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2004/10/30(土)
いつもと同じ電車
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月曜日から金曜日まで 毎朝同じ電車に乗る。
同じドアから同じメンツが乗り込んで 同じ駅で同じメンツが降りていく。
いつもと変わらない朝。 そんな日常に、亀裂が走った。
いつもの乗換駅で降りると、 隣のドアから降りてきた若い女性 例えるなら、鈴木杏樹か加藤あい風の美人が いきなり「駅員さん!駅員さん!」と大声で叫び始めた。
オールバックで高そうなスーツを着た きちんとした身なりの背の高い中年男性の スーツの端を、右手でしっかりと掴んだまま叫んでいる。
この状況は、どう見ても痴漢の現行犯だろう。
「駅員さん!駅員さん!早く来て!駅員さぁん!」 と叫ぶ声は全身を使った金切り声で、 あたりはし〜んと静まり返って、 激しいその声だけが響いていた。
駅員はなかなか来ない。
リストラでホームには駅員がいない。 リストラと危機管理は矛盾している。 いるべきところに人がおらず、遠くからの モニター管理で分からないことは存在しない。
二人をスーツの人々が、なんとなく取り囲み 「犯人」である中年男性は逃げ場を失う。
小さくて気の弱そうな人のよさそうなおじさんが、 女の子が掴んでいるのと反対側の腕の スーツの布を握って逃がすまいとしている。
女の子の叫び声は、まだ続いている。 駅員は来ない。全ては静まり返っている。
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