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2005/04/22(金)
遥かなるジイちゃん☆墓参り編 第3話
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彼女の父ちゃんの墓前に結婚の報告をしたあと、ぼくらは県道19号線を海沿いに北へ走り、ぼくのジイちゃんが眠る墓地に向かった。
クルマの窓を少しだけ開けると、潮の香りを乗せて春の風が吹き込んでくる。 ふと左を見ると、彼女がぼくの横顔をジッと見つめていて、目が合うと眩しいくらい優しく微笑んでくれる。
「おまえねえ、そんなジロジロ見んなよ!」 そう言って照れながらも、こうゆうときにこそ、ぼくは確かに愛されているとゆうしあわせ≠感じる。
◇ ◇ ◇ ◇
ぼくは墓地まであと僅かのところにある、小さな漁港でクルマを停めた。
「俺が3歳ぐらいのとき、海で溺れていたところをジイちゃんに助けてもらったって話、前にしたことがあったでしょ?」 「うん」 ぼくらはクルマから降りて、寄り道をすることにした。
「あれってココなんだよ」 「へぇ〜、ココがそうなの?」 彼女が目を輝かせている。 「うん。岸壁の端っこのほら、あそこらへんだよ」 ぼくは子どもの頃、ジイちゃんから教えてもらった辺りを指さし、彼女に教える。
「ちょっと行ってみっか?」 「うんっ!」 彼女は嬉しそうにうなずく。
ぼくは彼女の手を引き、岸壁の端へと歩いていった。
「たぶん、この真下あたりかなあ」 「ゆうやくん、もしかしたらココで溺れて、死んじゃってたかも知れないんだね」 キレイに澄みきった海を見つめ、彼女がそう言った。 「ジイちゃんが飛び込むのがもう少し遅かったら、俺はたった3才で死んでた」
ぼくにはそのときの記憶などない。 全てジイちゃんが聞かせてくれた話だ。 海に落ちる前に岸壁で頭を打ち、気を失ったことで、飲んだ海水の量が少なかったことも幸いしたらしい。 それにしても、あと1分、あと10秒、ジイちゃんのダイブが遅かったら・・・。
「おジイさんがいなかったら、どうしよう?ゆうやくんと出会えない人生なんて、さやかには考えられない」 彼女は岸壁にしゃがみこみ、両手を組んで唇に当てるような仕草で、ジッと水面を見ている。 「他の男と結婚するんじゃねーの?」 ぼくが意地悪なことをゆうと、彼女は「バカッ!」と言いながら、思いっきりぼくの肩のあたりを叩いてきた。
「いてえ!」 左肩を押さえ、彼女に反省を促すために顔をしかめたけど、当の本人は背中を見せて岸壁の上を引き返している。 「ゴメン、ゴメン。冗談だよ。ちょっと待てよ!」 彼女の腕をつかもうとすると、あっさり振りほどかれた。 「さわらないで!ゼッタイに許してあげないからね」 純粋な女の子には、たとえ冗談であっても「他の男と・・・」などと言ってはイケないのだ。
ぼくは彼女のご機嫌をとるために、ただ「ゴメンなさい」と「こんなに好きだから許して」を繰り返すばかり。
◇ ◇ ◇ ◇
しかし、クルマに乗りこんだ彼女は、「さあ、次はおジイさんのお墓参りだ」と、なぜか張り切っている。
「さやかちゃん、機嫌なおしてくれたのか?」 「全然なおってない。おジイさんにこの憎たらしい孫を怒ってやってください≠チてお願いしてやるっ!」 「はぁ〜っ。そうゆうことでしたか」
ぼくは大きくため息をつき、少しだけ途方に暮れる。 けど、「さやかのこうゆうとこも大好きだなあ」と、いつものように納得するのだ。
≪続く≫
◇ ◇ ◇ ◇
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