

「ここまではご理解いただけたと思いますが、実は著作権の他にもうひとつ売買しているものがあります」

「今度は何を商売にするんだね」

「ズバリ言いますと肖像権です」

「何、肖像権?」

つづく


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