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2006/07/02(日)
ともだち 13
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息子は蘇生した。妻にこの事は誰にも言うなと念を押した。妻はこっくりとうなずいた。息子が生き返るのなら何を犠牲にしてもいいと妻は言った。妻には赤い玉はまったく見えていないはずである。妻は僕が不思議な行動をしたとしか見えていないのである。 医師は息子が蘇生したことに首をひねった。もちろん骨折部位などはそのままではあるが、とにかく心臓は動き出したのだ。僕は息子のことは妻にまかせて、とにかく自宅に戻ることにした。赤い玉の入った木箱を抱えて。
自宅に戻り屋根裏に上がるとパソコンは起動した。
「コドモハエネルギ−ヲトリモドシタノカ?」 「アリガトウ、ムスコハイキカエッタ、ホントウニアリガトウ、アリガトウ、アリガトウ」 「ヨカッタ、キミガウレシイノナラボクモウレシイ、ヨカッ・・・・・」 「ドウカシタノカ・・」 「・・・・」 「ドウシタンダ」 「・・・」 「ダイジョウブカ」
それ以降はパソコンは2度と起動することはなかった。彼は自分の残り少ないエネルギ−をすべて息子に与えたのである。僕の目から涙がしたたり落ちた。あと2年、あと2年この星で生きられたのに、もしかしたらその2年に迎えが来たかもしれないのに。僕は彼にとんでもないお願いをしてしまった。彼の命を奪ってしまったのだ。
つづく
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