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2006/08/16(水)
夏の怪異談
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よく言われる事だが、音が鳴る場所には霊が集まりやすい。らしい。
俺の職場は音楽スタジオ「サウンドトラック」。
やはりここでもちょっと不思議な事は日常茶飯事。
例えば、
まだ誰もいないスタジオ。
2階を1人で掃除していると、背後の階段を上がってくる足音。
「誰か飛び込みで練習しに来たな。」
そう思い見ると、誰も居ない。
階段の下まで見ても、誰もいない。
そんな事はしょっちゅうなんで、その位じゃ驚かない。
第1に、恐い感じはしなくて、誰か普通にその辺に居る感じしかしないし。
今日も15時に開店。
お店の鍵を開け、さあ、窓のシャッターを開けようと、表を掃くほうきと、表に盛る為の塩を取りに倉庫に行った。
すると、少し遠くから「カチャッ」
音がする。
また、「カチャッ」
音がする。
全部のスタジオはもちろん防音なので、扉には普通のドアノブではなく、ゴッツイ大きなストレートタイプのハンドルが付いている。
スタジオの扉を開ける時に、ハンドルを回した時に鳴る、その音に間違いない。
今俺が鍵を開けて店に入ったばかり。
人の出入りは無い。
なのに?
店内を見ても誰もいないばかりか、人の気配さえも無い。
まあ、いい。
いつもの事だ。
そして店内やスタジオを掃除していた。
すると電話が。
今日、17時から予約しているバンドのドラムのA子ちゃんからで、自分のバンドのリハ前に1時間ばかり個人練習をする為に予約を取るための電話だった。
空きはあったので、予約を受けた。
俺は掃除の続きを始めた。
15時40分頃、2階を掃除していると、またも電話が鳴った。
電話の子機を2階に持って上がっていた俺は、電話で予約を受けつつ1階へと階段を下り始めた。
階段を下りる時に正面にある窓の外には、先ほど予約の電話をしてきたA子ちゃんが自分の車から降りて来るのが見えた。
もう予約の20分前。
別に特別早く着き過ぎって訳でもない。
実際、よくこの位の時間にA子ちゃんが到着する事が多いので、俺は、
「来た来た。」
そう思いつつ、今の予約の電話を受けていた。
電話を切った。
そろそろA子ちゃんが扉を開けて店に入ってくるはずなのに…?
表を見た。
A子ちゃんはおろか、車もない。
「車を停めにくかったから、その辺を1周してまた戻ってくるのかな?」
そう思い、もうすぐ掃除が終る2階へと戻った。
10分後、掃除を終えた俺は1階へと降りていった。
店のドアが開いた。
「お疲れ様でーす!」
A子ちゃんだ。
「さっき、10分くらいまえに1回来たのに、またどっか行っとったろー?」
俺が尋ねると、
「えー?いやいや、今、来たとこですよー。」
「はー?さっきあっちから来て車降りたやん。」
「ホントに今来たし、そっちじゃなくて、コッチから来たんですよー。」
それから何回もA子ちゃんにいろいろ質問したけど、どうやらA子ちゃんは本当にスタジオの前に着いて、すぐドアを開けたようだ。
でも、俺が見たのは間違いなく、A子ちゃんだった。
間違いない。
A子ちゃんは、週に3回程度うちのスタジオに来てるし、気軽に話もするし、人違いするわけがない。
服も車もA子ちゃんのものだったし、窓越しに見たと言っても、せいぜい3mくらいの距離。
一体、あれは?
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