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2006/03/07(火)
アスファルト 7
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男はしばらく考えていた。肖像権を売るということはどういうことなのかを。この世の中で自分の肖像権がなくなる、写真にも自分の顔が写らない。 もしかしたら・・・男は突然タンスの小引き出しを開けると、健康保険証などの大事なものが入った袋を開けてみた。たぶん・・・という思いはあった。 男が取り出したものは運転免許証だった。ほとんどペ−パ−ドライバ−だった男は最近では更新の時しか取り出すことはなかった。ケ−スを開けてみた。 予想どおりだった。顔の部分だけ白くぼやけている。顔だけが免許証の中から無くなっている。
「ははは・・・これで俺は車も運転できないわけか」
男はつぶやくと、改めて社会的肖像権といった由里の言葉を思い出した。次に考えたことは、社会的肖像権をなくした場合の生活の支障と、買われた肖像権の使い道である。 あの時由里は言った「高いか安いかはその人の気持ち次第で決まります」と。 800万円という金はもしかしたらとんでもなく安い金額なのかもしれない。もし、その肖像権が犯罪に使われたら・・。
つづく
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