"残虐騎士"亜II死の日記(2005/01/19-2007/06/27)
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2006/08/16(水) 夏の怪異談
よく言われる事だが、音が鳴る場所には霊が集まりやすい。らしい。

俺の職場は音楽スタジオ「サウンドトラック」。

やはりここでもちょっと不思議な事は日常茶飯事。


例えば、

まだ誰もいないスタジオ。

2階を1人で掃除していると、背後の階段を上がってくる足音。

「誰か飛び込みで練習しに来たな。」

そう思い見ると、誰も居ない。

階段の下まで見ても、誰もいない。

そんな事はしょっちゅうなんで、その位じゃ驚かない。

第1に、恐い感じはしなくて、誰か普通にその辺に居る感じしかしないし。


今日も15時に開店。

お店の鍵を開け、さあ、窓のシャッターを開けようと、表を掃くほうきと、表に盛る為の塩を取りに倉庫に行った。

すると、少し遠くから「カチャッ」

音がする。

また、「カチャッ」

音がする。

全部のスタジオはもちろん防音なので、扉には普通のドアノブではなく、ゴッツイ大きなストレートタイプのハンドルが付いている。

スタジオの扉を開ける時に、ハンドルを回した時に鳴る、その音に間違いない。

今俺が鍵を開けて店に入ったばかり。

人の出入りは無い。

なのに?

店内を見ても誰もいないばかりか、人の気配さえも無い。

まあ、いい。

いつもの事だ。


そして店内やスタジオを掃除していた。

すると電話が。

今日、17時から予約しているバンドのドラムのA子ちゃんからで、自分のバンドのリハ前に1時間ばかり個人練習をする為に予約を取るための電話だった。

空きはあったので、予約を受けた。

俺は掃除の続きを始めた。

15時40分頃、2階を掃除していると、またも電話が鳴った。

電話の子機を2階に持って上がっていた俺は、電話で予約を受けつつ1階へと階段を下り始めた。

階段を下りる時に正面にある窓の外には、先ほど予約の電話をしてきたA子ちゃんが自分の車から降りて来るのが見えた。

もう予約の20分前。

別に特別早く着き過ぎって訳でもない。

実際、よくこの位の時間にA子ちゃんが到着する事が多いので、俺は、

「来た来た。」

そう思いつつ、今の予約の電話を受けていた。

電話を切った。

そろそろA子ちゃんが扉を開けて店に入ってくるはずなのに…?

表を見た。

A子ちゃんはおろか、車もない。

「車を停めにくかったから、その辺を1周してまた戻ってくるのかな?」

そう思い、もうすぐ掃除が終る2階へと戻った。

10分後、掃除を終えた俺は1階へと降りていった。

店のドアが開いた。

「お疲れ様でーす!」

A子ちゃんだ。

「さっき、10分くらいまえに1回来たのに、またどっか行っとったろー?」

俺が尋ねると、

「えー?いやいや、今、来たとこですよー。」

「はー?さっきあっちから来て車降りたやん。」

「ホントに今来たし、そっちじゃなくて、コッチから来たんですよー。」


それから何回もA子ちゃんにいろいろ質問したけど、どうやらA子ちゃんは本当にスタジオの前に着いて、すぐドアを開けたようだ。

でも、俺が見たのは間違いなく、A子ちゃんだった。

間違いない。

A子ちゃんは、週に3回程度うちのスタジオに来てるし、気軽に話もするし、人違いするわけがない。

服も車もA子ちゃんのものだったし、窓越しに見たと言っても、せいぜい3mくらいの距離。

一体、あれは?


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