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2004/08/10(火)
イジメられっ子の復讐
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9日、北海道石狩市で、私立高校1年生の少年(15歳)が会社員の女性(46歳)を刺殺し、殺人容疑で逮捕された。 自供によると、殺人少年とこの女性の長男とは中学のときの同級生で、長男からイジメを受けていたようだ。 イジメの事実については、複数の同級生も証言しているのでまちがいないだろう。 長男を殺すため家に行ったが、不在だったので代わりに母親を殺したとゆう。
中学時代の「イジメッ子」に対する復讐か…。 どうゆうイジメに遭っていたのか、まだはっきりしないが、殺人少年の自供によると、カッターナイフで肩を切りつけられたり、教室の掲示板に頭を押しつけられたりしたようだ。 しかし、複数の同級生によると、からかわれていた程度で、暴力によるイジメはなかったとゆう。 どうも釈然としないが、周囲からみればからかわれていた程度に見えても、本人としては人間としての尊厳を傷つけられたわけで、イジメッ子を殺したいほど憎んでいたんだ。
話は変わるが、ぼくは高校卒業直後、繁華街のCDショップでバイトをしていた。 ちょうどその頃、中学のときイジメられっ子だったヤスシが、すぐ近くの料亭で板前の修行をしていた。 ぼくが料亭に行くことはなかったけど、ヤスシがCDを買いにきてくれたり、通勤の電車が一緒だったりして、中学時代のことをいろいろ話したもんだ。
ヤスシがどんなイジメを受けていたのかとゆうと…。 殴る蹴るの暴力はもちろん、油性マジックで顔に落書きをされたり、教科書やノートを破られたり、体操着や上靴をゴミ箱に捨てられたり、通学途中に大勢のカバン持ちをさせられたり…。 恥ずかしいことに、クラスの女の子の前でパンツをおろせ、と命令されたりもした。
ぼくは中学1年の2学期から卒業までの間ずっと学級委員だった。 だからってわけじゃないけど、ほんの少しだけ正義感があったように思う。 けど、残念ながら当時も(今も)チビで腕力がないから、体を張ってイジメッ子と戦うことはできず、はじめのうちは見て見ぬフリをしていた。 報復を恐れて誰も止めないし、先生にも相談しないから、イジメはどんどんエスカレートしていった。 中3の6月頃、昼休み中にヤスシがイジメられていたとき、ぼくは職員室へ駈けこみ、「先生、大変です!教室でヤスシがイジメられています」と知らせた。 何回かこれを繰り返しているうちに、校内でのイジメはなくなった。 幼稚なぼくはそう思っていた。
しかし、実際にはヤスシはきっちりとイジメられていた。 教室でイジメるとぼくが先生にチクるから、体育用具室や化学教室、音楽教室、冬場のプールの更衣室など、人気のないところとか下校途中とか…。 「ロンメルが先生にいってくれたんはありがたかったけど、結局卒業するまで解放されんかったなあ」 と、ある日電車のなかでヤスシから聞き、ぼくはショックだった。 「マジで?ほしたら、ぼくのせいでよけいイジメられたんか?」 すると、ヤスシは笑いながらこういった。 「そうかもしれん。けど俺のためにやってくれたことやし、おまえも仕返しされた」 「…」 ぼくは言葉が出なかった。 「あのころはメソメソ泣くだけやったけど、今なら絶対負けせん。1対1なら」 なるほど、ヤスシは背も高くなり、たくましくなっていた。 「仕返ししたいと思うか?」 ぼくは恐るおそる聞いてみた。 「そら仕返ししたいに決まっとる」 「そうかぁ…」 「そやけど、もうええわい。仕事がんばらないかんし、それどころやない」 「ヤスシ、強なったなあ」 「まあ、中坊の頃に比べたらな」
石狩の事件を知り、そんなことを思い出した。
殺人少年がヤスシのような気持ちになれればよかったんだけど…。 早まったことをしたばっかりに、一生を棒に振っちまった。
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