|
2006/07/04(火)
ともだち 15
|
|
|
翌年の春、息子は大学受験に合格した。あの事故以来、なぜか勉強ができるようになったと息子は言っていた。たぶん彼のエネルギ−がそうさせたのだろう。 僕は新しい仕事を始めた。自営業ではあるが商売は面白いほど順調に進んだ。以前のように経済的に苦しむこともなくなったし、仕事が以前より面白くなった。そして冬になるとあれほど嫌だった雪が好きになった。雪景色が彼の言うようにすごく美しく見えた。 ある日棚の上の黒い玉をみようと鏡にかざしてみた。不思議だった。黒い玉は鏡に写らなくなっていた。おそるおそる触ってみると何も手に触れなかった。黒い玉は消えていた。そのまま僕は棚の奥に手鏡を置いた。 もしかしたら彼の星から迎えに来たのだろうか、それとも形というエネルギ−も亡くなってしまったのだろうか。それでも僕は毎日お祈りをした。ちょうど鏡に向かってお祈りをしているようにである。
ある日僕は思った。太古の昔から日本では鏡をご神体としてきたということは、もしかしたら遠い昔に彼と同じ星からやってきた仲間が神となったのかもしれないと。そしてこの星の人たちに幸せを与えたのかもしれないと。 今でも毎日僕は鏡に向って祈りをささげる。そして息子の成長と家族が幸せであることに感謝をささげる。そして思う、命があれば何度でもやり直しができるさと・・・。
おわり
|
|
|