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2004/12/24(金)
15の夜 ―ひとりぼっちのHoly Night―
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ぼくはクリスマスが好きじゃない。 その理由は… 日本中で1ヶ月も前からお祭り騒ぎをしているわけで、なんだかみんな一緒に踊らされているような気がして、好きになれない。 ・・・と言ったら、カッコつけすぎか?
ホントのことを言うと、そんなことじゃない。 15のときのイヤな思い出があるからだ。
11月14日に母ちゃんが家を出て行ったあと、最初のうちワーワーと騒いでいた父ちゃんも静かになり、3週間ほどすると帰ってこなくなった。 ぼくはとうとうひとりぼっちになっちまった。
ぼくには当時、中2の頃から付き合っていた同級生の彼女(ただし高校は別々)がいた。 その年のクリスマス☆イブの日はちょうど日曜日。 ぼくの部屋に章二と恭二も呼んで、4人でパーティをする計画を立てていた。 ありがたいことに、みんなでぼくを励まそうとしてくれていた。
けど、世間が狭い田舎では、個人のプライバシーが保証されることはない。 噂はあっとゆう間に広がり、親がふたりともいなくなった事実に加えて、ぼくがすっかりグレちまって「どうやら高校を中退するらしい」とゆう尾ヒレまで付いて、クリスマス直前に彼女の母ちゃんにも伝わった。 それは単なる噂なんだと、彼女が必死になって弁解してくれたから、すぐにでも「別れなさい」とゆうことにはならなかったが、「交際を続けるには好ましくない子」だと常識的な判断をされた。
彼女に課せられた門限が厳しくなり、いったん帰宅してからの外出は禁止になった。 毎日のように会ってはいたけど、下校のときに駅で待ち合わせをして、電車の中で数十分だけのデートだった。 たまには海の近くの駅で途中下車して、寒いのに砂浜を歩いたりもしたっけ・・・。 しかし、危険な週末(?)には家を出してもらえなかった。
イブの前日、ぼくは彼女に言った。 「明日は絶対俺んちに来いよ!」 クリスマスだからきっと特例を認めてくれるはずだ、と甘く考えていた。 「うん。お母さんを必ず説得するから、待ってて」 彼女のほうも同じ気持ちだった。
イブの当日。 約束の時間から1時間が過ぎ、2時間待っても、彼女が来ない! 「まあ、そのうち来るよ」 「テレビゲームでもしようぜ」 そう言いながら、章二と恭二とぼくの3人が、はしゃいでいたのは最初のうちだけだった。 だんだん無口になるぼくに遠慮して、母ちゃんが贈ってきてくれたケーキにも手をつけないまま、親友ふたりは気をきかせて帰っていった。 寂しくやるせない、ひとりぼっちのHoly Night。
ぼくは窓を開け、無数の星できらめく聖夜を見上げた。 隣の家は大盛り上がり大会の様子で、大音響のカラオケの音と住宅地には相応しくない嬌声がこっちにまで届いてきた。 ぼくはなにもかもイヤになり、一瞬、裏のドブ川にケーキを投げ捨ててやろうかと思った。 けど、やめた。 ぼくを置いて出て行ったけど、それでも大好きな母ちゃんからのプレゼントだから、捨てるなんてことはやっぱりできなかった。
ぼくは机の上にケーキを置いた。 銀のスプーンでケーキをすくい、ひと口食ってみた。 そのとたん、涙が溢れ出してきて止まらなくなった。
志望校に進学できて、不仲だけど両親も健在で、一人前に彼女もいて、親友もいて・・・。 ぼくはそれ以上の幸せなんて、なにひとつ望んではいなかった。 それなのに・・・どんどん不幸の坂を転げ落ちてゆく。 15歳のぼくにはどうしていいかわからず、怒りのような哀しみをこらえることができなかった。
ぼくは机の上に伏せて、長い時間泣き続けた。 泣き疲れて顔を上げると、彼女にプレゼントするつもりだったハート型ロケットペンダントの箱が、涙でかすむ目に止まった。 机の上で行き場を失い、寂しげだった。 流行っていたわけじゃないけど、それぞれの写真を入れて交換し合おうとゆう他愛のないものだった。
同じ頃、彼女のほうも、ぼくにプレゼントするはずだったペアのペンダントを胸に抱き、涙にくれていた。 それからぼくらは次のクリスマスを迎えることなく引き裂かれ、互いの初恋に幕を下ろすことになった。 9年前のイブ・・・そんな出来事があった。
◇ ◇ ◇ ◇
1秒でも早くキミに会いたいのに、配っても配っても減らない荷物。 ぼくはもうオシッコがチビリそうなほどに焦りまくりながら、こんなことを思い出していたんだ。
◇ ◇ ◇ ◇
【イメージ画像】はクリスマスツリー。 ケータイからアクセス中の人も・・・必見ですよっ!
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