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2004/11/04(木) 【B型的強迫観念】自己中と言われようと、不安は不安。
出勤時、家電量販店の駐車場に面した歩道を通る。
交通量の多い道路だけれど、スピードを出す車は少ない。
職場のビルの入口に近いので、横断歩道を渡らずに、車道を横切る人がかなりいる。私もその一人だ。

今日はお昼から出勤だった。
職場に向かい、その歩道を早足で歩いていた。
家電量販店の駐車場と、歩道との境に植え込みがあった。
1uもないだろう、小さな植え込み。
植え込みというよりは、ちょっとしたくぼみに雑草が生えているだけなのかもしれない。
今まで、そこにそんな場所があることなど、気づきもしなかった。
でも、今日はその場所の数m前から、妙にその場所に視線が行った。

裸眼だったので、そこに何があるのかなど、まったく見えない。
くぼみや雑草さえ、ぼやけてかすんでいる。
毎日通る場所なので、記憶よりも先に、感覚が「いつもの景色と違う」という違和感を覚えたのかもしれない。

はっきりと目に映ったのは、その場所に間近になってからだった。
その横を通ったのは、ほんの一瞬。
足を止めることができず、光景はすぐに後ろへ去った。

くぼみに、横たわる猫。
大きな体の猫。
頭部にかぶせられた、折りたたまれたハンカチのパステルイエロー。
黒とグレーのサバトラ模様。
胸元の、よだれかけのような白い部分。

心臓が止まるかと思った。
ほんの一瞬で、色々なことを同時に考えた。

ぽんたであるはずがない。
ぽんたは確かに家に残してきた。
まさか、電車に乗って一緒についてきた?
誰かがぽんたを連れ出してきた?
そんなはずがない。
でも、体の大きさが、模様が、ぽんたと似ている。
頭の中が真っ白になる。

いつ、はねられたのだろう?
誰がこの場所に移したのだろう?
誰がハンカチをかぶせたのだろう?
同じ職場の誰かなのだろうか?

近所の飼い猫だろうか?
飼い主は、猫の帰りが遅いことを心配しているだろうか?
この車道を渡って、猫はどこへ向かおうとしていたのか?
誰かの待つ家へ帰るのか?
最後に飼い主と交わしたことばは?

苦しまずに、即死だっただろうか?
最後に思ったことは?
誰かにその瞬間を看取られただろうか?
加害者は、どこに?
自らのしたことをに気づいているだろうか?

私は、今ここで足を止めない。なぜ?

仕事が終わる21時までずっと、横たわる猫の姿が脳裏に焼きついていた。
自分に何ができる?
遅刻してでも、わずかな望みを抱いて動物病院を探して駆け込むべきだったか?
顔のハンカチをめくって、ぽんたではないことを確かめるべきだったか?
あのままでは家電量販店の店員に、可燃ごみとして扱われてしまうだろう。
その前に、ペット霊園で供養をお願いするべきか? 飼い主でもないのに?

帰宅時は、その植え込みには視線をやることができなかった。
飼い主がいるなら、その腕に抱かれて家に帰っていてほしいと願うことだけ。
帰りの道のり、不安がよぎる。
家に帰ったら、本当にぽんたはいるだろうか?
いつものように、「お腹すいたぁ〜!」と出迎えてくれるだろうか?

暗い部屋に、ぽんたの姿がなかったら?
一人きりで、私はどこを探す?
家のまわり? それとも電車に乗ってまたあの植え込みを確かめに行くか?

…もーのすごい強迫観念ですが、ぽんたは無事家におりました。
いつもどおり空腹を訴えて走り回り、抱きかかえると肩に噛みつく。
待っていてくれることの幸せ。元気でいることの幸せ。

植え込みに横たわっていたサバトラ猫のご冥福を。


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