|
2004/10/08(金)
初恋は遠くにありて思うもの?
|
|
|
海辺の小さな町に住む少年と少女の初恋物語。
少年は海辺のあばら家に住む貧しい家庭の子。 一方、少女のほうは、高台の新興住宅地の一角に豪邸を構える裕福な家庭に育った。 ふたりは保育園の頃からの幼なじみで、小中学校の9年間ずっと同じクラスだった。 お互いチビだったから、背の小さい順に並んだとき、必ずふたりが一番前にいた。 朝礼、運動会、遠足、全校集会・・・学校行事のとき、とにかくいつも隣同士だった。 駆けっこがズバ抜けて早かった以外に取り柄が見当たらない少年だったが、小学校高学年あたりから、少女は少年に対し淡い恋心を抱きはじめる。 鈍感な少年はそのことに全く気づかなかった・・・。
小学校時代、少年と少女はともに「中の上」くらいの成績で、特に「頭がいい」といわれることはなかった。 が、中学入学と同時に行なわれた実力テストで、少年は136人中で4位となり、周囲からは「突然変異」と不思議がられた。 平凡を絵に描いたような少年に、もちろん突然変異など起きようはずがない。 実は、小学5、6年のときの担任が貢ぎ物を差し出してくる金持ちの子どもらをヒイキして、貧乏人の子どもは冷や飯を食わされた…それだけのことだ。 少年はこの“躍進”に気をよくして、少しだけ勉強するようになった。 勉強とはいっても、塾に通ったり、参考書を買ってもらったのではない。 学校の教科書を何度も何度も繰り返し読んだだけだ。 そして、中1の1学期中間試験で、少年は学年トップに立った。 以後、中学卒業までの全期間において、トップの座から滑り落ちることは一度もなかった。
中1の10月、少年はその年度後期(10月〜3月)の生徒会役員の書記に立候補した。 とはいっても、自分が立候補したわけではなく、担任の教師が無理やり立候補させたのである。 担任は、チビな少年が演壇に立ったときの見栄えを考えて、応援演説者には少年より背が低いことを絶対条件とした。 しかし、男子には該当者がなく、普段から仲良しである少女を指名した。 少女は演説内容を一生懸命に考え、最後のひと言を「今までの彼はあまり目立たなかったけれど、人一倍がんばり屋で“見ようによっては”すごくかわいいです」と結んだ。 たしかに少年はモテるほうではなかったが、そのとき演壇に立った少年には「勉強ができる子」とゆう後光が射していた。 単純なイメージ作戦は奏功して、少年は選挙に当選。一躍校内の人気者となった。
少女は少年の活躍を自分のことのように喜んだが、一方では、その存在がだんだん遠くなるようで、大きな不安も感じていた。 中1の3学期、バレンタインデーのときに少女は本命チョコを渡そうと決意したものの、告白してフラれたら友だち関係が壊れてしまうのではないかと思い、最後まで迷った。 少女のそんな気持ちも知らず、ふたりだけの帰り道で少年は「すげーよ!こんなにもらったの初めてだ」といって、他の女の子からもらったチョコを見せた。 その夜、少女は泣き明かし、翌日は学校を休んだ。
中2の1学期、少年と少女は揃って男女の学級委員長に選ばれた。 また、少年は前期(4月〜9月)生徒会役員選挙に立候補し、再び少女の応援演説を仰ぎ、副会長に当選した。 生徒会行事の準備やホームルームの運営計画など、放課後ふたりきりになれる時間が多くなり、少女は一層少年に対する思いを強めていった。
夏休み、少女に絶好のチャンスが訪れた。 生徒会役員と各クラスの学級委員長らが集い、2泊3日でリーダー研修の合宿をすることになったのだ。 海辺のスポーツセンターの宿泊施設で、午前中は講義を聞き、午後はオリエンテーリングや国道のゴミ拾い、球技場付近の草むしり、夕方からはキャンプファイヤーやカラオケ大会まで行なわれた。 研修とは名ばかりで、どうやら親睦行事といった趣きだ。 が、少女にとってはそんなことはどうでもよくて、就寝から起床までの時間以外は、ずっと少年の隣にいられることが何より幸せだった。 さらに、カラオケ大会で優勝はできなかったが、少年がはにかみながら唄った「ガラスの十代」を聴き、少女の思いは頂点に達した。 2日目の行事が全て終わった夜、少女はありったけの勇気を振り絞り、海が見えるテラスに少年を呼び出した。
「ゆうやクンって唄も上手なんだね」 「そうかあ?緊張して全然ダメだったよ」 「そんなことない!一番よかったよ」 「ありがとう。で、何の用事?」
「あのう・・・どうしてもいいたいことがあって・・・」 「なんだよ?」 「いま伝えておかないと、あとで絶対後悔すると思う」 「そんな大事なこと、帰ってからでもいいじゃん」
「わたし、ゆうやクンのことが好きです」 「え?」 「ゆうやクンは最近いっぱいモテてるけど、わたしはずっとずっと前から好きでした」 「ぼくも江梨子が好きだよ。“見ようによって”じゃなくて、マジで一番かわいいって思う」 「ホント?」 「うん」 「じゃあ、交換日記してほしい」 「えーッ!ヤだよ〜」 「いいの!ゆうやクンは読むだけでもいいから!」
間もなく少年は、読むだけでは済まされないことを思い知らされる(…笑) とゆうことで、ロンメル将軍はじめての作品は、初恋の女の子に書いた交換日記なのでR!
|
|
|