【青春交差点】
 
いつもどんなときも。ぼくはぼくらしく。
 
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2005/03/07(月) 黒岩物語 ―坊っちゃんとジイちゃんと四十島― ≪後編≫
 
松山観光港の近くに通称『黒岩』と呼ばれる断崖絶壁の岩場がある。
ジイちゃんから聞いた話によると、昔は自殺の名所だったらしい。
悪い男にダマされた女性たちが、世をはかなんで飛び降りたのだ。

ゆう坊、ええか、よう聞け!
女を守ってやるのが男の役目や!
女をダマすような卑怯な男になったら、なんぼゆう坊でもジイちゃんは許さへんで!

黒岩の話をするとき、ジイちゃんが最後に必ず言っていた決めゼリフ≠セ。
ぼくは崇高なるこの教えを、今もしっかりと守っている(…微笑)

また、黒岩にはもうひとつ悲しい話が残されている。
1966(昭和41)年11月13日、松山空港沖合に全日空機YS-11が墜落した。
この事故のあと海流の影響で、多くの死体が黒岩あたりに流れ着いてきたそうだ。
当時まだ現役の漁師だったジイちゃんは、海底深く沈んでいる死体の収容作業に連日駆り出された。

ジイちゃんは自分の漁船に死体を乗せるのがイヤで、両足首にロープを巻きつけ港までゆっくりと引いて帰った。
その中に一体、右足がロープから抜けてしまい、左足だけが引っかかっていた若い女性の死体があった。
ジイちゃんは、片方が抜ければ両方抜けるはずなのに、運のいいドザエモンだ・・・としか思わなかった。
が、ジイちゃんはその日から毎晩、猛烈にうなされて眠れなかったとゆう。

そこで、たまたま近所に住んでいた祈祷師の老婆に拝んでもらうと、その原因がはっきりとわかった。
老婆に乗り移った若い女性は、こう叫んだとゆう。

おまえは、わたしの左足首だけを引っ張った。
海面で両脚が大きく開き、これほど恥ずかしいことはなかった!
わたしは女なのに・・・。
この恨み、晴らさずにおくものか!!

祈祷が終わったあと、すぐにジイちゃんは黒岩の断崖に立ち、海に向かい両手を合わせ、自らの非礼を詫びた。
すると、不思議なことにその夜から快適に眠れるようになった・・・とゆう。

この話をジイちゃんから聞かされたとき、幼いぼくはこう言った。
「女の人がイヤがることをしたらダメじゃん!」
ジイちゃんはただ「うん、うん」と、小さく微笑んでうなずいていたことを薄っすらと覚えている。


そんな暗く悲しい陰のある黒岩の西150メートルの沖合いに浮かんでいる小さな小さな無人島が、四十島(しじゅうじま)だ。
四十島はぼくの原風景ともいえる場所であり、小説『坊っちゃん』の中にもターナー島≠ニゆう名で登場する!

 ◇ ◇ ◇ ◇

「あの松を見給え、幹が真直で、上が傘の様に開いてターナーの画にありそうだね」と赤シャツが野だに云うと、
野だは「全くターナーですね。どうもあの曲り具合ったらありませんね。ターナーそっくりですよ」と心得顔である。

夏目漱石坊っちゃん≠謔

 ◇ ◇ ◇ ◇

ちなみに、このとき坊っちゃんらが見たターナーの絵画にありそうな¥シは、今はもうない。
「ターナー島の松を守る会」の有志が、小さなハゲ山に松の苗木を何本か植えて、必死に育てている最中なのだ。

さてさて・・・。
ここまで書くのに苦労をしたけど、ぼくの心のトライアングル『ジイちゃん』『坊っちゃん』『四十島』の3つがやっと線でつながった。
めでたし!めでたし!


この拙い文章を書き終えた今こそ、ぼくは思う。
文豪夏目漱石は松山市を愛していたはずだ・・・と!
そうでなければ、地元の人以外は誰も知らないマニアックな四十島を、さりげなく取り上げたりはしない。
漱石は彼一流のユーモアセンスで、松山の良さをシニカルタッチに綴ったのである!
少なくとも、ぼくはそう信じている。


≪完≫


◆黒岩物語≪前編≫
http://diary1.fc2.com/cgi-sys/ed.cgi/rommel/?Y=2005&M=3&D=6


 ◇ ◇ ◇ ◇


【哀悼の意】

黒岩付近で亡くなった全ての方のご冥福を謹んでお祈り申し上げます。
 


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