【青春交差点】
 
いつもどんなときも。ぼくはぼくらしく。
 
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2005/01/16(日) 遥かなるジイちゃん≪後編≫
 
さて、読者の皆さま!お待たせしました。
ここからやっと、後頭部を痛打したことで思い出したジイちゃんの思い出です。
前編&中編の長〜い前置きを読んでもらってあんがとさんです!

では・・・どうぞ!

3歳の夏、ぼくは海で溺れて死にかかったことがある。
その日、ジイちゃんは子分を引き連れ、漁船に乗って釣りに出かけた。
ジイちゃんはぼくも連れて行きたかったらしいが、船酔いしてはかわいそうだとゆうことで、しぶしぶ置いていったらしい。
その当時、ぼくのとうちゃんは漁師をやっていたから、その日の夕方は、かあちゃんに連れられ漁港に出迎えに行った。
とうちゃんの船が先に船着場に入り、ジイちゃんの船はその少し後で港に入ってきた。

ぼくはジイちゃんの姿を目ざとく見つけると、早く抱っこをしてほしくて、コンクリートの波止場の先までひとりで歩いて行った。
とうちゃんとかあちゃんは、そのことに全く気づかなかった。
売上金の計算に夢中だったからなのか、夫婦ゲンカをしていたからなのか・・・わからない。
また、ジイちゃんの船に乗っていた人たちもぼくを確認できなかった。
引き潮であれば簡単に見つかるところだけど、そのときはちょうど満潮に近かったせいで、小さいぼくは漁船の陰に隠れてしまって、誰からも見えなかったんだ。

「ゆう坊はどこや?」
ジイちゃんが船から降りてくるなり言ったその一言で、とうちゃんとかあちゃんは顔面蒼白になり、漁港内はパニックになった。
「バカたれ!親がしゃんと見よってやらんか!」
そう言うが早いか、ジイちゃんは波止場を走り、ぼくの姿を探した。
が、どこにもいない!
「くそっ!海に落ちてしもたんやなあ・・・。ボサッとせずに、おまえらも探さんかい!」
ジイちゃんはみんなに向かって大声で命令した。

ジイちゃん自身もパニック状態に近かったらしいが、そこは年の功だ。
努めて冷静を装いながら、並んでいた漁船の隙間をひとつひとつ丁寧に見て回った。
そして、わずかな隙間から、うつ伏せになって海に浮かんでいるぼくを見つけると、服を着たまま、もちろん時計もしたまま海に飛び込んだ。

九死に一生を得たぼくは、ジイちゃんの人工呼吸ですぐに意識を取り戻したそうだ。
とうちゃんとかあちゃんが、長々と説教されたのは言うまでもない。
ジイちゃんの自慢だった大きな古時計…いやいや…ROLEXの超高級腕時計は一発でオシャカになった。
が、そんなことを悔やむより、孫の危機を救うことができた喜びで興奮状態だったことだろう。

また、ぼくは海に転落する直前、コンクリート壁に頭を打ちつけた。
右の眉毛にほんの少し毛が生えてこない部分があるのはそのためだ…と、かあちゃんから教えられた。
けれども、頭を強打したことでトクをしたとも言われている。

ぼくが高校受験に受かったとき・・・

「親が両方ともバカやとゆうのに、ゆう坊だけ頭がええのは、絶対にあのとき頭の打ちどころが良かったけんやなあ」
ジイちゃんがしみじみ言った。
「ちがうよ、ジイちゃん。ぼくは人間ソックリの宇宙人なんや。かあちゃんのお腹から出てきたのは、たまたまなんや」
もちろん冗談のつもりだったけど、ジイちゃんはある程度(?)真に受けたみたいだ。
「わしは難しいことはわからんけど、ゆう坊がそう言うなら、たぶん間違いないわい」
と、なんと素直に認めてくれた。

そんな会話をジイちゃんと交わしたことをいまも覚えている。

ジイちゃん!
子どもだったぼくも、もうすぐ25歳になります。

あのとき・・・
もしも、ジイちゃんが見つけてくれるのが、もう少し遅れていたら・・・。
もしも、ジイちゃんが勇気のない人だったら・・・。

それに・・・
もしも、引き潮だったら・・・。
ぼくは剥き出しになったテトラポットで頭を打って、簡単に死んでいたかも知れない。

ホントにラッキーだった!

春になったら、ジイちゃんの故郷へ行ってみようと思う。
なにか新しい発見ができるかも知れない。
もしかして、ロンメル星人の基地があるかも・・・。

≪とりあえず…完≫


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