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2005/01/22(土)
愛のために
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ぼくと彼女は、去年の11月頃から半同棲していた。 彼女が夜勤じゃない日はぼくの部屋に来て、ままごと遊びのリアル体験版みたいなことをして、ふたりでハッピー気分を満喫していた。 もちろん彼女のかあちゃんにも認めてもらっていて、なんの障害もない・・・はずだった。 以上、すべて過去形!
そして今、ちょっとしたピンチを迎えている。
木曜日の夜、彼女の家に行き、晩ご飯をご馳走になった。 食事が終わった後のこと。 「ゆうやくんに大事な話があるんだけど、聞いてくれる?」 いつもはやさしい彼女のかあちゃんが、珍しく厳しい顔をしてぼくに言った。 「はいっ!」 これは深刻な話にちがいないと感じたから、ぼくも真剣な眼差しで返事をした。
「ウチのさやかと同棲してるけど、将来結婚する約束はしてくれてないそうね?」 これはいきなり鋭い質問だ。 「はっ?えーと・・・それは、ちょっとまだみたいな感じで・・・」 ぼくは痛いところを突かれ、しどろもどろになる。
「さやかからあなたと同棲したいと話があったとき、将来は結婚する約束をしているとゆうから、早すぎると思いながらも認めたのよ」 ぼくはもう彼女のかあちゃんと目が合わせられない。 「・・・・・・」 わりと簡単に同棲が実現して不思議な気がしたけど、彼女はぼくと同棲したくて親にウソをついてたんだ。 そうか、そうゆうことだったのか。
「おかあさん、その話はしないって約束したじゃない!それなのに・・・ズルイよ。それに、ゆうやくん一人を責めるような言い方はしないで!ウソをついたさやかが悪いんだから」 目にいっぱいの涙を浮かべ、彼女が必死に訴える。 「娘を思うからこそ、こうやって相手の人に直接聞いてるんでしょ?ズルくなんかないわ!」 「抜き打ちで聞くなんて絶対ズルイって」 「さやかはちょっと黙ってなさい!おかあさんはゆうやくんから話が聞きたいの」 この場に居づらいとゆうか、家中を相当気まずい空気が支配している。 ぼくのせいで、しかもぼくの目の前で親子ゲンカなんて、できればしてほしくない。
「私はなにも、ゆうやくんだけを責めるつもりはないのよ。その点は誤解しないでね」 彼女のかあちゃんが、ぼくのほうへ向き直る。 「はい・・・」 次はなにを言われるのか、かなりドキドキしていた。
「はっきり言うよ。今のままでは、もう同棲みたいなことはさせられない。それでもよければ、普通のお付き合いは続けてやってください」 ガーン!! 別れろと言われたわけじゃないけど、ショックだった。 「結婚の約束をしなければ、一緒に暮らしちゃダメなんですか?」 「そう!古くさいことを言うようで申し訳ないけど、私にはどうしても許せないの。ゴメンなさいね」 「そうですか・・・しばらく時間をかけて考えてみます」
彼女は両手で顔を覆い、さっきからずっと泣いている。 彼女のかあちゃんの目にも光るものが・・・。 かわいい娘のために心を鬼にしたんだろうか。 きっと厳しいことを言うほうもつらかったにちがいない。
肩を落とし出てゆくぼくを、彼女が追いかけてきた。
「ゆうやくん、ゴメンね。ホントにゴメンね」 「うん・・・」 ぼくのほうこそ結婚します≠ニ言えずにゴメンよ。
「お願いだから、さやかのことキライにならないでね」 「うん・・・」 ぼくのためについたウソなんだから、もう気にするなよ。
「時間をかけておかあさんを説得してみるからね」 「うん・・・」 今までがうまくゆきすぎただけだと思って、最初からやり直そう。
このとき、彼女が言ってくれたことに力なく「うん」とうなずくだけじゃなくて、きちんと気持ちを伝えておけばよかった。 それなのに、どうしても素直になれなかった。
その後、彼女からは何本もメールが届いたけど、ぼくは一度も返信できないでいる。 楽しかった同棲生活を突然打ち切られ、気持ちの整理がつかず、どう声をかければいいのか、わからなくなってしまった。
でも、ふたりで育ててきた愛のために、なんとかしなければ・・・。 ぼくの気持ちを早く伝えなければ・・・。
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