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2005/04/23(土)
遥かなるジイちゃん☆墓参り編 第4話
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駐車場にクルマを置き、ぼくらは徒歩で漁村の狭い路地裏に入ってゆく。 どれぐらい狭いのかとゆうと、もし火事になっても消防車が近寄れないのは当然のこと、ふたり並んで歩くことさえできないのだ。 「この地区を担当する宅急便のドライバーは大変だろうな」などと、ついよけいなことを考えてしまう。 ぼくらは迷路のような路地を右に左に曲がった。
「こんなとこ、さやかひとりで来れるか?」 手をつないでいる彼女に聞いてみる。 「無理だよお。道なのか、家の敷地なのか分かんないし・・・」 それぐらい家が建てこんでいるとゆうことだ。
それにしても、住む人が誰もいなくなり、淋しく置き去りにされた廃屋が目立つ。 交通の便が悪い土地で、宅地の開発も行なわれていないためか、若者がどんどんこの場所から離れて過疎化が進んでいるのだろう。 ぼくもその一人ではあるが・・・。
ぼくらは少しばかり遠回りをして、ジイちゃんが住んでいた家の前を通ってみることにした。 しかし、既に取り壊されていて、キレイさっぱり更地になっていた。 ぼくはジイちゃんの家で、助産婦さんに取り上げてもらった。 つまり、ぼくが生まれた家でもあるのだ。 ここで思い出のカケラをいっぱい拾うつもりだったのに・・・残念。
◇ ◇ ◇ ◇
ジイちゃんの家の跡地から急傾斜の道を50メートルほど行くと、山を切り開いて造った墓地が見えてくる。 一気に坂道をのぼれない老婆たちが、途中で休憩をしている。 その横を通り過ぎるとき、ひとりの老婆から「ぼくや!もしかして坂本の坊か?」と声を掛けられた。 「違うよ」と答えると、なおも老婆は「え?人違いか。じゃあどこの子なん?」と聞いてきた。
「前田のゆう坊だよ」 どうせ知らないだろうと思ったけど、そう言った。 彼女は、ぼくが自分のことをゆう坊≠ニ言ったのがオカシイらしくて、隣でクスクス笑っている。
「前田、まえだ・・・。あっ!思い出した。10年ほど前に死んだ春義さん方の孫か?」 なんと!この老婆はジイちゃんの名前や死んだ時期を言い当てた。 「うん。そうだよ。バアちゃん、ぼくのこと知ってるの?」 「知っとるも何も。この部落で漁師をやってた頃、春さん方の近所に住んどったんよ。春さんはねえ、あんたをいっつも着物の懐に入れて、そりゃあ可愛がっとったねえ。それにしても、まあまあ、こんな大きなって・・・」 老婆は目を細め、ぼくの顔を穴が開くほど見つめた。
「バアちゃんのこと、ぼくは覚えてないよ」 「うんうん。まだ赤ちゃんやったけんね。ほやけど、春さんの葬式にはウチも行ったんよ」 「ジイちゃんと親戚?」 「説明でけんぐらい遠いけどねえ」 「すげえ!バアちゃん、名前はなんてゆうの?覚えとくから教えてよ」
老婆は照子と名乗った。 ジイちゃんとぼくの共通の知り合い≠ニ会えて、少しだけトクした気分になった。
◇ ◇ ◇ ◇
ぼくらは老婆に見送られながら、急な坂道をのぼった。
いよいよ天国にいるジイちゃんと2年ぶりの再会。 故郷を一時離れていたぼくが再び四国に帰ってきた、あの2年前の春以来のことだ。
ぼくは墓地の入口にある手洗い場で、でっかいヤカンに水を入れた。 そして、それを左手に提げ、彼女はしきびと線香を両手に持ち、それぞれがジイちゃんに思いを馳せながら、長い坂道をのぼった。
≪続く≫
◇ ◇ ◇ ◇
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◆遥かなるジイちゃん☆墓参り編―第3話― http://diary1.fc2.com/cgi-sys/ed.cgi/rommel/?Y=2005&M=4&D=22
◆遥かなるジイちゃん≪後編≫ http://diary1.fc2.com/cgi-sys/ed.cgi/rommel/?Y=2005&M=1&D=16
[イメージ]画像 ジイちゃんのお墓がある小さな山の頂から見える景色です! 3隻揃って撮影できるとは、普段からの行ないがよほどイイのでしょうか。 まさにグッド☆タイミングでしたっ♪ 画面を横にしてから見てね! ↓クリック♪必見↓
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