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2005/03/05(土)
人事異動 ―ここだけの話ですけどね―
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朝礼で辞令が交付された。 異動するのはAさん(27歳)とBさん(52歳ぐらい?)の2名。 ごく普通の若手社員であるAさんはプチ栄転≠ナ、ナマケモノのBさんは100%子会社への出向。 部外者のぼくにも、なるほど!・・・と納得できる辞令ではある。
さて、朝礼終了後、ぼくは浦越(うらごえ)所長に呼び出された。 「配達先で人事異動について聞かれても、絶対しゃべるな!」 所長は眉間にシワを寄せ、低い声で貫禄たっぷりに言った。 「あっ、はい」 と、ぼくの返事はこれしかない。
おいっ、オッさん。 いちいち心配してもらわなきゃなんねーほどおしゃべり≠カゃねーよ(…苦笑) たとえバイトの分際じゃなくても、こんなことは言えないのだ。
それから、ぼくは朝の配達に出た。 まず一軒目は、あの人間失格≠ネY商事! ここはBさんの担当先だが、去年5月Bさんは、担当になって3日目にして出入禁止≠通告されている。 もっとも、Y商事を担当した歴代セールスは、ほとんど全員が出入禁止になっていて、Bさんだけが特別ではない。 が、担当就任3日目での快挙達成は史上最速だ。
商品を降ろし、受領書にサインをしてもらっているとき、さっそく奥さんが聞いてきた。 「Bさんが転勤するらしいやないの?」 来たぞ!来たぞ! 「マジっすか?」 とりあえず、わかりやすいリアクションで知らないフリをしてみる。 「あれ?知らんの?」 奥さんは怪訝そうだ。
「ぼくなんか部外者だから、そんな大事なことは教えてもらえませんよ」 関わりあいたくないので、少し強い口調で言い切る。 「ふ〜ん。そんなもんかねえ」 奥さんはまだ納得がいかないとゆう表情だ。
そこで、ぼくは逆に質問をしてみることにした。 「そのことを誰から聞いたんですか?」 真剣な顔をして、ガマガエル風なオバサンの目をまっすぐに見る。 「Bさんがここへ来て自分で言うたよ」 あっさりと予想していた通りの答えが返ってきた。 「いつ?」 「1週間ぐらい前かなあ。内示があった言うとった」
Bさんは全社でもダンドベの営業成績で、もう出向でもなんでもいいから逃げ出したかったに違いない。 彼の普段の表情が陰気でどうしようもなかったから、そうゆう気持ちであることは容易に想像できた。 それなのに、最近急に明るくなったのは、出向の内示が出たからだろう。 そして、その喜びをK商事に伝えることにより、ほんの1センチだけ溜飲を下げた。 ・・・だいたいこうゆう推理が成り立つ。
「おれは間もなく、お前さんのところとは関係なくなるぞ」 ・・・と、ホントは言いたかったんだろうなあ(…ちょっとだけ同情かも?)
「じゃあ、失礼します。ありがとうございます」 ぼくは次の配達があったので、立ち去ろうとしたが・・・。 「そうそう。A君も転勤するらしいねえ」 と、また奥さんが話題を振ってきた。 「えー?誰がそんなことを?」 ぼくはいちおう聞いてはみたものの、てっきりBさんがバラしたのだと思った。 ところが、奥さんの答えは違っていた。
「所長に決まっとるやろ!」 「えーッ!!それマジっすか??」 びっくり仰天するぼくを見て、奥さんは得意そうに続けた。 「あの人(所長)は、奥さん、ここだけの話やけんね…と言いながら、何でも教えてくれるよ」 「そんな・・・」 ぼくは次の言葉が出てこなかった。
「ここだけの話ですよ。実はねえ・・・」 この言葉を前置きにして、他人や会社の秘密をバラす人は非常に多い。 が、ここだけの話≠ノ留めておけるほど口が堅い人は、圧倒的に少ない。
まして、こんなおしゃべり魔女≠ノ教えたら、あとでどうゆうことになるか・・・。 浦越所長は考えなかったんだろうか? たぶん、マトモに相手してもらえないK商事からポイントを稼ぎたい一心で、そこまで頭が回らなかったのだろう。
それにしても、ぼくには口外厳禁を申し渡しておきながら、そのとき自分が既に口外していたとは・・・。 なんて軽率で卑怯なヤツ!
人間失格!!
◇ ◇ ◇ ◇
【ダンドベ】 標準語のダントツビリと同義語。 大人こども辞書≠謔
◆K商事の人間失格ぶりについては、ここを読んでね。 ↓ ↓ ↓ ↓ 人間失格 ―いわれなき嫉妬― http://diary1.fc2.com/cgi-sys/ed.cgi/rommel/?Y=2005&M=2&D=1
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