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2005/02/06(日)
以心伝心 ―Look Back Again―
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キッチンに立ち、晩ご飯の支度をしている彼女の後ろ姿が愛しい。 嬉しさが弾けている横顔がまぶしすぎる。
ぼくと出会ったことが幸運なのか、悲運なのか・・・。 そんなことなんかどうでもよくて、ぼくとふたりで過ごすいまこの時≠ノこそしあわせを感じている女の子がここにいる。 ぼくのお嫁さんになることがたったひとつの夢≠セと言ってくれる恋人が、いまそこにいる。 我が身を捨てて愛する人のために尽くす・・・その潔さ、愛情の深さをひしひしと感じたとき、ぼくの目には自然と涙が溢れてきた。
目立つタイプじゃないけど・・・かわいいし、ぼくなんかにはもったいないほど純粋だ。 それに、いつもぼくのことだけを見てくれている。 やっぱり・・・ぼくにはこの子しかないっ! そう思えば思うほど、また涙が止まらなくなるから、ぼくはタオルで目隠しをした。
「あれ?どうしたの?」 振り返った彼女がぼくの異変に気づき、聞いてきた。 「最近配達より業務してる時間のほうが長くて、ずっとパソコンの画面を見てるから、目が疲れちゃった」 見えすいた言い訳だったけど、彼女は気づいていたはず。 「ゆうやくんの澄みきった目が大好きだから、ずっと大切にしてね」 と、それだけしか言わなかった。
とんかつはうまかった。 彼女が作ってくれる料理ならなんでも「うまい」と思えるけど、今夜のとんかつは特別うまかった。 でも、向かい合って食事をしていると、なんだか照れくさくて話が進まなかった。 この2週間ほどの間に心が揺れたせいか、彼女の瞳を見すえて話すことが難しかった。
そこで、食事が終わると、ぼくは彼女に甘えて、ヒザまくらをしてもらうことにした。 後頭部のあたりに柔らかい優しさを感じながら、カッパ頭をなでてもらうと、これが幼児の昔に帰ったようで懐かしくも気持ちいい。 上目使いで彼女の顔を見上げると、逆さまに見えて気楽だし、身体が接触しているから安心感がある。 ぼくらはそうやって、いろんなことを話しながら、これからも一緒に歩いてゆこうと決めた。
時刻が午前1時に近づき、彼女が時計を気にしはじめた。 そろそろ帰らなければいけないんだろう。
そこで、ぼくは幼稚な手段で彼女を誘惑してみることにした。 「ねえねえ」 と、甘えたように言いながら、彼女の脚をツンツンしてみると・・・無残な結果が待っていた(…笑) 「今日はそうゆうことはダメ!」 サッと膝まくらを外されたもんだから、たまったもんじゃない。 ゴツン! 鈍い音がして、フローリングの床で後頭部を打っちまった。 なにしろIQ200の脳みそ(…マジなわけねえよ!)がたっぷり詰まっているから、これだけのことなのに痛いのなんの!
「いてえよ!なにすんだよ?」 ぼくは起き上がった。 「ごめんなさい。大丈夫?」 彼女はびっくりして、今度はぼくの後頭部をなでてくれた。 「もう絶対大丈夫じゃねえから、朝まで看病してくれよ」 後頭部よりも求愛を拒絶されたことのほうが痛かったから、思わず意地悪なことを言ってしまった。 「そうしたいけど・・・できないの。てゆうか、ゆうやくん、いまエッチなこと考えてたでしょ?」 どうせ見透かされるなら、ガオーッと襲いかかったほうがよかったかなあ。
「キレイな脚だなあと思ってただけだよ」 「ウソ!絶対考えてた」 「考えてねえってば」 「じゃあ、さやかの目を見て!そらさないで」 ぼくはすぐに目をそらしてしまった。
「エヘヘヘ・・・ホントは考えてました。ゴメンなさ〜い」 強がっても仕方ないから、ここは素直に謝った。 「お願いだから謝らないで」 「なんで?」 「ゆうやくんがなに考えてるか、声に出して言わなくてもわかるから。でも、応えてあげられない自分がつらい・・・」 そんなふうに言われると、エッチしたい素振りなんかするんじゃなかったと反省してしまうじゃないか。
ぼくは彼女をそっと抱きしめ、耳もとでささやいた。 「遅くなったからそろそろ帰りなよ。来週の誕生日、楽しみだなあ」 「うん。お母さんと一緒に待ってるから、早く帰って来てねっ」 「あんがと。そうするよ」
ぼくは電車で来ていた彼女を家まで送った。 切ない気持ちを振りきるように、カーオーディオからは大好きなYaikoの『Look Back Again』を流した。 ポップに弾けるナンバーなのに、歌詞はなかなかヘビーで、それでいてポジティブ思考でゲンキが溢れてくる歌! 2番≠フ歌詞が恐ろしいほどお気に入りだ。
◇ ◇ ◇ ◇
さまよう心に甘い声♪ココにずっといてもいい? 扉の前でノックしてのぞいても♪いまはまだ踏みこまないで 出口すら見つけていないんだから♪見守ってくれる?
GO!! Look Back Again♪Woh Woh Woh 置き去りのままの♪真実もウソも傷も♪Woh Woh Woh 噛みしめていたい♪痛い痛い痛い・・・
【Yaiko☆Look Back Againより】
◇ ◇ ◇ ◇
過去を消し去りたいと願うより、過去を抱きしめて生きよう。 でも、それは感傷に浸ることじゃない。 つらく悲しい過去があるからこそ、いまキミを優しく愛せるんだと思うから・・・。 いつか笑って話せる日が来るまで、ずっと忘れないでいよう。
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