【青春交差点】
 
いつもどんなときも。ぼくはぼくらしく。
 
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2004/12/28(火) 週刊経済誌事件「前編」
 
今年はいろんな運送業者で、[メール便]に関する不祥事が数多く明るみに出た。
何万通ものメールが未配達のまま運送業者の敷地内に放置されてあったり、ドライバーやライダーの自宅に隠されていたりもした。

今日は火曜日・・・。
ぼくの担当地区のコンビラック(移動式の棚の呼び名)をデリバンの近くまで移動しようと動かしたとき、1通のメールがその下に落ちていた。
それは、先週土曜日に届けなければならなかった[週刊経済誌]だった。
しかも、宛先は「佐渡(…あのサディステッィクな)法律事務所」になってるっ!
ここのダンナはぼくには優しいけど、それはたまたまの幸運であって、メール便ライダーに対しては果てしなく悲しいほど…厳しい。
今までにも何度か土曜日に届けていないときがあって、そのたびセンター長が呼びつけられて怒られている。
本来は要注意リストに挙げられているお客さんなんだ。

しかし、本来“怒られ役”を果たすべきセンター長が、今日は非番で休み・・・。
メール便の不祥事には会社も過敏になっていて、どんな些細なことでも責任者に報告することが義務付けられている。
そこで、ぼくはセンター長のケータイに電話を入れた。

「あの〜、佐渡法律事務所宛ての週刊誌がコンビの下に落ちてて・・・どうしたらいいでしょう?」
「今晩おまえが持って行ってくれ」
センター長は電話口でそっけなく言った。
「イヤですよ〜。なんで関係ないぼくが文句言われなきゃなんねえの?」
誰だって、散々文句を言われるのがわかっているところへは行きたくない。
「まあそう言うなよ。佐渡さんところで無傷なのはゆうやだけなんだから。イヤだろうけど、なんとか頼むよ〜」
視線を感じて横を見ると、メール便ライダー(21歳のフリーター)と地区担当のドライバー篠森さんが、ぼくに向かって手を合わせている(…苦笑)
「今回だけですよっ」
ぼくは捨てゼリフを言ってから電話を切った。

そして、恐るおそる佐渡法律事務所があるマンションへ・・・。
インターホンを押すと、あのセクハラオバン、いやいや…奥さんが出た。
「はい、佐渡でございます。どちら様でしょうか?」
「宅急便です」
「その声は、もしかしてゆうやくんなの?」
「はい」
「わあうれしい!どうぞどうぞ〜」
奥さんの声がサッと2オクターブほど上がったのが笑えた。

エレベーターに乗り通路を走って部屋の前に行くと、佐渡夫妻が玄関の外で待っていた。
「今日はどこからの荷物?」
「宅急便じゃなくて、メール便です。遅くなってゴメンなさい。はい、これ」
ぼくは週刊経済誌をダンナに手渡し、ペコリとお辞儀をした。
「土曜日に届かないから、年末年始は休みかと思ってたよ。ちゃんと出てたんだな」
「エヘヘヘ・・・すいません。じゃあ、ありがとうございます」
ぼくは笑ってごまかしたかった。

が!
「ちょっと待ちなさい!そんな簡単に謝って済む問題じゃない。こっちは土曜日に必ず届くとゆうから、3年間の定期購読を申し込んでるんだ」
週刊経済誌をなにより楽しみにしているダンナの目には、怒りの炎がメラメラと・・・。
「あなた、ここじゃ寒いから中でお話しましょう。ゆうやくんもいらっしゃい」
奥さんが親切のつもりでそう言ってくれたけど、ぼくは早く切り上げて次に行きたかった。
でも、そんなことが言える状況じゃないから、仕方なく玄関の中に入った。

「これで何回目か知ってるのか!?ここに引っ越してくる前はこんなこと一度もなかったのに、どうしてセンターが変わると度々ミスが起きるんだ?」
はじめて聞くダンナの厳しい口調に圧倒されて、ぼくはホントのことを言うべきかどうか、迷った。
「あっ、はい。それは・・・え〜と・・・土曜日に届けられなくて今日になってしまって・・・ゴメンなさい」
全然答えになってない(…笑)
「だから!どうしてそうゆうことになったかって聞いてんだよ!」
当然のことながら、火に油を注いでしまったみたい。

「後編」に続く。
 


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