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2005/02/10(木)
耳もとで聞こえる☆ふたりのメロディ♪
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築港の先端にある小さな灯台の下。 ぼくと彼女は永遠不滅の愛を近い、ずっと一緒に歩いてゆくことを約束した。 長い人生の途中、たとえどちらかが死んでしまったとしても・・・。 そして、ぼくらは時の流れを止めて抱きしめ合い、何度もチュウをした。 世界中の時間が、ぼくらを祝福するために止まってくれている。
そんな気がしていたのに、突然彼女の着うたが鳴りだした!
花びらのように散ってゆくこと♪この世界で全て受け入れてゆこう♪ ≪オレンジレンジ花≠謔閨
彼女のかあちゃんが、なかなか帰って来ないふたりを心配しているみたいだ。
「もうちょっとここにいたいけど、帰るとすっか」 「うん」 ぼくらは手をつなぎ合い、今度はゆっくりと歩き始めた。 「ゆうやくんが何時に帰ってくるかわかんないから、いつでも始められるようにすき焼きにしたんだよ。ケーキも用意してあるし・・・」 明るい声で彼女が言ってくれた。
すき焼きと聞くと、急にハラが減ってきた。 胸なら愛でいっぱいでも、やっぱりハラは減るもんだ(…笑) ケーキのある誕生日なんて、もしかして10年ぶりじゃないか? 母ちゃんと離れ離れになってからは、今年が初めてだ! あのときは、まだジイちゃんも生きていて、ぼくの15歳の誕生日を祝ってくれた。 それ以来、誰かにプレゼントをもらったことはあるけど、バースディケーキは久しぶりなんだ。
彼女と海の上の道≠歩きながら、ぼくは母ちゃんとジイちゃんのことを思い出していた。
ぼくは心の中でそっとつぶやく。 母ちゃん・・・ぼくはいま隣にいる女の子と結婚することに決めたよ! ジイちゃん・・・この子と一緒なら、きっとしあわせになれるから安心して!
彼女の家への帰り道。 ぼくらは、既に一生の思い出の曲になることが決定しているあの歌≠聴いた。
耳もとで聞こえるふたりのメロディ♪ 溢れ出す涙こらえて♪ ありきたりの言葉あなたに言うよ♪ 「これからもずっと一緒だよね・・・」
抑えきれないこの気持ちが25時の空から♪ 光る滴として降り注いだ♪ 気がついたら心の中やさしい風が吹いて♪ 明日への扉そっと開く♪
≪I WiSH明日への扉≠謔閨
この曲の歌詞は何度も何度も引用しているけど、どこを切り取っても、さりげなくドラマティックですばらしい! 先月、半同棲生活が終わったあと、ひとりの部屋でぼくの笑顔を心に描くとき、いつもこの歌を聴いていたとゆう彼女は、やっぱり泣き出してしまった。
彼女の家に着くと、彼女の母ちゃんが飛んできた。 「帰って来ないから、ずいぶん心配したじゃない。どうしたの?」 娘の泣き顔を見て心配そうだ。 「ゆうやくんがチョーうれしいこと言ってくれたから・・・」 泣き虫の彼女は、そう言うとまた泣き出す。 「それはよかったね〜。奥でゆっくり聞かせてちょうだい」 娘がプロポーズされたことに勘づいたかどうか、ビミョーだけど、なんとなく気づいているんだろうな(…笑)
「そうそう、ゆうやくん、お誕生日おめでとう!あまりおもてなしはできないけど、3人でお祝いしましょう」 ぼくは彼女の母ちゃんに対して、ホントはふたりを別れさせたいんじゃないか…と疑いの気持ちを抱いたりもしたから、この一言でなんとなく落ち着いた。 「はい!ありがとうございます。すっげえうれしいです」 と、以前のような気持ちに戻ることができた。
リビングに入ると、すき焼きの準備ができていた。 勝手にすき焼き鍋の前に座りこみ、ニコニコしていると・・・。 「先にお風呂に入ってらっしゃい」 と言われ、おなかペコペコなんですけど…とも言えず、とにかく風呂に入ることにした。
風呂から上がると、テーブルの上に24p級(…8号サイズってゆうの?)のケーキがドドンと置いてあった。 【ゆうやくん25才】と書いた板チョコにハートマークが見えたりして、かわいい気分(?)になれる。 ぼくは勧められるまま大2本と小5本のロウソクを立て、チャッカマンで1本ずつ火をつける。 23歳のロウソク≠ワでは自分が火をつけ、ぼくらが出会った24歳のロウソク≠ニ一緒に迎えた25歳のロウソク≠ヘ彼女に頼んで火をつけてもらった(…なかなか計算高い!)
そして、部屋の明かりを暗くして、ロウソクを吹き消す。 こんなときに喘息発作が起きぬよう、カッパ口でそっと息を吹きかける。 だけど、たった7本のロウソクを成人男性がひと息で消せなかったら、男のプライドが許さない。 くだらない考えが頭をよぎったせいで、余計に時間がかかって苦しむハメに(…笑)
「さあ、始めようか」 彼女の母ちゃんがすき焼き鍋に材料を入れて準備している間、ぼくは彼女にケーキを切ってもらって一気に食べた。 すき焼きができると、もう夢中でバクバクっと食べる、食べる。 ふと我に返ると、彼女と母ちゃんはほとんど食べていなくて、ぼくが食べるのをうれしそうにジッと見ていることに気づいた。 「あれっ、食べないんっすか?そんなガンミされたら恥ずいですよ〜」 ぼくは箸を置き、照れ笑いをした。 「ゴメンなさいね。この人が娘の大事な人だと思うと、どことなくかわいくて・・・。男の子もいいなあとぼんやり考えてたのよ」 これまたビミョーな言い方で、ぼくが風呂に入っている間に、彼女からあのこと≠聞いたにちがいない!
それにしても、わが子のようにかわいい≠ニは、いかにもありがたいお言葉。 ついでにゆうと、どことなく≠カゃなくてチョーかわいい≠ニ正直に言いなさいっ。 普段母娘で話しているときのように!(…蛇足、駄促?=くだらねえことを促すとゆう意味の新語?)
2月10日、時刻は午前零時を過ぎてからしばらくたっている。
「機は熟した!先日泣かされたリベンジをするときが、ついにやってきた・・・」 ぼくは敢然と(?)立ち上がり、彼女の母ちゃんの前へ進み、そこに正座した。
≪続く≫
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