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2004/11/09(火)
ろくなもんじゃねえ
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午後10時、長い長い一日の仕事がようやく終わり、ぼくは彼女が待っている部屋へと帰り道を急ぐ。 一刻も早く・・・とにかく早く帰りたいとこだけど、近所まで帰ったところでコンビニに立ち寄る。 「ジュース買うの忘れちゃったヾ(^-^;)ごめんなさ〜い。帰りに買ってきてね」 と、彼女からメールが入っていたことを思い出したからだ。 コーラとオレンジジュースのペットボトルを持ってレジに向かおうとしたとき、昨日スーパーで会ったばかりの[金髪★とび職★同級生]が店の中に入ってきたっ! 気づかないフリをして横を向いたけど、目ざといことに、すぐ見つかっちまった。
「やあ、ゆうや、また会ったなあ」 金髪同級生は、独特の不敵な笑みを浮かべながら近寄ってきた。 「あっ、こんばんは」 ぼくはやっと気づいたかのように、そして、できるだけ他人行儀に挨拶をした。 「同級生じゃねえかよ〜。ずいぶん冷てえヤツだな」 「そんなことねえよ。普通だよ」 「まあいいや。また会えたのもなにかの縁だから、ゆうやにちょっと頼みごとしてみようかな」 「なんだよ?」 「ここじゃアレだから、外で待ってるわ」 「いま急いでんだけど」 「手短にゆうからさ」
イヤ〜な予感がした。 こいつはなにか魂胆があるにちがいない。 ぼくは会計を済ませて外に出た。 あまり広くない駐車場には黒塗りのオンボロのセダンが停めてあり、ヤツが運転席の窓から顔を出していた。 「乗れよ」と言われたけど、「外で話そう」と言って断わった。 クルマの中にヤツの仲間が2人乗っていたからだ。
一瞬ヤツは、ぼくを眼光鋭くにらみつけてからクルマを降りた。 いかにもシブシブって態度で、しかし顔には薄笑いを浮かべながら。 完全に脅しのパフォーマンス・・・ヤクザ映画を見てるようで、かなり冷や汗もんだ。 それでも、ぼくは早く帰りたかったので、先に切り出した。
「ホントに時間がねえんだよ。相談ってなんだ?」 「おまえ、金持ってるか?」 「えっ?」 やっぱりそうゆうことだったか・・・。 「実は俺、借金でクビが回らなくなっちまって、一週間以内に30万ほど用意しなきゃなんねえんだ」 「そんな大金持ってるわけねえじゃん」 「いや、現ナマを持ってなくてもいいんだ。おまえの名義を使って、サラ金から30万ほど借りてくれよ。なっ!頼むっ!」 「無理だよ。フリーターなんて相手にされるかよ」 「大丈夫。保険証を一日だけ貸してくれたら、手続きは俺のほうでやるからさー」 「ダメだっ!!」 「じゃあ、保証人になってくれよ。この通り、頼むから・・・」
なんとヤツは合掌してる。 しかし、ぼくの気持ちが変わるはずもない。 忘れもしない・・・あれは中3のとき。 ぼくはこいつらに散々な目に痛めつけられたショックで、1ヶ月も学校を休んだ。 それなのに、なんて恥知らずで身勝手なヤツ! いや、そんな言葉じゃ足りねえぞ。 こうゆうヤツこそ、ろくなもんじゃねえ! たとえ殴られても蹴られても、助けてなんかやるもんか! よし、ここは曖昧な返事をせず、きっぱりと断わろう。
「おまえねー、名義を貸すとか保証人になるとか…簡単に言ってるけど、そうゆうことって、お金をくれてやる覚悟がなきゃできねえんだぞ」 「金は絶対に返す!それと、昔のことで怒ってるだろうから、きちんと謝る。すいませんでした。これでいいだろ?ホントに悪いことをしたとずっと思ってたんだ」 「はあ?いまごろ寝ぼけたことを言われても信用できねえな」 「いまここで気が済むまで殴ってもいい。だから、なんとか助けてくれ。俺には女やガキもいて、切羽詰ってんだ。わかってくれっ」 しつこいヤツ!こっちこそ、こんなに嫌がってるのに早く気づいてくれよって感じ。
「話はわかったよ」 「ホントか?これからは友だちとして、ゆうやのことを守ってやるからな」 「カンちがいすんなって。おまえが生活に追われていて、それに借金を抱えて苦労してるってことがわかったってこと!」 「それがわかってるなら、助けてくれよ〜」 「なんと言われても、お金の貸し借りはしないんだ。悪いけど、ほかを当たってくれ。その代わり、昔のことはもう謝らなくていいよ」 「そうか・・・こんなに頼んでるのにダメなのか」 「・・・・・・」
ぼくはもうそれ以上は相手にせず、サッと軽トラに乗り込むと、その場から走り去った。 ウインドウガラス越しにヤツから罵声を浴びると覚悟したんだけど、意外な言葉が聞こえてきた。 「ごめんな〜ッ!」 と、たしかにそう聞こえたはず。 「バカヤロー」だったかも(笑)
部屋に帰ると、愛しのさやかちゃんが待っていた。 「遅かったね。事故でもしたのかなって心配したよ〜」 「ごめんごめん。ほら、昨日スーパーで会った同級生がいたでしょ?またあいつとコンビニで会って変な頼まれごとしたけど、はっきり断ったよ」 「そうだったの。でも、これから遅くなるときはメールで知らせてね」 「うんっ!」 キミの笑顔を見たとたん、どんなに嫌なことがあったって、すぐにふっ飛ぶんだ。
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