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2005/05/13(金)
あんた、接客悪いで!
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今日夕方、ある家に荷物を届けに行ったときのこと。 18時30分前後、まだまだ明るい時間の出来事だ。
目的の家に着くと、ちょうど老婆が庭木に水をやっているところだった。
「こんちわあ♪宅急便です」 荷物を持ちクルマから降りたぼくは、にこやかな笑顔で挨拶をした。 普通ならここで、「こんにちは」とか「ご苦労さん」とか、そうゆう類いの挨拶が返ってくるところだ。
ところが、この老婆は違っていた。 明らかに・・・見ているほうが憂うつになるほど・・・迷惑そうな顔をした。
「誰宛ての荷物?」 「小泉鈍一郎さんになってますよ」 「息子はさっき出ていったけん、わからん」 「そうですかあ・・・」
まあ、代金引換の荷物の場合には、タマにあることだけど、この荷物は代引じゃない。 老婆は受け取るだけ≠ナいいのだ。 プロたる者、こんなことぐらいで引き下がってはいけない。
「おばちゃん、この荷物はねー、お金と引き換えじゃないから、受け取ってもらうだけでいいんですよ」 ぼくは、しわくちゃの老婆をおばちゃん≠ニ呼び、わかりやすく説明をした。 老婆は「じゃあ、受け取ってあげようか」となった。
そのとき、家の2階から、声を限りの絶叫が聞こえてきた。 「あんた!ちょっと待ちイ!」 そうゆうが早いか、激しく音を立てて階段を下りてきたのは、ぼくより何歳か年上の女、たぶん受取人の妻だった。
2階からスケバン気取りのヤンキー女≠ェ発した絶叫は、老婆に対し「荷物を受け取ってはいけない」と注意したのだとばかり思っていた。
そこで、ぼくは改めて女に「こんちわ。宅急便です」と、さわやかに挨拶をしてしまった。 すると、この成人版★積木くずし≠ヘ、鋭くガンを飛ばしてきた。 そして、ぼくのつま先から帽子にかけて、舐め上げるように見る仕草をしながら、こう言った。 「そんなん、見たらわかるんじゃい!」 「???」 お客さんにこんなケンカ腰の言い方をされたのは初めてで、ぼくは返す言葉を見つけられずにいた。
昔のスケバンは、そんなぼくの態度を見て安心したのだろう。 近所迷惑などそっちのけの大音量で吠えまくった。
「あんた、接客悪いでえ!」 「え?」 「おバアがなー、本人がおらんけん荷物はいらん≠ニゆうとったやろ!」 「でも、受け取るだけですから・・・」 「いらんゆうたら、いらんのやーっ!!あんた、ドタマ悪いんとちゃうか?」 「・・・・・・」
「会社に連絡したる」 「・・・・・・」 「あんた、名前は?」 「連絡票渡しますから、それ見てください」 「なんなん?その態度。生意気な!」 「・・・・・・」
女はさらに吠えていたが、ぼくはわざと聞こえないフリをした。 そして、不在連絡票を書き、「ご本人が帰ってきたら、再配依頼の連絡をしてください」と言って手渡した。
「夜8時に来いや。ほしたら許したる」 女は勝ち誇ったような顔で言った。
こいつ何様のつもりなんやろ? 8時になんか、意地でも持ってきてやるもんか! そう思ったぼくは、「今日は荷物が多いから、8時は無理です」と言ってやった。
すると・・・ 「ゼッタイ会社にチクッてやる。クビになっても知らんで」 ヤンキー女はすごい形相でにらんできた。 ぼくはそれには答えず、「オジャマしました」とだけ言い残し、その家をあとにした。
◇ ◇ ◇ ◇
30分後、センター長から電話が入ってきた。 「小泉さんゆう人からクレームが出されたんやけど、どうしたんや?」 ぼくはクルマを停め、事の経緯を全て説明した。
「そうやったんか。ゆうやがクレーム受けたんは初めてなんで、相当ビックリしたで〜」 「はい。あんなヤツにバカにされて・・・悔しいです」 「まあ、いろんな人がおるとゆうことや」 「はい・・・」 「それでなー、再配依頼が入ったんやけど、俺が代わりに行ったるわ。いまどの辺におる?」
センター長はすぐにやって来た。 そして、クルマに乗り込んできて、ぼくの頭をポンポンと軽く叩いた。
「タチの悪いヤツに当たってしもたなあ。かわいそうに」 「センター長に迷惑かけて・・・すいません」 「よしよし。わかった。もう気にせんでええよ。荷物と伝票はどれや?」 「これです」
◇ ◇ ◇ ◇
センター長が行ったときには、なにも言われなかったそうだ。 それどころか、本人が出てきて「何回も来てもろて、ありがとうございます」とゆう姿勢で、恐縮していたらしい。
とゆうことは、ダンナのほうはマトモな人間なのか? 夫婦ゲンカをしたあとで、ヤンキー妻の機嫌が特別に悪かったとゆうことなのか? その答えは、今度行ったときにわかるだろう。
担当エリア内のことではあるが、不特定多数のお客さんを選ぶことなく相手にするのは難しいことだなあ。
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