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2005/05/12(木)
床屋の風景 ―鏡の中のぼく―
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結婚式まであと10日・・・。
「そろそろ散髪しとこうか」ってことで、きょう夕方、行きつけの床屋さんに行ってきた。 ホントは次の日曜日に予約してあったけど、なんとなく休みの時間がもったいないような気がして、急きょ変更してもらったのだ。
そういえば、ぼくは自分の髪型について深く考えたことがない。 髪が短くて立つうちは、かなり爆発していて、伸びてきたら自然にカッパ頭になって・・・。 中学生の頃からそんな繰り返しだ。
極端に寝相が悪いぼくは、起きたときについている髪の寝グセも素晴らしい。 朝シャンしないと、とても人に見せられるようなザマじゃないんだ・・・これが。
まだ母ちゃんがいた頃には、母ちゃんがシャンプーしてくれて、乾かしてくれて、髪形を整えてくれていた。 「大きくなったのに手間がかかる子や」とか、「困ったちゃんやね」とか言いながら、それでもホントはうれしそうに・・・。
そんな・・・ちょ〜甘えん坊のぼくが、いよいよ10日後には結婚! まだ信じられない。
◇ ◇ ◇ ◇
「よっ!いらっしゃい」 「こんにちは」 理容師さんに促され、ぼくは大きな鏡の前のイスに腰掛ける。
「いつも通りでエエんか?」 「あ、はい。でも、なるべくなら、いつもよりカッコよく見えるようにしてもらいたいです」 まあ、これがマジな希望ってやつだ。
「おお〜っ、さては・・・なにか特別なことがあるんやな?」 同じ中学の先輩(5歳上)でもあるこの理容師は、去年結婚したばかりのまだ新婚さんだ。
「先輩には言ってなかったんですけど・・・。22日、ぼくの結婚式なんですよ。だから・・・」 ぼくが照れながらそうゆうと、 「ホントか?!おめでとう!!なあ、ゆうやの嫁さん、かわいいの?今度来るとき、連れてこいよ」 先輩の声が弾んでいるから、きっと心から喜んでくれているのだろう。
隣の席でほかの人の髪をカットしていた先輩の奥さんも、鏡の中での会話に加わる。 「エーッ!ゆうやくん、結婚するの?おめでとお!でも、ありえないカンジ」 左斜め45度の角度から、ジッとぼくの顔を見つめる。 「どうしてですか?」 照れ屋のぼくに奥さんの視線は眩しくて、いきなり目をそらす。
「だって、ウチの目には、ゆうやくんが高校生ぐらいにしか見えんのよね〜」 もう25歳にもなるんだから高校生≠カゃなく、せめて学生≠ニ言ってくれたらなあ(…希望的要求?) 「またそれをゆう・・・。これでも立派な大人こども≠ナすよ!」 ぼくはアヒル口をとがらせ、ビミョーに不満な意思表示をする(…笑) 「あはは・・・。なにそれ?要するに、まだ子どものつもりなんやろ?」 先輩の奥さんがゆうことは、外れてなくもない。
「はい・・・まあ・・・。でも、大人と子どもの中間みたいな人種ですよ」 「ふ〜ん、そうゆう言い方もあるんやね・・・」 奥さんに正確な意味が伝わったかどうか、それは自信がないけど(…笑)
◇ ◇ ◇ ◇
先輩はぼくにカットクロスを掛け、両手にそれぞれハサミとクシを持って身構える。 昔はズッコケ珍走団、いまは茶髪メッシュでカリスマじゃない普通の理容師が、戦闘体制を整えたようだ。
「さあ、切るで!」 「はい」 「今回は責任重大やなあ」 「ゼッタイ男前にしてくださいよ〜っ」 「よっしゃ!俺に任せとけ!!」
で、安心して任せた結果がどうだったのか・・・。
鏡の中のぼくは、いつもより凛々しく見える。 爆風にさらされたような乱れ髪セットのせいか、キリッとなった眉毛のせいなのか。 外見の変化は、その大きな要因なのだろう。
けれども、きっとそれだけじゃない。
妻をめとる者の覚悟!決意! そして、溢れるほどに勇敢な愛情! それらがスクランブル交差点方式に行き交い、責任感とゆう雰囲気をかもし出しているんだ。
まあ、床屋での考察はこれぐらいにしておこう。
世界中の女の子から「なにそれ?」と言われても、たったひとりの女の子から「カッコいい」と言ってもらえたら、ぼくはそれでいいんだから。
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