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2004/12/10(金)
笑顔が地球を救えなかった日
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魔の12月10日・・・。 多くの民間企業でボーナスが支給されるこの日を境にして、宅急便の仕事はいよいよホンモノの繁忙期を迎える。 ある程度覚悟はしていたけど、今夜はやっぱり恐ろしいことになっていた。 ゆうべ40個だった夜間配達(18時〜21時)の荷物が、一挙に70個だ!
「うわっ!!すっげえ!こんなに配れるわけねえじゃん」 と、自分の棚の前で、思わず呆然自失するしかない。 去年何度も経験したはずなのに、荷物の数に圧倒されそうになる。
大都会には夜配だけで100個以上配るドライバーがいくらでもいるから、そうゆう人にしてみれば、70個なんて全然大した数じゃないだろう。 が、ここは田舎。 ぼくが担当しているのは高級住宅街ではあるけど、東京や大阪や名古屋なんかと比べたら月とスッポンなんだ。 ひとつのビルだけを担当して、毎月100万円以上の給料を手にするような正社員がゴロゴロいる場所とはちがう。
ぼくの場合・・・ 18時前に出勤して準備に1時間ほどかかるから、センターを出発してお客さんのところへ向かうのが19時ごろになる。 地方の住宅地だと、1時間で配達完了できる荷物は20個が限界ギリギリの線。 宅急便はいちおう21時で終了(…とゆう建て前?)だから、19時スタートだとたったの2時間しかない。 途中で不在連絡票を殴り書きしたり、発送する荷物の夜間集荷が入ったりするから(…これに時間がかかる!)、1時間20個のペースをずっと保つことはほとんど不可能だ。 だから、40個以上の荷物を“ただのバイト”のぼくに託すのは、会社としてまちがっている(…と強く主張したいっ!)
しかしながら、ぼくはセンター内では夜配の記録保持者! 体は小さいけど(関係ねえか…)これでもエースなんだっ! 去年の12月に叩き出した夜配記録『74個』は、人類が滅亡するまで破られないだろうと言われている。 大げさだけど、たぶんセンターのみんなはぼくを持ち上げるために、そう言ってる。 荷物を抱えて走り回る・・・ハムスター並みの俊敏な動きは、宇宙人の生まれ変わりでなければできない・・・と。
話がちょっと変わるけど・・・ こうゆうのも自画自賛で、読む人の何割かはハズいと思うのか? でも、日記なんてしょせん自己満足な書き物で、自分を褒めてあげるために書くもんなんだよ。 今日会ったあの人が、ぼくにこんなことを言ってくれた。 うれしいから、日記に書き留めておこう・・・そんな感じで。 そうでなきゃ、他人の日記で、しかも自己嫌悪と反省だらけで、希望のカケラもない文章を読むほうがよっぽど苦痛だ。 少なくとも、ぼくはそう思うけどなあ。 まあどうでもいいや。
さてと、宅急便の仕事に携わって1年半、今夜はサイテーにイヤな出来事があった。 クール便の中に『14時〜16時』指定の荷物が入っていて、16時までに届けていなかったのは正社員(昼間のドライバー)の責任で、本来ぼくが責められるようなことじゃない。 ぼくにできる最善の行動は、 “いわくつきの荷物”を出発後まず一番に届けることだった・・・。
19時2分、ぼくはよく冷えた荷物を抱え小走りで、イルミネーションが光り輝く豪邸の前に立ち、インターホンのスイッチを押す。
「はい、どなた〜?」 「こんばんは、宅急便っす」 「ど〜ぞ」 「オジャマしま〜す」
あ〜あ、どうぞと言いながら、声がもう不機嫌そのものなんだから。 いつものように笑顔でゴマかすとするか。
「指定時間に遅れてゴメンなさいっ!」 「そんな軽く言わんといてやね。5分や10分の遅れやないでしょ?どうしてこんなことになるん?」 「あ、すいません。ぼくは夜間配達のバイトなんですけど、いまの時期は荷物が多くてかなり混乱していて、昼間の担当の人が忘れていたみたいで・・・でもそれは言い訳にならなくて・・・ゴメンなさい」 「何が言いたいん?自分のせいじゃないみたいに。ゴメンなさいじゃ済まんよ!今晩のオカズの材料やったんやけんね。損害賠償してほしいわ」 「いやいやいやいや〜」
オバサンはマジで怒っちまって、ぼくはもうヘラヘラと愛想笑いをするしかない・・・。 周りの時間が止まり、気まずい空気が漂う。
「あなた、バイトなん?笑い事じゃないよ!不マジメな子や。腹立ってくるわ。で、どうするつもり?」 「どうするかと言われても、ぼくにはちょっと・・・。ホントにすいませんでした」 「こらアカン。おとうさ〜ん、ちょっとこっち来て、宅急便に文句言うたってよ!」
ヒエ〜!奥から人相の悪いオヤジがノッシノッシと出てきた〜ッ! わっ、カバみてえだ(…と、心の中で笑ってる場合じゃねえってば) まさか取って食われることもないだろうし、ここはひたすらガマン!ガマン! そして、注目の一言。
「その兄ちゃんも反省してるみたいやし、もうええやないか」 「荷物遅れたせいで、冷蔵庫の残りもん出さないかんなったのに・・・ウチ気ィ悪いわ。ええ加減な態度も許せん」 「あ、すいません。悪気はないんですけど・・・」 「この子の謝り方、なんか誠意がないねえ」 「最近の若い子に誠意なんか期待したらいかんって。特に宅急便の運転手なんか、どうせ配達しかできんのや」 「お父さん、そんなこと言うて・・・黙って許すつもり?」 「おまえもええ加減にせえ!兄ちゃん、もう行きや〜」 「はい、ありがとうございます」
悔しい〜ッ! これほどハッキリとバカにされたのは初めてだ。 指定時間を守れなかったほうが悪いけど、あんたらが上等な人間だなんて、ちっとも思っちゃいねえからなっ!
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