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2006/07/03(月) ともだち 14
 僕は木箱を開けると鏡にかざしてみた。思ったとおりだった。赤い玉は黒い玉に変わっていた。僕は鏡でしか見えない黒い玉を取り出し胸に抱きしめた。見えないけれども触ることはできる。何度も何度も撫でてあげた。僕の目は涙が止まらなかった。その一滴が見えない玉に落ちたとき、一瞬赤く光った。もしかしたらそれは錯覚だったのかもしれないが。

 息子は2ヶ月ほどすると退院してきた。もちろんこれから何ヶ月かはリハビリに通わなければいけなくなると思うが、あれだけの事故に遭い、命を取り留めた事に医師は、とんでもない生命力であると驚嘆した。
 とりあえず、今年は受験をあきらめる事にして、来年に賭けることにした。人生は命さえあれば何度でもやり直せるさ、僕は息子にそう言った。そして事故の相手方の会社と保険金によりまとまったお金が慰謝料として口座に振り込まれた。

 僕は屋根裏に棚をかけると、そこに見えない玉を置いた。僕は毎日朝晩その玉にお祈りをした。息子が蘇生したときのように胸の前に両手を組んで。
 僕はその日の出来事を毎日彼に報告した。季節の移り変わり、その日の天気、そして息子が回復していくすべての様子を。
 僕は屋根裏に上がるたびにいつも思うのだ。パソコンが自動的に起動するような気がして。しかし、もう二度と自動起動することはなかった。あれから屋根裏のパソコンは電源が抜かれたままである。しかし電源を僕は入れる気にはなれない。これは彼と僕とが会話とできる唯一のコミニュケ−ションの場だったからである。これはこのままにしておこう。ずっとこのままに。

つづく


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